『超能力』がテーマのラブファンタジー
超能力研究者である父が作り出した『物質』を幼いころに飲み込んでしまった粒依音(つぶらぎ いおん)。好きな男の子のタイプは「夢を追いかけている人」でした。生徒会長白石からの猛アタックから逃げる日々ですが、やがて超能力研究会に所属する宝来帝に出会います。依音の父の文献をもとに新たな『物質』を作り上げた帝。夢に向かって好きなことをする帝の姿に惹かれていく依音です。その物質を興味本位で手にした依音が、物理的に何かを動かしたり、自らが宙に浮いたりできる超能力を目覚めさせることになります。
夏に飲むソーダ水のような、潔い甘さはじける物語
このイメージを想起させるのは、キャラクター名が大いに関係していると思います。主人公の粒依音、ヒーローの宝来帝、ライバル水瀬藍、生徒会長白石広貴・・・なんだか爽やかで潔い。急展開が繰り広げられるストーリー展開も手伝って、真夏にソーダ水を飲んだ後の爽快感が作中ずっと感じられるんです。
柴咲コウ - invitation
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この漫画に主題歌をつけるとしたら、柴咲コウの「invitation」かなと個人的に思います。夏の切なくて甘い恋を歌っていて、爽やかにはじける雰囲気がぴったりです。また、作者の種村有菜先生の本作にかける思いは熱く、常に主人公至上主義ではあるものの、特にこの依音に対しての愛が非常に大きいと語っています。(単行本のおまけ部分に掲載あり)
依音に対抗する藍ちゃんが可愛い
種村有菜作品には分かりやすいライバルがよく存在します。本作では水瀬藍ちゃん。帝の幼なじみであり、超能力研究に躍起する帝のために、スプーン曲げなどの念動力などを身に着ける・・・そんなかわいらしい一面もある女の子です。ある夏祭りの日、川に流されている少女を目撃した藍は、近くに浮かぶ丸太を念動力で動かし、少女に近づけ助け出そうとします。しかし丸太が流れに乗りすぎ、激突の危機に。その寸前に、依音は自らの体を浮かせて、川に飛び込み少女を抱きかかえて助け出します。目の前で依音の超能力を見せつけられた藍は、素直に負けを認めて身を引きます。好きな人のために努力するなんて・・・ライバル役ではありますが、いじらしいじゃないですか。
懐かしい〜!わたしは満月をさがしてがすごく好きだったな〜♡イ・オ・ンを読んでからあのプレートに似てるおもちゃみたいなのを身につけて本当に超能力が使えると思ってた…
— ѕук ᕱ⑅ᕱ game垢 (@ACNH_syk) August 19, 2020
有菜っち作品の主役はみんな出来すぎている
なぜ依音が生徒会長白石に追い掛け回されているのか。彼が生徒会選挙の演説前にひどく緊張しているところに依音が現れ、「髪の毛で前が見えないから怖いのよ」と彼の髪を結んでやります。それに勇気づけられたことがきっかけで、白石は依音に恋をするように。こういったきちんとした背景があるわけなのでした。しかし演説前に緊張している候補者の前に現れて、髪を結んで優しい言葉をかけてやるなんて、そんな出来たことやります?神風怪盗ジャンヌの主人公・まろんにも「人を勇気づける名言」はたくさんありますが、やはり有菜っちは共通して「主役をとにかくできた人間に仕立て上げ、周りに愛されまくる」ようにするのが好きみたいです。
有菜っちの、初連載にしてのこの名作をどうぞ読んでみてください。
有菜っちの、初連載にしてのこの名作をどうぞ読んでみてください。
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