魂の走り『森下広一』マラソン3戦目で五輪銀メダルを獲得した天才ランナー
2017年1月1日 更新

魂の走り『森下広一』マラソン3戦目で五輪銀メダルを獲得した天才ランナー

バルセロナ五輪の男子マラソン銀メダリスト、森下広一。 今も語り継がれる中山竹通とのデッドヒート。 バルセロナ五輪で金を逃したモンジュイックの丘での駆け引き。 気持ちを前面に出したケンカ走法でマラソン3戦目で五輪メダリストとなった天才ランナー森下の功績と現在について紹介。

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森下がマラソンで負けたのはオリンピックでの黄永祚のみであり、日本歴代最速ランナーとも言われた中山竹通には3戦3勝であった。

初マラソンで優勝し、3回目で五輪銀メダルを手にした天才ランナーは、バルセロナ以降に一度もマラソンを走ることなく、その短すぎる選手生命を終えた。

それでも、『世界で勝てる男』と日本歴代ナンバー1のランナーに推す専門家は多い。

指導者になり、トヨタ自動車九州陸上部監督に就任。

1999年、トヨタ自動車九州陸上部監督に就任。
森下の指導により、チームは着実に力をつけ、全日本実業団駅伝への出場、クロスカントリーやハーフマラソンの世界大会代表を出すまでとなった。

2005年にはチーム初のトラック種目代表として、北海道・深川にて10000mの日本歴代3位・国内日本人最高タイムを記録した三津谷祐をヘルシンキ世界選手権代表へ輩出。

また、深川のレースで三津谷をアシストしたルーキー、サムエル・ワンジル(ケニア)はゴールデンリーグと呼ばれる国際主要大会の10000mで世界ランク上位に相当する26分41秒75をマーク。
約2週間後に行われた9月のロッテルダムのレースではハーフマラソンの世界記録(59分16秒)を樹立した。
森下広一とサムエル・ワンジル。

森下広一とサムエル・ワンジル。

ワンジルは仙台育英高を卒業後、複数の実業団から誘いを受けたが森下が監督を務めるトヨタ自動車九州陸上部を選び入部。
監督の森下は、ワンジルの素質に惚れ抜き、徹底した指導を行った。

教え子、ワンジルが北京オリンピックで金メダルを獲得。

ワンジルは調整方針を巡って会社と対立し、2008年7月にトヨタ自動車九州を退社。
その翌月の北京オリンピック男子マラソンで金メダルを獲得した。
北京オリンピック男子マラソンで優勝したワンジル

北京オリンピック男子マラソンで優勝したワンジル

ワンジルはレースシューズをケニアに忘れてしまったため、急遽練習シューズを履いて臨んだにも関わらず、2時間6分32秒という五輪新記録で優勝を果たした。
森下が手にすることのできなかった金メダルを獲得したワンジルは、「森下さんはバルセロナ五輪で2位だったから『サム(ワンジル)には金メダルを取ってほしい』と言っていた。それを考えて走った。森下さんに金メダルを見せたい」と感謝の気持ちを述べている。

また、森下は「おめでとう。陸上部のメンバーとともに金メダルを取れると信じて応援していました。今後の力になる勇気を与えてくれたと感謝しています」とコメントを出している。


さらなる将来を期待されたワンジルであったが、その後は私生活で様々なトラブルにに見舞われ、2011年にケニア中部のニャフルルにある自宅のバルコニーから転落し、遺体で発見された。
鈍器で頭部を殴打されたような痕跡があったが死因は特定されていない。

森下は「びっくりしています。ケニアは若い選手がたくさん出てきているが、五輪はタイムだけじゃ勝てない。サム(ワンジル)は日本人のような我慢を持っていた。ロンドン五輪も期待していたので残念です。 」と悲痛なコメントを寄せた。

現在もトヨタ自動車九州 陸上競技部監督として後進を育成中。

森下は現在もトヨタ自動車九州 陸上競技部監督として、箱根駅伝で活躍した元祖“山の神”今井正人など、有望なランナーを育て続けている。
現在の森下広一

現在の森下広一

スローガンは『闘走走覇』

スローガンは『闘走走覇』

魂の走りで見る人の心を揺さぶった森下らしいスローガンである。
バルセロナオリンピックの森下以降、オリンピック男子マラソンでメダルを獲得した日本人は現時点で誰もいない。

いつか、森下の『ケンカ走法』を受け継いだランナーがオリンピックで金メダルを獲得することを私は願っている。
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