B・・「コロンビア・ガールズ伝説 EARLY YEARS 1965―1972」です。このシリーズは全3部で、CDは全5枚となっています。本巻は第1部で、CDは1枚です。60年代後半から70年代初めにかけての、コロムビアの女性ポップスを集めたものです。
A・・ちょっとわかりにくいコンセプトですね。初CD化作品が13曲も入っている一方で、「涙の太陽」やら、「白馬のルンナ」やら、いまさら収録する必要もないような、よく知られた曲が入っていて・・・。
B・・エミー・ジャクソン「涙の太陽」は数百回聴いても、飽きることはない。「白馬のルンナ」も・・まあ、いいじゃないか。事情を理解してやろう。珍しい曲ばかり集めても、売れるCDにはならないし、企画も通らないんだよ。こういうCDを出すには、誰でも知っているような有名な曲が必要なんだ。
A・・おかしい。いつから、そんなの物分かりのいいおじさんになったんです。これまであんたが言ってきたことと違うじゃないですか。
B・・私は首尾一貫している。先に行くよ。本CDは全24曲が収録されている。初CD化が12曲、初流通CD化が1曲だな。
A・・初流通CD化って、何ですか?
B・・「当節ドンパン節」はMEG-CDになっている。MEG-CDは非流通CDということだろう。それでは、初CD化12曲+初流通CD化1曲=計13曲を、経済学的に検討し、次に音楽的、ジャケット学的に検討してみよう。
A・・経済学的検討というのは、ひょっとして・・?
B・・その通り。13枚のシングルレコードが、過去10年のヤフオクで、いくらで落札されたかの検討だよ。まず最高額の高い方から行こう。(間違いあればご容赦)。第一位、ピンキー・チックス「当節ドンパン節」32000円、第二位小野木久美「恋はマジッククラッカー」13300円、第三位山本真記子「みんな仲間だ」12500円、同第三位夏木ミミ「キッスで告白」12500円、第五位ザ・シュークリーム「甘い罠」8000円、第六位島桂子「ゴー・ゴー・ジュニア」6300円、第七位純エリ子「恋のチュチュチュ」5000円、第八位吉村繪梨子「逢う時はいつも」4800円、第九位水戸井清子「おねがい」4000円、第十位沢和代「一人になりたい」3800円、第十一位すみれ裕子「いきなり愛して」3200円。同第十一位宮野凉子「ボーフレンド募集中」3200円、第十三位可愛和美「雨上がりの恋」1800円だな。
A・・あんたは、究極のひま人ですね。
B・・うるさい。次に最低額を高い方から並べると、第一位「当節ドンパン節」8250円、第二位「ゴー・ゴー・ジュニア」6300円、第三位「恋はマジッククラッカー」6000円、第四位「みんな仲間だ」3600円、は第五位「いきなり愛して」3200円。第六位「甘い罠」1200円、第七位以下は1000円未満で略。なお、「ゴー・ゴー・ジュニア」と「いきなり愛して」は一回しか落札されていないので、最高額も、最低額も同じだよ。結論は、一番の人気レア・レコードが「当節ドンパン節」、次がアニメ関連の「恋はマジッククラッカー」ということだな。
A・・夏木ミミの最高額12500円、最低額1000円未満というのは?
B・・本当はそんなに高いレコードではないということかな。さて、音楽的、ジャケット学的検討をしなくては・・まず、ベスト5を選ぼう。第一位山本真記子「みんな仲間だ」、第二位純エリ子「恋のチュチュチュ」、第三位すみれ裕子「いきなり愛して」、第四位吉村繪梨子「逢う時はいつも」、第五位島桂子「ゴー・ゴー・ジュニア」、次点、小野木久美「恋はマジッククラッカー」。
A・・「みんな仲間だ」は真面目で、地味な歌のようですが。
B・・違う。真面目で地味なのは歌詞だけだ。まず、このジャケットはダブルジャケで、表広げてみると、結構なセクシーミニスカジャケだ。次に、山本真紀子は、圧倒的な歌唱力とリズム感で、見事に弾けている。ポップで、グルーヴィーで、ガーリー。歌詞はほとんどどうでもよい・・というより、歌詞とのズレズレ感が楽しい
A・・純エリ子「恋のチュチュチュ」はジャケットが酷いですね。
B・・そう、だから、純エリ子様のレコードとしては、ちょっと安い。しかし、歌はいい。赤面しそうな歌詞もいいし、それを、はいし、どうどうと歌いこなす純エリ子もいい。急ごう!「いきなり愛して」は一気に歌い切って、退屈させないのがよい。「逢う時はいつも」歌もジャケットもたいへん印象的。「ゴー・ゴー・ジュニア」くだらなさの一歩手前で踏みとどまる。「恋はマジッククラッカー」効果音が面白いといえば、面白い。期待外れといえば、期待外れ。
A・・では、この辺で・・
B・・もう少し・・「おねがい」歌詞がくだらなさの極み、「一人になりたい」ジャケットはナイス、歌はつまらない。「キッスで告白」夏木ミミの残り滓、「雨あがりの恋」可愛和美の残り滓、「甘い罠」平凡、「ボーイフレンド募集中」ノーコメント、「当節ドンパン節」ジャケットは最高傑作。歌はどうでもよい。
A・・ひどい!
B・・でも、気に行ったよ。この企画。第2部も、第3部も買います。