1997年、60歳のときに前立腺がんを宣告されるも、ゴルフ人生の方を優先して、手術も受けず、闘争心を司る男性ホルモンに影響を与えるということから、ホルモン治療をも拒否して、プロ魂を燃やし続けた杉原輝夫さん。がんが発覚してからも、専属トレーナーをつけて加圧トレーニングを始めるなど、飽くなき肉体的挑戦をし続け、がん闘病とゴルフの両立を模索し続けたのです。一時は、前立線がんの数値を示すPSA値が最大23.4ng/mlから0.3にまで減少したこともあったそうで、その時は、がんを克服した、と本人も考えていたようです。
PSAが最大23.4という値はそう高い数字とは思いませんがPSAの値だけで前立腺がんの病勢を判断できるものではありません。一般にホルモン治療を行うとPSA値は低下します。杉原さんの場合、0.3まで低下したということは治療が効いていたのでしょう。しかしPSAの最低値から25%以上かつ2ng/ml以上増加した場合に「再発」を疑います。また前立腺を全摘出した後なら、PSAが0.2を超えたときに「PSA再発」と呼びます。そうした意味から、0.3というのは微妙な数字だと思いました。そこから転移が判明する場合は、正確には「再燃」と呼ばれています。
果たして、その10年後の2008年。とうとうリンパ節転移による再発(再燃か)が判明してしまいます。同年8月の長野オープンで、杉原さんはこんなふうにインタビューに答えていました。
「がんがここへきて、リンパに転移しているらしいんや。首筋のじゃなく下半身にあるリンパやけどちょっと気になっている。8月12日にもう一度検査をするが、医者によると粒子線治療というのをやるらしい」