【1984年・プロ野球】阪神・掛布 vs. 中日・宇野!最後は残念だったホームラン王争い
2023年11月2日 更新

【1984年・プロ野球】阪神・掛布 vs. 中日・宇野!最後は残念だったホームラン王争い

1984年のホームラン王は、阪神・掛布、中日・宇野の両選手がタイトルを獲得しました。しかし、その輝かしいタイトルを汚すかのように、消化試合となったシーズン最終2試合では、まさかの両チームによる敬遠合戦に。両選手のタイトル争いと敬遠合戦の裏事情を振り返ります。

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ホームラン王争いは大混戦

1984年のシーズン前半セ・リーグのホームラン王争いは大混戦でした。オールスター直前(7月19日時点)のホームラン数上位の選手は次の通りです。

25本 掛布雅之(阪神)
24本 ウォーレン・クロマティ(巨人)
23本 ランディ・バース(阪神)
20本 衣笠祥雄(広島)
20本 谷沢健一(中日)
20本 大島康徳(中日)
20本 ケン・モッカ(中日)
18本 山本浩二(広島)
18本 宇野勝(中日)


前々年にタイトルを獲得した掛布が25本でトップ。1本ずつの差で、クロマティ、バースと続きます。目立つのは、中日の20本トリオ。谷沢、大島、モッカが20本ずつで、前半戦首位のチームを象徴するような成績です。そして、最終的にホームラン王を獲得する(はずの)宇野は、この時点ではまだ18本。掛布とは7本差で、チーム内でも20本トリオに続く4番目の成績です。ここからどのように巻き返すのでしょうか。

8月で宇野がトップに

後半戦の8月に入ると、宇野が驚異的なペースでホームランを打ち出します。

まず、8月2日〜8日の1週間で、なんと5ホームラン。そして、8月12日の阪神戦では、掛布の目の前で2ホームランを放ち、27号で掛布と並びます。この時点で、1位のクロマティと1本差です。

そしてついに、8月14日の大洋戦で28号を放ち、クロマティと1位タイに。8月22日の阪神戦で再び2ホームランを放ち、30号で単独トップに立ちます。

結局、8月は15本のホームランを放ち、月間MVPを受賞。2位の掛布、クロマティに3本差をつける独走状態となりました。

8月終了時点でのホームラン数上位の選手は次の通りです。

34本 宇野勝(中日)
31本 掛布雅之(阪神)
31本 ウォーレン・クロマティ(巨人)
27本 ケン・モッカ(中日)
27本 山本浩二(広島)
27本 中畑清(巨人)
26本 ランディ・バース(阪神)


宇野の初タイトルが現実味を帯びてきました。

掛布と宇野の争い

ところが、9月に入ると、宇野のホームラン数が伸び悩みます。最終的に、9月に打ったホームランは3本。最後に打った37号が9月22日の広島戦で、以後はシーズン終了までホームランを打つことはありませんでした。

一方の掛布は、9月20日終了時点ではまだ33本でしたが、9月22日から26日にかけて、4試合連続ホームランを放ち37号。ついに、トップの宇野と並びました

9月終了時点での上位3人の記録は次の通りです。

37本 掛布雅之(阪神)
37本 宇野勝(中日)

35本 ウォーレン・クロマティ(巨人)


掛布、宇野は残り2試合。クロマティは残り3試合。実質、掛布と宇野の一騎打ちとなりました。しかも、彼らの残る2試合は、阪神、中日の直接対決です。となると、何が起こるのか・・・!?

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阪神対中日の2連戦

以下は、当時、阪神の監督だった安藤統男氏の述懐です。

掛布のYouTubeチャンネルでも、当時の裏事情や自身の苦労を赤裸々に話しています。
「カケ(掛布)は『勝負したい』と言っていたけど、最終戦の試合前にヤマさん(中日の山内一弘監督)から『アンちゃん、うちは勝負せんからな』と電話があった。『勝負しようよ』と言ったが、『掛布はこの先何度もチャンスがあるけど、宇野はこれが最初で最後だろうから取らせてあげたい。頼むよ、アンちゃん。うちは歩かすよ』とね。僕は現役時代に阪神でヤマさんと一緒にプレーしたので相談しやすかったのでしょう。

 それで4番しか打たせていなかったカケを3番にして相手の出方をうかがったら、2死走者無しでいきなり歩かされた。こっちだけ勝負して宇野に打たれたら、カケがタイトルを取れないばかりか、打たれたピッチャーの野球人生にかかわると思い、敬遠を指示しました。昔は優勝が決まると後は消化試合で、こんなことはあっちこっちであった。査定にも影響するから、監督としては選手の給料を上げてやろうと必死だった」

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この話の通り、両チームにとって1984年シーズンの最終2試合(129、130試合目)となった、阪神-中日戦は、掛布、宇野への敬遠合戦となりました。各試合5回ずつの敬遠で、掛布も宇野も前代未聞の10連続敬遠。記録では、敬遠扱いになっていないフォアボールがありますが、事実上の敬遠です。

その徹底ぶりが如実に現れたのが、129試合目の7回裏中日の攻撃。2アウト満塁で迎えたバッターが宇野でした。それでも、阪神ベンチは一貫して敬遠の指示。結局、宇野を歩かせ、"故意押し出し" で中日に1点を献上しました。

因みに、130試合目に先発したのが、その年の新人の池田。宇野は歩かせても好投を続け、勝ち投手の権利を持ったまま降板します。しかし、後続が打たれ、その年の新人王と二桁勝利は夢に終わりました。

最終的には、掛布と宇野の2人がホームラン王のタイトルを獲得。そして、山内監督の言葉通り、宇野にとって唯一のタイトルとなりました。
宇野氏はどんな心境だったのか。

(中略)

「当時は若いからまたチャンスが来るだろうと思っていました。実際に翌年は4本増の41本塁打でしたが、バースが54本打ったので遠く及びませんでした。結局、プロ生活で獲得した個人タイトルはこの年のホームラン王だけなので、今となっては“大人の判断”に感謝したい気持ちもあります」

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