新人・田中美佐子がヌードを披露した映画『ダイアモンドは傷つかない』
主演を務めたのは、前年にドラマ『想い出づくり』でデビューしたばかりの田中美佐子でした。
デビュー当初はヌードを披露していた田中美佐子ですが、実はとても嫌だったそうで、それを理由に一時芸能活動を休止しています。
しかしながら、同作でのまさしく身体を張った演技はいわゆるハマり役で、どこかアンニュイで冷めた女子大生を演じています。クールさを保ちつつも、妻子持ちの男性に惹かれ、没頭していく様を見事に演じ切っています。
また、同作で田中美佐子は第6回日本アカデミー賞(1983年)の新人俳優賞を獲得しています。
その期待の新人の相手役に選ばれたのは山崎努でした。黒澤明の『影武者』(1980年)でキネマ旬報報知映画賞助演男優賞を受賞するなど、演技に円熟味が増してきた頃に撮られた同作。なんとも飄々とした役柄を見事に演じ切りました。
本作は元々 三石由起子の小説で、小説家 三浦哲郎の推薦により1981年『早稲田文学』(1981年)に掲載されたもの。その後、浅野温子主演の『スローなブギにしてくれ』(1981年)での監督や鈴木清順監督作品『ツィゴイネルワイゼン』(1980年)での名演技で知られる藤田敏八がメガホンを取り、映画化されました。
リアリティのある人物設定
田中美佐子演じる越屋弓子は、早稲田大学の学生という設定で、いわゆる才色兼備のクールな女子大生という役どころでした。
同作の原作者である三石由起子は、河合塾で漢文の講師を務めていたともされ、映画化にあたってリアリティが追求されていたように思います。
代ゼミ古文講師がヒーローでヒロインが早大生なんて映画があるなんて知らなかった!しかもヒロインと学年かぶってる!「ダイアモンドは傷つかない」。
— 石野良和 (@mizuho1582) August 26, 2017
僕ももう36年生まれていたら……。
田中美佐子の坐ってる席、土屋博映先生の定席であった。先生がおられない日は、あやかって私が坐ってた。 pic.twitter.com/qcxJ3gD3Ix
『ダイアモンドは傷つかない』 あらすじ
現在大学生である弓子は、一郎の元教え子であるが、ある雨の夜に偶然親しくなって以降不倫関係にあった。
ただ、一郎は酒と女のために予備校をかけ持ちするどうしようもない中年男だ。
もう一人10年以上前からの愛人となる牧村和子(加賀まりこ)もおり、彼は真知子、弓子を含めた3重生活をしているのだった。
また、弓子は弓子で披露宴での一件以外にも、和子が経営する帽子屋に訪れて、自分こそが“一郎の女”と牽制するなど一郎を取り合う。それほど一郎に惚れていたのだ。
一方の弓子はある日言われた「50年経ったら結婚しよう」という一郎の言葉を理解しようとしながらも、彼を愛した事から始まった行場のない淋しさに疲れ始めていた。
順調に塾講師を続けていた弓子だが、一郎に指定されたレストランに約束時間よりだいぶ前に入ると楽しく食事をする一郎と和子を偶然見つけてしまう。一郎は同じレストランで浮気相手との食事を済ませようとしていたのだ。
弓子は一郎の元に行き自身と別れてくれるよう感情的に訴える。店を飛び出した弓子は、亡霊のようにふらふらと街を彷徨う。
すると偶然、街中で一郎と再会する。結局二人は何軒も回り酒を飲み、へべれけ状態になる。するとさっきまで別れると言っていた弓子だが、いつものように身体を許してしまう。
翌朝一郎が和子と直接話し合うために和子宅を訪れてドアを開けるが、その瞬間彼女は彼に向かってゴルフクラブを振り下ろす。