プロローグ
そのグループ名は「悪意と悲劇」というフランス語に由来するが、バンド絶頂期でのヴォーカルGacktの失踪、ドラムKamiの急死など、まさにバンド名をトレースするかのような彼らの栄光と挫折の歴史を追っていくことにする。
結成~GACKT加入
Manaは当初から「女形」という役割を貫いていたが、このコンセプトが大きく花開く時がやってくる。1995年10月、バンドの「紅一点」をさらに引き立てる完璧な「王子」、2代目ヴォーカリストGacktの加入だった。
インディーズ期の快進撃
独特な世界観を徹底したライブは大きな話題を呼び、ヴィジュアル・ロック・ファンの間ではMALICE MIZERは徐々に大きな位置を占めるようになっていく。
その後、全国9か所のワンマンツアーを経て、12月には黄金期メンバーとしての初の音源である1stシングル『麗しき仮面の招待状』をリリース。
また、1996年6月9日にはフル・アルバム『Voyage(ヴォヤージュ)』をリリース。初回限定版は、予約のみで完売。通常盤は、オリコンインディーズチャート初登場1位を獲得。
10月10日には新生MALICE MIZER 1周年を記念して当時としては珍しかったブックレット付CDシングル『ma chérie~愛しい君へ~』を完全限定予約生産でリリース。手に入れられなかったファンからクレームが殺到するなどバンドの存在はさらに大きく知られるようになっていった。
そして、この頃からメンバーはメジャー進出を視野に入れるようになっていく。
MALICE MIZER(マリスミゼル) ma chérie ~愛しい君へ~ [HD] - YouTube
メジャー・デビュー前夜
そんな状況下でもMALICE MIZERのメンバーはいつもと変わらぬ世界観で圧倒的なライヴを行い、メジャー各社は実際に見る彼らのステージの斬新さと徹底した演出に度肝を抜かれた。
この時すでに1997年1月10日の日本青年館公演は即日SOLD OUTになっており、その人気と実力に魅了された各社が何とかMALICE MIZERの契約を獲得しようとやっきになっていたのも当然の話だった。
中でも熱心にメンバーをくどいたのがソニー・ミュージックと日本コロムビアだった。ソニー・ミュージックはメンバーひとりひとりに担当者を付ける徹底ぶりだったが、「この担当者とやってみたい」というGacktの強い意志が反映されて最終的に日本コロムビアに決定したという。
その後、3月24日には大阪 メルパルクホール、4月1日には東京 渋谷公会堂を即日SOLD OUTさせ、メジャー・デビュー前のバンドとしては圧倒的な人気を誇るようになっていった。
そして、6月30日に発売された渋谷公会堂のLIVE VIDEOを最後にMALICE MIZERはメジャーへ進出することになる。
メジャー・デビュー
この作品もかなり異質なパッケージだったといえるだろう。シングルにVHSビデオがバンドルされ豪華ボックスに入った商品だったのだ。
前例がないのは形態だけではなかった。それ以上にファンや業界関係者の度肝を抜いたのが映像作品の内容だった。およそロックバンドの映像とは思えないメンバー主演の「短編映画」が収録されていたのだ。しかも、この「短編映画」をオール・フランス・ロケで制作したというのだからなお驚きだった。
その映像の最後は『ヴェル・エール~空白の瞬間の中で~』のミュージック・ビデオで締めくくられており、「短編映画」自体は別れや死をテーマにした『ヴェル・エール~空白の瞬間の中で~』のプロローグを綴る作品という位置づけになっている。
この「短編映画」はなかなか難解(破天荒?)であり、MALICE MIZERの謎めいた世界観を大きく盛り上げるものになっている。
この作品が難解なものになったしまった現実的な理由は、メンバーの出演時間を極力平等にしていったからではないだろうか?主演であるGacktはともかく、ストーリー上は重要な役ではないメンバーまである程度の出演時間を稼ぐために物語としてのメリハリが薄くなり、結果わかりづらいものになってしまったと考えるのはうがった見方だろうか?
とにもかくにも、この奇抜なメジャー・デビュー作品は大きな話題になりオリコンチャート20位、5万6000枚のセールスをあげることになった。
『ヴェル・エール~空白の瞬間の中で~』をひっさげてMALICE MIZERは、「STANDING TOUR '97 Pays de merveilles ~空白の瞬間の中で~」を敢行。7月20日、21日の赤坂BLITZ 2daysを含む全13のライブハウス公演を行う。全公演即日SOLD OUT。そして、秋には、日比谷野外音楽堂2daysを行った。
[PV] MALICE MIZER - ヴェル・エール~空白の瞬間の中で~ - YouTube
作品性の頂点を極めた『au revoir(オ ルヴォワール)』
哀感溢れるヴァイオリンのイントロが印象的なこの楽曲はメンバー全員が考えるMALICE MIZERらしさを凝縮しきった作品に仕上がっており、ミュージック・ビデオ撮影時にはGacktが楽曲の世界観に合わせるため長かった髪をその場でばっさり切ったという。
MALICE MIZERの快進撃が大きなカーブを描くきっかけになったこのシングルはオリコンチャート初の10位を獲得。累計11万枚のセールスを上げた。
年末には、愛知勤労会館、大阪厚生年金会館、 渋谷公会堂2daysを行い、すべてSOLD OUTにさせている。