3000回死んだ男。殺され役に徹した名バイプレーヤー川谷拓三とは。
2021年5月27日 更新

3000回死んだ男。殺され役に徹した名バイプレーヤー川谷拓三とは。

拓ボンの愛称で、数々の作品に出演した名バイプレーヤーの川谷 拓三(かわたに たくぞう)。高知県安芸市出身 1995年12月54歳で、肺癌のためこの世を去りました。

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川谷拓三(かわたに たくぞう)とは  -Wikipediaーより

父・川谷庄平は日活のカメラマン、母・二三子は女優で、映画関係の家族の四男一女の三男として1941年満州新京(長春)で生まれました。
敗戦とともに6歳の時、川谷拓三(かわたに たくぞう)を含む家族は高知県安芸市へ引き揚げました。

引き上げ当時、父は定職がなく、母が市内の映画館・太平館の自転車預かり所で働き生計を支えていました。
拓三は、小学校3年の時から母の職場(映画館)へ出入りし、放課後はポスター貼り、看板のかけ替え、夜は自転車預かりをしながら映画に親しんだのです。

中学に入学した頃にマーロン・ブランドの「乱暴者」を観て、自分も映画俳優になろうと決意。
中学卒業後、俳優になるため京都へ向かうのですが、氷屋での丁稚時代が2年間程続きます。

しかし、1959年秋(18歳の時)にエキストラ・グループに入り、美空ひばり主演の東映作品「ひばり捕物帖 振り袖小判」で死体役としてデビューします。
その半年後の1960年4月、大部屋俳優として東映京都撮影所に入社。斬られ役、殺され役専門で1日3回も死体を演じました。

1963年(22歳の時)に大部屋仲間の女優:仁科克子(にしな かつこ)と結婚し、二人の子どもを授かります。長男:仁科貴(俳優)、長女:仁科扶紀(元女優)です。
川谷一家

川谷一家

1976年には、大部屋俳優仲間と「ピラニア軍団」を結成し、ピラニア軍団俳優総出演の映画「河内のオッサンの唄」で初主演を果たしました。

その後、東映から独立。バイプレーヤーとしても様々な映画・ドラマに出演しますが、主演としても数々の作品に出演しています。
1982年の「3年B組貫八先生」もその一つですね。

1995年に体調を崩し、東京の病院で検査入院した際、末期の肺ガンと判明。
同年10月に京都に移り、京大附属病院に入院したのですが、同年12月22日54歳という若さで亡くなりました。

「斬られ役・殺され役」俳優へ

「失敗したら明日はないという過酷な時代、悔いのないようにやろう」という心構えで、
通行人や殺され役などの大部屋生活を15年という長きにわたって経験した川谷拓三。

1965年から役名もつきはじめ、1967年「日本侠客伝・斬り込み」で初めて台詞のある役ををもらいました。

1971年、中島貞夫監督が「懲役太郎・まむしの兄弟」、ATG作品「鉄砲玉の美学」、東映作品「現代やくざ 血桜三兄弟」で川谷を起用します。
さらに「現代やくざ 血桜三兄弟」では、日本映画初の全身火だるま役を体当たりで演じ、1974年には「史上最大のヒモ・濡れた砂丘」で初主演を果たしました。

前後して1973年から「仁義なき戦い」シリーズに出演し始め、第2作「仁義なき戦い 広島死闘篇」では、モーターボートで海中を引きずり回された挙句、木に吊るされピストルやライフルの標的にされて無残な死を遂げたチンピラを演じます。

第3作「仁義なき戦い 代理戦争」では、出演予定だった荒木一郎の降板により、山城新伍・成田三樹夫・渡瀬恒彦ら出演者の推薦で川谷が代役を務め、女に捨てられ敵に抱き込まれるチンピラ・西条勝治を演じ、この作品で初めてポスターに名前が載ることになったのです。
そのポスターがこちらです。
仁義なき戦い 代理戦争

仁義なき戦い 代理戦争

さらに1975年に「県警対組織暴力」では、チンピラヤクザの松井卓を演じ、菅原文太・山城の両刑事に取調室でいたぶられる迫真の演技により、京都市民映画祭の助演男優賞を受賞しました。

深作欣二監督の目に留まってからは、「新仁義なき戦い」3部作(1974年 - 1976年)、「資金源強奪」(1975年)、「やくざの墓場 くちなしの花」「暴走パニック 大激突」(1976年)、「ドーベルマン刑事」(1977年)と出演し続け、その存在が次第に大きく認知されていくこととなったのでした。

「県警対組織暴力」の出演後、萩原健一から「松井卓(役名)、よかったですね。今度一緒に仕事をしましょう」と声をかけられ、同年10月にテレビドラマ「前略おふくろ様」に同じ東映の名バイプレーヤー・室田日出男とともに鳶職人・利夫として出演しました。

この室田日出男とのコンビは、1976年映画「トラック野郎・望郷一番星」でも、警官役を演じるなど、本作をきっかけにお茶の間にも広く知られるようになったのです。
室田日出男と川谷拓三

室田日出男と川谷拓三

バイプレーヤーの地位を築いた川谷

大部屋俳優として専属契約していた東映から独立してからは、1978年にNHK大河ドラマ「黄金の日日」や、「愛の亡霊」に出演。
1979年に「さらば映画の友よ インディアンサマー」では主演を、「不毛地帯」などの映画や連続テレビドラマ出演が相次ぎました。

1980年には刑事ドラマ「警視-K」(日本テレビ)にレギュラー出演し、
1981年には同じく日本テレビの「ダウンタウン物語」で、貧乏牧師というシリアス役を演じます。
1982年には、桜中学シリーズ「3年B組貫八先生」(TBS)主演、担任教師・神崎貫八を演じたことはご存知でしょうか。

映画では「キッドナップ・ブルース」(1982年)、「真夜中のボクサー」(1983年)、「伽耶子のために」(1984年)など助演したのち、1985年には「薄化粧」と「ビルマの竪琴」の演技によって、日本アカデミー賞の優秀助演男優賞にノミネートされます。

「男はつらいよ 柴又より愛をこめて」にもゲスト出演。
1987年には「塀の中の懲りない面々」に出演し、1988年には、「母」と「つる -鶴-」に出演し、再び日本アカデミー賞の優秀助演男優賞にノミネートされました。

テレビドラマでは、大河ドラマ「山河燃ゆ」(1984年)、「國語元年」(1985年)、銀河テレビ小説「月なきみ空の天坊一座」(1986年)、NHK連続テレビ小説「チョッちゃん」(1987年)などNHK作品にも立て続けに出演。「風よ、鈴鹿へ」(1988年)では鈴鹿8耐に毎年連続参戦していた実在のレーサー・千石清一を好演しました。
「風よ、鈴鹿へ」

「風よ、鈴鹿へ」

晩年は、「座頭市」(1989年)、「陽炎」(1991年)、「継承盃」(1992年)に出演。
映画「撃てばかげろう」(1991年)、「おろしや国酔夢譚」(1992年)、SF青春映画「はるか、ノスタルジィ」(1992年)、「首領を殺った男」(1994年)、「プロゴルファー 織部金次郎2 〜パーでいいんだ〜」(1994年)など幅広く活躍しました。
そのほか、ドキュメンタリー映画などにも出演しています。

トーク番組やバラエティ番組にも多数出演しており、日本テレビ「EXテレビ・芸能才人図鑑」にゲスト出演(1993年)しています。
番組の中で、初めて映画主演したことよりも「仁義なき戦い 代理戦争」のポスターに名前が載ったことが、「死んでいい」と思うほど嬉しかった、この時の喜びに勝るものはないと話しています。
その時の動画がありますので、ご覧ください。

EXテレビ「芸能才人図鑑」

どん兵衛のCMといえば山城新伍と川谷拓三

1978年から放送されたどん兵衛のCMを覚えていますか?
山城新伍と川谷拓三のコメディタッチなCMは、どのバージョンも面白かったですよね。

年越しそばにインスタントという発想もこの頃からではないでしょうか。

「仁義なき戦い」などで共演している山城新伍との息の合ったやりとりが
任侠映画とは違った二人の関係が垣間見れるようです。
それでは、CM動画をご覧ください。

1977-1990 川谷拓三CM集 with Soikll5

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  • B6 2020/6/27 22:43

    1941年生まれって書いてるのに、95年に77歳とか。。。。
    記事書くのに1番大事なことなのに確認しないのかな。

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