村上春樹氏とファンの宿願(?)達成なるか――2017年ノーベル文学賞の発表は5日20時を予定。
2017年10月5日 更新

村上春樹氏とファンの宿願(?)達成なるか――2017年ノーベル文学賞の発表は5日20時を予定。

2017年ノーベル文学賞受賞者の発表が10月5日、日本時間20時を予定している。今回も日本人有力候補として村上春樹氏の名前が挙げられている。他、ケニアやカナダの人物も注目されているようだ。

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ノーベル文学賞受賞者、5日20時発表予定

ノーベル賞

ノーベル賞

 学問と世間の距離が縮まる週間、ノーベル賞発表の季節が訪れている。

 すでに発表されているのはノーベル生物学・医学賞と物理学賞。
 生物学・医学賞を受賞したのがマイケル・W・ヤング氏、マイケル・ロスバッシュ氏ジェフリー・ホール氏の3氏。
 物理学賞受賞者はキップ・ソーン氏、ライナー・ウェイス氏、バリー・バリッシュ氏の3氏。

 直近3年間、ノーベル賞受賞者のなかには連続して日本人がいた。
 4年連続受賞なるか――ということで各位が盛り上がっているが、これを書いている現在、自然科学系で残っているのは化学賞のみとなっている。

 受賞すれば本人だけではなく、近しい研究に携わっている人の評価が上がる可能性もある。
 自然科学の探求者たる諸兄の胸中、いかがだろうか。
2017年ノーベル生理学・医学賞受賞者のひとり、マイケ...

2017年ノーベル生理学・医学賞受賞者のひとり、マイケル・W・ヤング氏

 さてそんななか、5日20時にはノーベル文学賞の受賞者が発表されると言う。

 去年は詩人にしてミュージシャンのボブ・ディラン氏が受賞し、連絡がつくつかないという出来事もあったが今年6月に恒例の受賞関係講演をこなし無事に賞金が手渡されたようである。


 我らが村上春樹氏はと言うと、去年は惜しくも(?)受賞を逃している。
 最初に話題になったのは2006年、アジア人で初めて《フランツ・カフカ賞》を受賞してからのこと。
 それから毎年有力候補として噂されはや10年。
 今回のブックメーカーでも人気としては低くないが「実際に受賞すると思いますか?」という問いかけに対しては首をかしげる人が多いようである。

 他に受賞予想がたてられている人物としてはケニアのマルチなキクユ語(母語)話者、グギ・ワ・ジオンゴ氏の存在が大きい。
 彼は70年代に反体制人物として拘禁されつつもトイレットペーパーに作品を書いたという傑人にして時代の生き証人。2016年には韓国の朴景利文学賞を受賞。
 79歳という年齢もノーベル賞好みで、今回の最有力候補であろう風格を持っている。
グギ・ワ・ジオンゴ氏

グギ・ワ・ジオンゴ氏

 カナダのマーガレット・アトウッド氏も人気である。
 1939年生まれの彼女は小説家にして詩人、刊行した本は60冊を超え、翻訳されること世界15ヶ国以上を数えている。

 受賞歴がすごい。
 1964年に詩集で《カナダ総督文学賞》を受賞した後、1985年にはディストピア小説《侍女の物語》でなんと2度目の《カナダ総督文学賞》をさらった。
 2000年には《ブッカー賞》、2008年《アストゥリアス皇太子賞》、2009年《ネリー・ザックス賞》、2016年《ストルガ詩の夕べ金冠賞》、2017年には《ドイツ出版協会平和賞》そして村上春樹も経験した《フランツ・カフカ賞》。やれやれ、と言いたくなる受賞数である。
マーガレット・アトウッド氏

マーガレット・アトウッド氏

 過去の日本人作家にも触れておこう。

 日本人でノーベル賞と言えば、文学史的にはなんといっても川端康成である。
 彼において語っておきたいのは〝徹頭徹尾日本人としてノーベル賞を受賞した〟という点である。

 去年のディラン氏、マーガレット・アトウッド氏、そして村上春樹氏たちは世界規模で活躍する文学人たちである。その世界市民のひとりとしてその功績は大きい。
 一方でその国にはその国が誇る芸術性というものがあったりする。
 川端康成は《日本人の精神を優れた感受性で表現し世界に感銘を与えた》というのが受賞理由だった。
 〝ノーベル賞の授賞式に紋付き袴で現れ「美しい日本の私―その序説」を日本語で語る〟ということが可能だった日本人は史上どれほどいるだろう。

 受賞は1968年のことであった。
川端康成

川端康成

 1935年生まれ、いまだ存命の大江健三郎氏を語りたいという方も多いだろう。

 彼は東大の文学部でフランス文学を研究しながら「飼育」を書き学生でありながら芥川賞を受賞した。23歳、当時では最年少であった。
 川端康成と違い《文壇》というものがある程度安定した時期に現れ、サルトル的だというその作品と人物は多くのところで良かれ悪かれ注目され話題となった。
 1958年芥川賞、
  64年新潮文学賞
  67年谷崎賞
  73年野間文芸賞
  83年読売文学賞、大佛次郎賞
  84年川端賞
  90年伊藤整文学賞
 そして94年にノーベル文学賞という流れは、日本文壇はノーベル文学賞に値する作家を輩出できていたし、認めることができていた――ということでしばしば語り草となる。
 ノーベル賞受賞時の公園として《あいまいな日本の私》を用いたのは、川端から大江に至るまでの日本文学の変遷のひとつを実にわかりやすく現わしているという教科書的なエピソードである。

 ノーベル賞受賞後も95年朝日賞、02年にはレジオンドヌール勲章を受け取っている。
大江健三郎氏

大江健三郎氏

 こうして並べてみると、仮に村上春樹が受賞した場合は日本人文学者における国内外のとらえ方の変遷ということで論文が数個できそうである。村上春樹研究も当然賑わいをみせるだろう。
 一方、ちらっとではあるが宮崎駿氏の名前も噂で耳にしており、それはそれで面白いが流石に面白すぎではないか~? というのが個人的な印象である。
村上春樹氏

村上春樹氏

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