1962年公開『噂の二人』オードリー・ヘップバーンとシャーリー・マクレーンの残酷で美しい同性愛を描いた映画!
2018年7月13日 更新

1962年公開『噂の二人』オードリー・ヘップバーンとシャーリー・マクレーンの残酷で美しい同性愛を描いた映画!

「愛するだけでも罪なのですか?」と訴えかけてくる映画、『噂の二人』。そんなことを考えさせられる内容でした。カレン扮するオードリー・ヘップバーンが一本道を颯爽と歩くシーンは、社会の変革に先駆ける女性を表しているようでしたね。そんな彼女の美しさは今も輝いています。

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当時、ハリウッドには、倫理チェックを自主的に行おうとする「ヘイズ規制」があった。

配給協会初代会長ウィル・H・ヘイズは、大衆に良質な映画を贈ろうという理念のもとに、あらわなセックス・シーンや暴力描写を禁じようと製作の企画段階から完成に至る全行程を倫理審査委員会の監視下に置いたのです。
そして、不道徳な戯曲「子供の時間」の映画化ということもあり、要監視の判定を下した「この三人」(後の『噂の二人』)に、製作するについて幾つか条件が出されました。

戯曲の映画化と分かるような題名の使用や広告をしないこと、映画中に同性愛を仄めかさないこと。
この規制によってヘルマンは、この物語を、ありふれた三角関係の話に書き換え、ワイラーは、不本意な映画を撮ることとなりました。
この「ヘイズ規制」は、アメリカン・ニューシネマの登場までの長い間、ハリウッドを支配したと言われています。
しかし、一面では、この規制があったから、皮肉にも(?)
例えば、キス・シーンをどのように美しく、しかも官能的に撮るかという工夫や高い技術を極められたとも言われています。

ファンの感想

今だから「こういう価値観もあっていいよね」と思えるようになったこの頃。
まだまだ偏見が多い世の中ではありますが、少しずつ改善されていく在り様が救われますね。
そして、守ってあげたくなるほど、思いを告白するシーンには胸を打たれ、マクレーン可愛かったのは同意。ラストのオードリーはなんかもう神々しいくらいにかっこよかった。
そのクソ憎たらしいガキの役がすごくハマっていて、
リアルにいたら嫌だけどフィクションとしてはとてつもなく面白いキャラクターでした。
噂や偏見も怖いもの。
そしてやはり一番こわいのは…
人の、「こうだからああなる」という根拠のない“思い込み”なのかもしれません。

まとめ

「噂の二人」は、いわば当時にあっては、タブー視されていた同性愛を扱ったシリアスな物語です。道徳諸団体や、「良識」あるファンから危惧や反対が当然あったでしょう。
それでも、そうした圧力のなか、この「噂の二人」に敢えて、出演しようとした意気込みは並大抵なものではなかったろうと思います。
(そこらへんに「お姫様女優」というイメージから脱しようと、懸命に意欲的な作品を模索した彼女の焦りもあったかもしれませんね。)
当時はたとえ噂話としても同性愛をほのめかすのは憚られ、
「ヒロイン2人と男性の三角関係」に脚色されたとのこと。
これは“作品の根幹を変えてしまう”変更ですが、
ヘルマン自身がこれを承諾した事実からも、
80年前のアメリカでは同性愛というものがどれほどのタブーであったのがうかがい知れますね。
その風潮は25年後の1961年でもまだ強く、登場人物の誰もが口にするのをためらうほど。
例えば騒ぎの発端となる少女は、2人の関係を有力者である祖母に告げ口するとき、
「大きな声ではとても言えない」と言って耳打ちします。その瞬間に祖母は目を剥いて驚愕しています。

ここら辺、唐突ですが、
不意に筆者は、
江口寿史さんの『ストップ!!ひばりくん!』のひばりくんのお父さんを思い出します。
こちらのお父さん、ひばりくんの女装癖を「異常だ!」とか「その性根叩き直してやる!」とか、
息まいて矯正にかかるんですよね。
ひばりくんの連載が1980年代でしたから、これでも偏見が強かったこの頃。
1962年に公開されたとき、日本人はどんな反応だったのか気になるところです。
何にせよ、人を愛するのに、ただ愛することだけでも
タブーとされていた時代があり、
人としての尊厳もかかわっていた上に自己否定にすら走らざるをなかった、
というのは何とも切ないことですね。
無理に愛を押し付けるのはいけないことですが、
何れにせよ、今時代は
ただその人が生きていることを喜ぶことを許してくれる時代であってほしいものです。

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