ななみ満月がゆく!オトナの毒々映画レビュー「田園に死す」
2018年9月3日 更新

ななみ満月がゆく!オトナの毒々映画レビュー「田園に死す」

ななみ満月がゆく!オトナの毒々映画レビュー。今回は「田園に死す(1974年)」by寺山修司です!

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呆気なく夏が終わった。蕁麻疹に苛まれたこと以外あまり覚えていない夏だった。しかし毎年海も、花火も、旅行とも縁がないから、いつも通りだったとも言える。ただ今年の夏は公開された映画たちがなかなか面白かった。それだけで個人的には満足である。

「田園に死す(1974年)」by寺山修司

本日は『田園に死す』を紹介したい。このコラム初となる邦画であり、今までに紹介した中で一番クセが強いとも言える作品だ。ここではほぼ毎回「好きな人は好き」「観る人を選ぶ」などのコメント付けているが、こちら関してはその言葉が最も相応しい。

田園に死す Pastoral: To die in the country (1974) (English subs), Shuji Terayama

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舞台は青森県下北半島、少年の「私」は母の重苦しい愛に包まれ、壊れて音が鳴り続けた柱時計と共に出口のない生活を送る。ある日、村にサーカス団がやってきて団員に遠い町の話を聞き、村の外の世界へ憧れは募るばかり。すると想いをはせていた隣の家の美人な人妻と急激に親しくなり、駆け落ちをして村を出ないかと誘われる。そして腹を決め、村と母から離れる事にする。

そして画面は変わり、大人になった「私」が現れる。彼は映画監督になっており、自分の少年時代を映像化していたのだ。(序盤はその一部の抜粋なのである)しかし彼は苦悩していた、過去を美化していたことに。

メッセージ性はとても独特で分かりづらい!

美化とは何か?実は序盤の少年時代の出来事は、いくつか事実と異なるのである。結局は煌びやかなサーカス団の裏側を見てしまったり、「私」を駆け落ちに誘った女には愛人がおり、彼と心中をはかってしまう。更に、生まれたばかりの元気な赤ちゃんが登場するのだが、実際は奇形児。村人から酷く嫌われ、母親は悩んだ末に間引きをしてしてしまう。誰もが目を背けたくなる村の黒い真実だ。

そして隣の家の人妻に裏切られ、村から出ることにも失敗し、途方に暮れた少年の「私」と大人になった「私」は突然故郷の中で出会い、向かい合い、お互いと話を始める。結局大人になっても母親の元から逃れられていない「私」はここで「過去」を変えようとする……。

「読んでいてよく分からない」と思う人もいるだろう。私もこう考察してはいるものの、この作品は人によって捉え方が全く異なるため、あくまで「私なりの考察」である。メッセージ性はとても独特で分かりづらい、言いたいことがハッキリとこう!と断言できない。人によっては理解不能だとか全く面白くなかったとか、否定的な意見も飛び交う。しかしながらその独特の映像、世界観が美しく目が離せなくなるのだ。要所要所にメッセージが沢山込められていて一つ一つ、全部説明したいくらいである。分かりづらくはあるものの、白塗り一つにも意味は込められていて、それを読み取っていくのがこの作品の楽しみ方だと言えるだろう。

前にのめって観るよりも、ゆらゆらと流されるように鑑賞するのをお勧め!

白塗り、全身黒づくめ、サーカス団などTHEアングラな世界観は好きな人には堪らないだろう。どこか不気味で生々しい雰囲気を醸し出しているが、不思議と引き込まれる要素をふんだんに含んでおり、非常に中毒性が高い。個人的には白塗りに学ラン、囲み目メイクなんて見ているだけで心躍る。ただ、不気味さを苦手としている人も一定数いるようで、今まで紹介した作品以上に意見が割れる。

母親の愛情が観ていて重々しく、べっとりとしたものを感じるので「私」が逃げ出したくなるのも納得できる気がする。父親は亡くなっているため、母親は非常に過保護のようにも思えるが。そんな母親から逃れようとするものの、隣の家の人妻は結局愛する人が別にいた。その際の人妻の目つきが冷たく、嫌というほど女なのである。人の見方によるのかもしれないが、15歳の少年には打撃が大きすぎるだろう。村の人間達の嫌味っぽさ、湿っぽさ、それが全面に現れていて私は現代社会とついつい重ね合わせてしまった。70年代という古さではあるが、そういった「人間の黒さ」は何一つとして変わっていないのではないだろうか。

ハラハラドキドキするのが物語・作品を観るにあたっての醍醐味だと思うがこの作品は、映像の中の流れに身を任せるのがいいだろう。前にのめって観るよりも、ゆらゆらと流されるように鑑賞するのをお勧めする。流れるように身を任せた物語の結末とは……。納得いくか、いかないかは、あなた次第。
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