脚本家デビューまで
倉本聰というのはペンネームで、仕事は本名の山谷 馨の名前で行っていました。ディレクター・プロデューサーなどをされていたんですよ。一方、会社に内緒で倉本聰の名前で脚本家としても活動していたんです。
ラジオ局なんて忙しそうなのに、仕事とは別に脚本を書いていたなんてすごいですよね。22時ころ帰宅して朝の4時まで脚本を書き、2時間睡眠で仕事をするという日々だったそうです。
脚本家デビュー作は日本テレビ系列の「パパ起きてちょうだい」でした。
会社に内緒で脚本活動をしていたため、仕事では顔を知れている若手の脚本家は採用せず、ベテランばかりを起用していたそうです。ある時上司から「最近倉本って若手が出てきたから一度会って来い」といわれたそうです。漫画みたいな話ですよね。これをきっかけに潮時だと思い1964年にニッポン放送を退社しました。2時間睡眠の生活は体力的にも限界だったようですね。
その後は東京でフリーの脚本家として活動していました。
富良野に移住したきっかけは大河ドラマ
#渡哲也
— わいわい (@fyoshiyoko) August 14, 2020
主役に抜擢されながら、病気途中降板したNHK大河ドラマ『勝海舟』。
同じく脚本を倉本聰が書いていた『大都会〜闘いの日々』の黒岩刑事。
いずれでも、影を引きずるような雰囲気が感じられ、印象深く感じました。
ご冥福をお祈りします。 pic.twitter.com/DwyOfXYNrr
週刊誌『ヤングレディ』の取材を受けた際、内容がNHKを攻撃する内容に変わっていたそうです。記事は修正され、最終稿までチェックしていたのですが、「倉本聰氏、『勝海舟』を内部から爆弾発言」という広告が出回ってしまいました。
脚本家の演出関与の是非をめぐる問題について発言をしていたようです。制作局長には軽率な発言をしてしまったことを謝罪したのですが、二三十人からつるし上げられ、嫌気がさして脚本を途中降板。スタッフに大河経験者が少なかったこともトラブルの原因だったそうです。
その日のうちに東京から札幌に行き、1977年には富良野に移住しました。理不尽な出来事だったとは思いますが、この事件がなければ富良野に移住することもなく、「北の国から」も生まれなかったのかもしれないですよね。
「前略おふくろ様」が大ヒット
主演は萩原健一さん。今までアウトローな役を演じることが多かった萩原さんですが、このドラマでは純朴な板前の青年を演じています。他にもヤクザやプレイボーイを演じることが多かった梅宮辰夫さんを熟練の渋い板前役にするなど、今までのイメージを覆すようなキャスティングでしたがそれが成功しました。
「前略おふくろ様」というのは、主人公が故郷の母親に送るの手紙の冒頭を表していてその手紙を読む形でナレーションが入っています。のちに放送された「北の国から」でもこの手法が使われていて、東京の友人で恵子に純が「拝啓、恵子ちゃん」と話す口調でナレーションが入っていました。
「前略おふくろ様」は、東京の下町で板前として働く青年と周りの人の出来事を描いたドラマです。
放送終了から半年後に、1年半後を舞台にした第2シリーズも放送されました。
おふくろ様を演じたのは田中絹代さん。以前倉本さんが脚本を担当したドラマ「りんりんと」に出演したことをきっかけに深い交流ができたそうです。田中さんが亡くなった直後に、おふくろ様が亡くなる最終回が放送され話題になりました。
舞台はカナダ!「ライスカレー」
銚子工業高校野球部の同級生だったケン(時任三郎さん)、アキラ(陣内孝則さん)、ブンタ(布施博さん)の3人をメインにした物語。
3人の先輩である次郎(北島三郎さん)はカナダで寿司屋の板前をしていました。ある日、3人に連絡があり、カナダでライスカレー屋を開くので一緒にやろうと声がかかりました。3人はカナダに行く決意をしますが、ブンタは直前で行かれなくなり、ケンとアキラの3人でカナダに向かいます。
ところが、カナダにつくと次郎は寿司屋のオーナーの妻と駆け落ちしていなくなってしまいます。英語もできず、土地勘もない2人ですがいろいろな人と出会い、それぞれの夢に向かって奮闘していくという物語。
「前略おふくろ様」や「北の国から」とはまた違うイメージのお話です。海外が舞台というのは意外ですよね。
主演はとんねるず「火の用心」
「倉本聰 +とんねるず」のドラマ『火の用心』(平成2年)。
— TOKI (@TOKI_darna) July 17, 2016
とんねるずのファンだったわけじゃないけど気になって観ていた。評価は悪かったけど自分としては何かを学んだような気がするドラマ。録画は最終回ぐらいしか残っていない。再放送希望! pic.twitter.com/PW5HhK7ohq
とんねるずの2人が「前略おふくろ様」で主演していた萩原健一さんのファンであったことや、「とんねるずのみなさんのおかげです」の中で「ちょっと北の国から」というコントを披露していたことなどが縁で実現したドラマです。
2人は「とんねるずのみなさんのおかげです」を半年休止して撮影に臨んでいます。
石橋さんが東京証券取引所で働く証券マン、木梨さんがそば店の職人の役でした。他に後藤久美子さん、ガッツ石松さん、淡路恵子さんなども出演されていてなかなか濃いキャストでしたね。
その後も倉本さんは数々の作品を執筆し続けています。最近では、「最近のドラマは若者向けで、年寄りが見ていても面白くない。年寄り向けのドラマ枠を作ろう」とテレビ局に働きかけ、テレビ朝日で帯ドラマ枠が誕生。
2017年にはテレビの全盛期に活躍した有名人が集うという設定の老人ホームを舞台にした「やすらぎの郷」というドラマを執筆しました。現在のテレビに対する批判なども含まれていましたね。続編が2019年に放送されたので、また何らかの形で続編が放送されるかもしれませんね。