高度成長期の日本を支えた無名の人々に焦点をあてた『プロジェクトX』ナレーションや中島みゆき「地上の星」が印象深い
2017年10月2日 更新

高度成長期の日本を支えた無名の人々に焦点をあてた『プロジェクトX』ナレーションや中島みゆき「地上の星」が印象深い

NHK総合において2000年3月から放送されたドキュメンタリー番組『プロジェクトX』。田口トモロヲの淡々としたナレーションや中島みゆきによる主題歌『地上の星』が強く印象に残っている。

3,851 view

NHKのドキュメンタリー番組『プロジェクトX』

NHK総合において2000年3月から2005年12月まで放送されたドキュメンタリー番組。正式名称は『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』。

火曜日21時15分からの放送で、特別編4本を含み191回もの回数放送された。
タイトルバック

タイトルバック

20世紀最後の年に始まったドキュメンタリー番組。
終戦直後から高度経済成長期まで日本の発展を支えた産業や文化など、様々な分野において、それらが世に出て、支持を受けるまでに直面した困難を、どのように克服し成功に至ったかを紹介する内容だった。

自動車や家電、重厚長大産業、地図に残る公共事業(ハコモノ、橋梁)などが多く扱われた。無名の日本人主人公と、それに従い支えた多くの人々による挑戦と努力、そしてその成果の紹介がテーマであった。

一方で、無名とは言えない本田宗一郎や毛利衛が登場する回もあった。
NHK放送センター(本部)

NHK放送センター(本部)

「組織と群像の知られざる物語」にスポットを当て、当時不況真っ只中の日本人に向け、自分たちの底力を信じ、鼓舞するような演出が魅力的だった同番組。

公共放送であるNHKが、企業の宣伝につながる表現の排除を崩し、特定の企業の内部にまで迫った取材は当時新鮮であり、後に似たようなドキュメンタリー番組の出現や連続テレビ小説での特定の企業の創業者をモデルとした作品が多く生まれるきっかけになったとも言われている。

『プロジェクトX』の流れ

・冒頭。古い映像などをテーマソングが流れる中、短いカットで写す。キーワードが表示される。

・番組序盤。プロジェクトを成し遂げようとする主人公(複数)の境遇が描かれる。再現ドラマ(俳優はセリフを喋らない)が挿入されることもある。

・番組中盤。プロジェクトはいよいよ佳境に入るが、困難が彼ら・彼女らを襲う。それを克服する過程が描かれる。このあたりでスタジオに放映当時に存命の主人公もしくは主人公の近縁者がゲストとして登場し、司会からインタビューを受けて当時を回想する。
司会を長らく務めたNHKアナウンサー・国井雅比古さん(...

司会を長らく務めたNHKアナウンサー・国井雅比古さん(現在はフリー)

・番組終盤。プロジェクトは成し遂げられる。ドキュメンタリー映像が終わった後でスタジオに画面が戻る。
司会から主人公が労いの言葉をかけられる。プロジェクトの成果物がスタジオに運ばれ、主人公が感慨深げにそれを手に取る。

・エンディング。成功した主人公達のその後の栄光の人生が簡単に描かれた映像と共に、中島みゆきの「ヘッドライト・テールライト」が流れ、スタッフロールで終了。

どんなテーマがあった?

放送2回目の日本ビクターのVHS開発を取り上げた「窓際族が世界規格を作った〜VHS・執念の逆転劇〜」をはじめ、フェアレディZ制作秘話やスクールウォーズのモデルにもなった伏見工業高校ラグビー部の活躍、あさま山荘事件における機動隊のエピソード、コメディ調に描いたウォシュレット開発秘話などがあった。

2000年5月に放送された三原山噴火による緊急事態のなか行われた、伊豆大島の島民脱出プロジェクト『全島一万人 史上最大の脱出作戦』なども印象深い。

スクールウォーズのモデル、伏見工業高校

※動画はリンク切れの場合あり

田口トモロヲの淡々としたナレーション

「リーダーの〇〇は言った」「〇〇達は日の当たらない研究をコツコツと続けていた」「だが、最悪の危機が襲った。・・・バブル崩壊」など、淡々とした口調でのナレーションが話題にもなった同番組。ナレーターを務めたのは、俳優・田口トモロヲであった。

俳優としては、数々のピンク映画やアダルトビデオに出演する一方で、非常に地味な人物もこなす名脇役の田口トモロヲ。同番組でのナレーションでは、落ち着きのある雰囲気が重厚な内容にマッチしていた。

田口トモロヲ本人は ”内容にちゃんと重みがあるので、それを正確に伝えるのが僕の役目。そのためにはシンプルにやるのが一番だと思っています。”とコメントしている(NHK名作選 みのがしなつかしより抜粋)。

また、同番組の人気が最も高かった頃、田口トモロヲが映画の撮影中に、たまたま横を通った同番組のファンから、「あんたねー、こんな下らない仕事なんかしないでナレーションに集中しなさいよ」と延々とお説教を受けたとインタビューで語っている。

日本生命CM 愛する人のために・改札篇 田口トモロヲ

CMでのナレーションもこなしていた。

田口トモロヲ プロフィール

1957年11月30日生まれ。東京都武蔵野市出身。
身長165cm、体重 60kg。

学生中からアングラ演劇、自主映画などに係わっていた。1983年に代々木公園で見たじゃがたらのライブに影響され、パンクバンド「ガガーリン」を結成している。

1989年に放映された実話ドラマ『シャボン玉の消えた日』で、自らも尊敬する植木等役に抜擢され演じたのを皮切りに、同時期に主演した塚本晋也監督の劇場映画『鉄男』が話題を集め世間から注目されていく。

2003年映画監督業へ挑戦し、『アイデン&ティティ』を撮影した。

【受賞歴】
・1996年度:日本映画プロフェッショナル大賞功労賞受賞
・1997年度:毎日映画コンクール男優助演賞受賞
・2009年度:新藤兼人賞・銀賞受賞(監督作「色即ぜねれいしょん」)
田口トモロヲ

田口トモロヲ

主題歌は中島みゆき『地上の星』中高年男性の支持を得て大ヒット

29 件

思い出を語ろう

     
  • 記事コメント
  • Facebookでコメント
  • コメントはまだありません

    コメントを書く
    ※投稿の受け付けから公開までお時間を頂く場合があります。

あなたにおすすめ

関連する記事こんな記事も人気です♪

その時だった!18年振りにプロジェクトXが復活へ!来春スタート!

その時だった!18年振りにプロジェクトXが復活へ!来春スタート!

NHKがこのたび、2000年から2005年にかけて同局で放送されたドキュメンタリー番組「プロジェクトX~挑戦者たち~」が18年ぶりに復活し、「新 プロジェクトX 挑戦者たち」のタイトルで放送されることを発表しました。2024年4月からの放送予定となっています。
隣人速報 | 702 view
人気者勢ぞろい!劇団大人計画に所属の俳優・女優

人気者勢ぞろい!劇団大人計画に所属の俳優・女優

主宰・松尾スズキさんの劇団大人計画。テレビドラマで活躍する俳優さんも多数在籍されています。大人計画のメンバーをまとめてみました。
saiko | 687 view
突然消えた!?癒し系デュオ花*花のヒット曲と活躍そして二人の現在は?

突然消えた!?癒し系デュオ花*花のヒット曲と活躍そして二人の現在は?

1990年代の終わりに現れた癒し系の女性デュオ「花*花」。ジーンとするような曲調と語り掛けるような声に癒された方も多かったのではないかと思います。ヒット曲が続き私もファンになって喜んで聴いていましたが、突然見かけなくなってしまいました。花*花が消えた理由とは何だったのでしょうか?花*花のヒット曲や現在についてもご紹介します。
そうすけ | 557 view
ドラマ復活記念!『セックス・アンド・ザ・シティ』出演者の他の作品が知りたい!

ドラマ復活記念!『セックス・アンド・ザ・シティ』出演者の他の作品が知りたい!

90年代後半から2000年代にかけて一大ムーブメントを巻き起こした海外ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』。そんな彼女たちが再び帰ってきます!それを記念して今回はSATC出演者のその他の作品も知りたいと思い調べてみました。ぜひチェックしてみてください。
mm | 1,081 view
一体どこへ……かつて主役級だったハリウッドスターは今何してる?

一体どこへ……かつて主役級だったハリウッドスターは今何してる?

全盛期にはあんなに映画で主演をはっていたのに、いつの間にか第一線から消えてしまった感のある、あのハリウッドスターは今何をしているのでしょうか。今回は90年代後半から2000年代にかけて活躍していた6人を独断と偏見で選んでみました。彼らの代表作と共に近況にも触れてみたいとおもいます。
mm | 6,194 view

この記事のキーワード

カテゴリ一覧・年代別に探す

あの頃ナウ あなたの「あの頃」を簡単検索!!「生まれた年」「検索したい年齢」を選択するだけ!
リクエスト