ドラゴンボール終了後にジャンプに連載した鳥山明の短編『COWA!』『カジカ』『SAND LAND』を知っているか?
2018年6月17日 更新

ドラゴンボール終了後にジャンプに連載した鳥山明の短編『COWA!』『カジカ』『SAND LAND』を知っているか?

1995年に『週刊少年ジャンプ』での連載を終了した『ドラゴンボール』。その後、当時編集長だった鳥嶋和彦氏に懇願され、ジャンプに戻ってきた鳥山先生が1997年に『COWA!』、さらには、1998年に『カジカ』、2000年に『SAND LAND』という3つの短編を連載していたことを覚えているでしょうか?

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1995年、世の少年たちは「ドラゴンボールロス」に襲われていた!

今やすっかり定着した「~ロス」という言葉。2013年、記録的な大ヒットを飛ばしたNHKの朝ドラ『あまちゃん』の終了時、その世間に流れる喪失感が誰からともなく「あまちゃんロス」と呼ばれるようになって以来、「いいともロス」「SMAPロス」「逃げ恥ロス」、直近では「五輪ロス」など、大規模なメディアコンテンツが終焉を迎えるたびに、「とりあえず語尾に付けとけ」的なノリで、「~ロス」とワードドロッピングされるようになって久しいのは、ご存じの通りです。

さて、今から23年前の少年たちの間では、間違いなく「ドラゴンボールロス」が巻き起こっていました。もちろん、筆者もその「ロス」をリアルタイムで体感したうちの一人。週刊少年ジャンプ第25号を購入し、巻頭カラーのドラゴンボールを読み、最後のページで「もっと強くなるぞー!」と言って飛び立ってしまった悟空を見送った時の喪失感といったら、表現のしようもありません。嗚呼、これでもう、永久に過去のコミックスやビデオを見返すしか、ドラゴンボールを楽しめなくなってしまったのか…そんな気持ちになり、しばらく落ち込んだものです。
ドラゴンボール (巻42) (ジャンプ・コミックス) ...

ドラゴンボール (巻42) (ジャンプ・コミックス) コミックス – 1995/8/1

ドラゴンボールファンに希望を与えた、鳥山明の新連載『COWA!』

そんなガックリ肩を落とした筆者のような全国のドラゴンボールフリークたちの光明となったのが、アニメ終了1ヶ月後に始まった『ドラゴンボールGT』と、そして、1997年の上半期に連載された鳥山明の新作『COWA!』でした。

デカデカと「鳥山明 新連載!!!」と印字された表紙に、お馴染みの鳥山テイストで描かれた真新しいキャラクター…。この『COWA!』の第1話が掲載された『週刊少年ジャンプ』1997年48号の表紙を見た時の胸躍る感覚は、今でも忘れられません。『ドラゴンボール』の連載開始は1984年。物心ついた時には既に人気漫画・アニメとしての地位を確立していた同作と違い、『COWA!』はスタートアップ期から物語を追えるため、その嬉しさは格別でした。また、あの冒険活劇が見られる…しかもそれが始まる瞬間に立ち会える!…と。
週刊少年ジャンプ 1997年(平成9年)48号 表紙・...

週刊少年ジャンプ 1997年(平成9年)48号 表紙・新連載=鳥山明『COWA!』

鳥嶋和彦氏に懇願されて、鳥山先生はジャンプに戻ってきた

また、この表紙にはこんな煽り文句も書かれていました。

「新連載・BØY・封神・BASTARD!!どうだ!!超ゴーカ漫画のカラー4連発っ!!」

当時の『週刊少年ジャンプ』といえば、『ドラゴンボール』『SLAM DUNK』『幽☆遊☆白書』の三大看板を擁し、当時の産経新聞よりも多い発行部数600万部を超えていた黄金期を終えて、著しく発行部数を落としていた不遇の時代。この責任を取る形で編集長の堀江信彦氏が更迭され、後任に選ばれたのはDr.マシリトとピッコロ大魔王のモデルとしてお馴染みの鳥嶋和彦氏が就任。鳥嶋氏は、ジャンプの窮状を救うべく、『Dr.スランプ』と『ドラゴンボール』の編集担当だったよしみで、半ば漫画家を引退していた鳥山先生へ新連載を依頼したのでした。
Dr.マシリト

Dr.マシリト

鳥山明の編集担当だった鳥嶋和彦がモデルとなった「Dr.マシリト」
鳥嶋氏の依頼を断りきれず、しぶしぶ、単行本一冊分のみの短期契約で連載を承諾した鳥山先生によって書かれた『COWA!』は、オバケの少年・パイフーとその仲間たちが、流行病に襲われた人とオバケが暮らす故郷の村を救うため、西に住む魔女へ薬をもらいに行くというストーリー。『ドラゴンボール』よりも『Dr.スランプ』に近いほのぼのテイストの作品になっていました。
COWA!

COWA!

1998年には『カジカ』、2000年には『SAND LAND』が連載

この『COWA!』、短期契約のためたった半年で終わってしまい、また、前述のように絵本チックなほのぼの系作品だったため、ドラゴンボール的なアツいバトル展開を望んでいた筆者のような読者からしたら、少々、物足りないものでした(もちろん、内容的には面白かったのですが)。その点、1998年に連載された『カジカ』と、2000年に連載された『SAND LAND』は、見るからにアドベンチャー色強めな作品だったので期待感を抱かせてくれたものです。

『カジカ』は、キツネを遊び半分で殺してしまったため「千の命を救わなければならない」という呪いをかけられた少年・カジカが、命を救う旅の道中で泥棒の少女・ハヤに出会ったことにより、彼女が盗んだ絶滅寸前の竜の卵を悪党から守りながら、竜の生息地・ロンロン島を目指すハメになるという物語。
カジカ

カジカ

一方の『SAND LAND』は、タイトル通り砂漠を舞台にしたアドベンチャー。「老人をメインに描きたい」という鳥山先生の希望を飲んだため、冒険のパーティー3人中2人がおっさんという絵的にはあまりワクワクしない構図で展開されていました。
サンドランド

サンドランド

2作品とも、どことなくドラクエ的なRPGの風味を感じさせるストーリーで、ひじょうに次の展開が気になる良作だったものの、鳥山先生の中で長編を描く意欲がなかったため、やはり、どちらも半年程度で終了してしまいました。しかし、鳥山先生が、こうした短編をちょこちょこ連載してくれたおかげで、私たち読者は少しずつ「ドラゴンボールロス」の状態から、段階的に「ドラゴンボール離れ」が出来たのかも知れません。
鳥山明

鳥山明

(こじへい)
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