読者からのご相談
母親は先年、肺炎を患った末に他界しましたが、約10年間の介護生活は自分の家庭にも影響をもたらし、夫は早くから別居状態となりました。
母の死後、わずかながら残った遺産の相続手続きが発生しましたが、10年間介護を続けてきた私の立場からは、多めに相続させてもらうことが自然のように捉えておりました。
実際はといえば、相続は法定通りに手続きされたため、私は遠方に住む他の姉妹と同額となったのですが、10年間の介護の労は何らかの形で報われるのかと思っていた私にとっては残念なこととなりました。
同居していたことで私たちは家賃の負担がなかったなど、経済的な利便性がなかったとは言いませんが、介護生活の中で自分の家庭が円満でなかったこと含め、大きな負荷がかかっていたことを思うと、やりきれない感情に苛まれるのも事実です。
もちろん、認知症を患っていた母が自らの意思で遺言状を遺すという局面は想像も出来ませんでしたし、法定通りが正しいのかもしれません。
しかしながら金銭の絡むことですし、母の死後はどうしても他の姉妹との関係が悪くなってしまったのも事実です。
このような残念な流れにならないための工夫が事前に出来たのか、父の場合にまた同じ負うな思いをしたくないと思っています。
權田FP(ファイナンシャル・プランナー)からの回答
10年間の介護生活、それは大変だったことと思います。 私の母も自分の親の介護のため、約7年もの間、富山の実家に戻り、たまに横浜に戻ってくるという生活をしておりました。
さて、ご相談者様の相続に関するご質問についてですが、どんな仲の良い兄弟姉妹でも親の遺産を巡り「相続」が「争続(あらそうぞく)」となってしまうケースが多く見られます。 今回は「介護をしていたのは私なのに、その労は報われないのか?」ということですね。
それでは、質問にお答えさせていただきます。
一般論からすれば、やはり遺言書を作成し、ご相談者様の介護への功績を遺産分割に反映させることができれば良かったなと。(実際はお母さまは認知症を患っており、現実的に無理ですが)
遺言書がない場合の相続で、相続人間で話が纏まらないときは法定相続分に従い遺産分割するのが原則です。しかし、これだと介護への労が報われませんよね。
「財産の維持または増加につながる特別の寄与」
実は、「被相続人の療養看護、その他の方法により被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした相続人」には、『寄与分』というのが認められるんです。 でも、「財産の維持または増加につながる特別の寄与」が必要なので、日常生活の世話程度では認められません。
例えば、本来であれば家政婦を雇ったり、介護保険制度で介護サービスを受けることができる場合で、お母さまの「療養看護」をご相談者様がされたのであれば、この費用分の財産減少が防げたことになり、寄与分が認められる可能性があります。
また、入浴や排泄の介助、下のお世話などを継続的にしている場合も、相当の負担と思われ寄与分が認められる可能性があります。
「兄弟姉妹間での同意が必要」
いずれの場合も、兄弟姉妹間での同意が必要です。同意してもらえない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。
難しいことかもしれませんが、兄弟姉妹間でのコミュニケーションは普段からとり、話し合いができる関係を常に保つことが大切ですね。
權田FPのプロフィール
中学時代はテニス部で毎日部活。高校時代はケガで部活引退後、友人との遊びに明け暮れる。
大学時代はサークル活動に力を入れ、テニスサークルでありながら、メインはバーベキュー・ドライブ。
学業については想像にお任せしますが、大学は4年で卒業(笑)
大学生時代に麻雀にハマり、学校よりも雀荘に居る時間のほうが多くなる。
社会人になってゴルフにハマり、年間50回ペースでラウンド。(就職先がゴルフメーカーだったことが影響。おかげでハンディキャップもシングルに。)
現在はファイナンシャルプランナーとして活動しライフプランや資産運用、保険、相続など幅広い相談を年間100件ほど担当。不動産FPとしても活動しており、住宅購入のサポートを行っている。
中でも、相続・家族信託などの分野を得意としており、最近、自分の親世代の相談が増加傾向にある。