84年の『いいとも』で繰り広げられた、タモリvs小田和正
2017年8月30日 更新

84年の『いいとも』で繰り広げられた、タモリvs小田和正

昔、フォークソング嫌いを公言して憚らなかったタモリ。特にオフコースを名指しで批判していたために、『笑っていいとも!』の「テレフォンショッキング」に、小田和正が来たときは、とんでもなく、険悪なムードになっていました。

16,432 view

音楽について造詣が深いタモリ

ミュージックステーションで、B'zが来ようが、ミスチルが来ようが、海外の大物アーティストが来ようが、一切、ポーカーフェイスを崩さず、ルーティンワークに徹する男・タモリ。しかし、その無関心っぷりは仮の姿。本当はジャズをこよなく愛する、筋金入りの音楽フリークであり、自身もマイルス・デイビスを敬愛してやまないトランペット奏者としての顔を持ち合わせています。
昔のタモリ

昔のタモリ

小沢健二の曲を「生命最大の肯定」と賞賛

ジャズに関してある程度雄弁になるタモリも、J‐popに関して言及することはほとんどと言って良いほどありません。唯一明確に評価した日本人アーティストといえば、小沢健二くらいなものでしょう。

タモリは小沢10枚目のシングル『さよならなんて云えないよ』に出てくる「左へカーブを曲がると光る海が見えてくる 僕は思う! この瞬間は続くと!いつまでも」という歌詞を挙げて、「生命最大の肯定」とまで賞賛しているのです。後にも先にも、タモリがオフィシャルな場でここまで絶賛したのは、オザケンを除いて存在しません。
さよならなんて云えないよ(小沢健二)

さよならなんて云えないよ(小沢健二)

1995年11月8日リリース

大のフォークソング嫌いで有名だった

逆にかつてタモリが毛嫌いしたミュージシャンと言えば、フォークソング系の歌手全般です。「友達なんかいらない」「やる気のある者は去れ」の名言から陰キャラ、ないし暗いものを全肯定する人なのかと思われがちなタモリですが、その思想はそう単純なものでもないらしく、フォークソングを「暗いから嫌い」とバッサリ切り捨てているのです。

そう言ったかと思えば、筑紫哲也との対談で「根が明るいやつは、もうオレは付き合う必要はない」と根明をくさしてみたりと、ちょっとこの人複雑。まぁ、おそらく、オザケンを肯定して、フォークを否定しているあたり、「歌くらいは希望が持てるものを」という思想が、タモリの音楽観を支配しているのでしょう。
プレミアム・ツイン・ベスト 青春のフォークソング・ベス...

プレミアム・ツイン・ベスト 青春のフォークソング・ベストVol.1

タモリ曰く「フォークを聞くやつは女々しい奴だ」とのこと

さだまさし、そして小田和正を名指しで批判

もちろん、音楽の好みが人それぞれである以上、「フォーク」というジャンル全般をタモリが嫌っていたとしても、何ら問題はありません。しかしながら、さだまさし、そして小田和正率いるオフコースを自身のラジオにおいて名指しで批判していたために、良からぬ禍根を生むことになったのです。

普通ならば、タモリが批判的な見解を示した以上、どのテレビ局関係者も小田との共演など考慮にも入れないはず。それどころか、今だったら、タレントクロークですれ違いさえしないよう、入念に互いのスケジュールを練り上げることでしょう。けれども、80年代の遊び心ある『いいとも!』において、そんな不文律がまかり通りことはなく、あえて、タモリと小田の共演という危険すぎるタブーに挑戦したのです。
防人の詩(さだまさし)

防人の詩(さだまさし)

昔、さだまさしを「海が死ぬわけないだろ!」と批判していたタモリ

そして始まった、タモリvs小田和正

決戦の火ぶたが切って落とされたのは、1984年2月13日。かねてより、タモリが自分を悪く言っていることを知っていた小田は、対決姿勢満々で登場。口元にはうっすらと不敵な笑みを浮かべていました。
いいとも共演時の2人

いいとも共演時の2人

対するタモリも一切、ひるむ様子はありません。小田はタモリの2年年下ですが、芸歴は小田のほうが5年先輩。芸能界では年齢関係なく、先に入ったほうが偉いという暗黙のルールなどお構いなしに小田へ真っ向勝負を挑みます。

タモリが「レコードをお出しになった?」と小田の新譜について話を振ると、「きっと気に入らないと思いますけど…」と先制パンチ。それにも臆することなく、タモリがいつものようにフォークがなぜ嫌いかという持論を展開すると、「専門的な話をしてもつまらないから」とまたしても、フックを仕掛けます。これには、タモリもカチンときたのか「バカにしてるんですか」と反論。観客はどこで笑っていいのかわからないといった様子で、困惑気味に乾いた苦笑を響かせており、終始、ピリついたムードがスタジオ全体に漂っていました。

2015年には30年ぶりの和解を果たす

この“戦い”以降、30年以上の長きに渡って、一度も共演することがなかったタモリと小田。しかし、2015年2月8日、歴史的瞬間が訪れます。それは、フジテレビの中村光宏&生野陽子両アナウンサーの結婚披露宴でのこと。たまたま会場に居合わせたタモリと小田が歩み寄って握手を交わし、ついに“和解”を果たしたというのです。『いいとも!』での確執を知る者にとっては何とも感慨深い邂逅。わだかまりもすっかり溶けたのであれば、また、テレビで2人そろってトークをしている姿を見てみたいものです。
(こじへい)
20 件

思い出を語ろう

     
  • 記事コメント
  • Facebookでコメント
  • cx-DTV 💛 2022/3/29 17:38

    鈴木保奈美さんの「東京ラブストーリー」off course「ラブストーリーは当然に」ヴォーカルは
    小田和正の声が目立つ感じに聞こえます

    すべてのコメントを見る (1)

    コメントを書く
    ※投稿の受け付けから公開までお時間を頂く場合があります。

あなたにおすすめ

関連する記事こんな記事も人気です♪

黒柳徹子「徹子の部屋」「ザ・ベストテン」「窓際のトットちゃん」「ユニセフ親善大使」「笑っていいとも!」「世界・ふしぎ発見!」

黒柳徹子「徹子の部屋」「ザ・ベストテン」「窓際のトットちゃん」「ユニセフ親善大使」「笑っていいとも!」「世界・ふしぎ発見!」

衝撃の「徹子の部屋」第1回放送。「ザ・ベストテン」開始。戦後最大のベストセラー「窓際のトットちゃん」発売。ユニセフ親善大使任命。「笑っていいとも!」ジャック事件。「世界・ふしぎ発見!」における草野仁、スタッフとの戦い。
RAOH | 1,122 view
タモリこと森田一義のこと(2) 「笑っていいとも!」開始からタモリロス症候群、略して「タモロス」まで

タモリこと森田一義のこと(2) 「笑っていいとも!」開始からタモリロス症候群、略して「タモロス」まで

タモリは実は無計画、無責任、無反省、無目標、無国籍、無専門、無向上心。過去にも未来にも自分にも他人にも期待せず、ただひたすらその時、その時間を肯定していく。そう「これでいいのだ!」
RAOH | 3,201 view
オフコースの10日連続日本武道館公演から40周年!ライブ音源&映像のBOXセットが発売!!

オフコースの10日連続日本武道館公演から40周年!ライブ音源&映像のBOXセットが発売!!

ユニバーサルミュージックより、音楽グループ・オフコースがライブツアー「1982 OFF COURSE Concert“over”」のツアーファイナルにて行った日本武道館での連続10日間公演の音源&映像BOXセット作品『Off Course 1982・6・30 武道館コンサート40th Anniversary BOX』が発売されます。
隣人速報 | 269 view
オフコース伝説の日、1982年6月30日から40周年! 『オフコース・クラシックス・コンサート』が開催決定!!

オフコース伝説の日、1982年6月30日から40周年! 『オフコース・クラシックス・コンサート』が開催決定!!

ビルボードジャパン、ユニバーサルミュージック、DRCが共催で、『オフコース・クラシックス・コンサート2022・6・30 in Budokan』を開催することが明らかとなりました。東京・日本武道館にて、開催日程は2022年6月30日。
隣人速報 | 342 view
タモリこと森田一義のこと(1) 最強の素人時代 戦後最大の素人芸でブレイク

タモリこと森田一義のこと(1) 最強の素人時代 戦後最大の素人芸でブレイク

タモリは、実は無計画、無責任、無反省、無目標、無国籍、無専門、無向上心。過去にも未来にも自分にも他人にも期待せず、ただひたすらその時、その時間を肯定していく。そう「これでいいのだ!」
RAOH | 3,515 view

この記事のキーワード

カテゴリ一覧・年代別に探す

あの頃ナウ あなたの「あの頃」を簡単検索!!「生まれた年」「検索したい年齢」を選択するだけ!
リクエスト