映画は低予算のうえ、CGなしの特殊メイクがメインでしたが、とても迫力があり面白い作品でした。
≪映画製作エピソード≫
企画立ち上げからクランクインまでたったの2週間しか準備期間が無いという、とんでもない「突貫工事」だったらしい。おかげでクローネンバーグ監督は「脚本を書きながら撮影する」という大変な綱渡りを強いられる羽目になったのである。後に「まったく、スキャナーズのインチキさ加減は信じがたいものだったよ」と語っている通り、現場は凄まじい状況であったらしい。しかしそんな悲惨な状況にも関わらず、全米興行収入ランキング1位の快挙を成し遂げ、クローネンバーグ監督の名を一躍有名にしたのだった。
最終回の解釈
一般には兄の強力スキャンで吸い取られてしまった弟が、逆に兄の体を乗っ取って逆転勝ち。と言う風に見做されているみたいだけども、なんかちょっと違う気がする。
「僕らは勝ったんだ」
そもそも訳からして間違ってるような。最後のセリフ、"We are the ONE"にオラは聞こえたんだけど。
「僕らはひとつになったんだ」
つまり、「僕ら」は主人公ベイルと味方スキャナーのキムではなく、ベイルと兄レボック。立場の違いから殺し合いをした二人だったが、元々は二人ともインチキな薬品会社の被害者。
吸い取る前に、兄は弟に言っていた。
「お前を救うのは会社じゃない。俺だ」
「俺たち二人で理想の世界を作るんだ」
全く異質の畸形と畸形が融合を遂げた時、そこから全ての畸形を呑み込んだ新しい世界が生まれる。
『ザ・フライ』でも変異ハエ人間と出来損ないの転送ポッドを融合させてしまったクローネンバーグ。
この人がいつも最後に見せるのは無情な絶望でも無責任なハッピーエンドでもない。そこから始まる「新しい世界」。
レボックの眉間の傷が消えていたのは、もうこの力に苦しめられることがなくなったと言う意味だろうか。
映画でもっとも有名な頭部破壊
本作の1番の見所は、何と言っても超能力発動シーンである。マイケル・アイアンサイド扮する凄腕スキャナー・レボックは、念じるだけで人の頭を粉々に吹き飛ばす事が出来るのだ! この有名なシーンは本物そっくりに作った頭部を背後からショットガンで撃ち抜いて撮影したのである。CGを一切使わないアナログ撮影ながら今見ても凄い迫力だ。まさにリアル北斗の拳である。この場面の後、映画を観続ける事が出来なくなる観客もいたという事だ。