2017年7月10日 更新
美しすぎる日本車、いすゞ117クーペ
皆さんは美しいクルマ、というと何を思い浮かべるでしょうか? 筆者の場合、今も旧車マニアの間で根強い人気を誇るいすゞの117クーペがその筆頭です。いすゞの華麗な1ページを紹介しましょう。
イタリアのカロッツェリアがデザイン
若い読者の中には、いすゞ自動車が乗用車を製造していたことを知らない人もいることでしょう。1950年代のいすゞは、トヨタ、日産と並ぶ日本三大自動車メーカーとして君臨していました。
戦後、イギリスのヒルマン・ミンクスのノックダウン生産から乗用車生産をはじめたいすゞは、1962年発売のベレルで自社設計の乗用車を販売しはじめました。その後、フルモデルチェンジをすることになり、1967年にフローリアンを発売しました。
いすゞでは、このフローリアンの開発にあたり、デザインをイタリアのはカロッツェリア・ギアに委託していました。その企画にはセダンだけでなくクーペも含まれていて、両者のコードネームは117と付けられていました。
このプロトタイプは1966年3月のジュネーヴ・モーターショーで「ギア/いすゞ117スポルト」の名で発表され、同ショーのコンクール・デレガンスを獲得しました。同1966年10月の第13回東京モーターショーでは、フローリアンのプロトタイプである「117サルーン」が参考出品されました。
それにしても美しい。今見ても惚れ惚れするフォルムです。
クラウンの2倍の価格の超高級車
カロッツェリア・ギアのチーフデザイナーだった、ジョルジェット・ジウジアーロによる繊細なデザインは、非常に美しいものでしたが、量産をするには高度な技術が必要とされました。それでも、そのデザインに魅了されたいすゞの幹部たちは、何とか販売できないかと思案しました。
デザインしたジウジアーロは、ギアから独立してイタルデザインを立ち上げ、いすゞは量産指導を依頼しました。量産車として通用するように、各部の調整がデザイナー自らの手で加えられました。いすゞは、高額な機械への投資が難しいこともあり、このクーペの工程の一部を手作業とすることで、製品化にこぎ着けました。
内装では、発泡レザートリムや台湾楠のウッドパネルを用い、リアガラスのデフォッガに、あえて送風式を用いて熱線プリントをしないなど、こだわりを見せました。
こうして1968年12月、「117クーペ」の名で発売されました。手作業を用いたため、月産30~50台の少量限定生産とされたことから、カーマニアの間では「ハンドメイドモデル」などと呼ばれています。販売価格は172万円。数字だけ見るとアクアと同じですが、当時はクラウンの上級モデル「オーナーデラックス」が88万円で買えた時代ですから、いかに高価だったかが分かるでしょう。
10年間で廃車が0台という記録
117クーペは、メカニズム面も高級クーペにふさわしいものでした。エンジンはいすゞ初の量産DOHCで、1600ccのG161W型エンジンを搭載。エンジン開発にデザイナーが加わったため、性能の高さだけでなく、見た目にも美しいエンジンに仕上がりました。また、ディーゼルエンジンに強いいすゞらしく、1950ccのC190型ディーゼルエンジンを搭載した車も30台ほど製造されました。
1970年11月には、日本初の電子制御燃料噴射装置が搭載されました。併せて、1800ccのツインキャブレターSOHCエンジン搭載車も追加されました。
見た目にも美しい、ハンドメイドモデルのエンジンルーム
1972年までの3年間の総生産台数はわずか2458台でしたが、発売開始から10年間に1台も廃車が出なかった、という業界記録を持っています。いかにオーナーが大事に乗っていたかが伺えます。
量産モデルの登場で生産を本格化
いすゞは1971年にアメリカのゼネラルモータース(GM)と提携し、資本増加により新たなプレス機を導入。117クーペの量産化が可能になり、1973年3月に発売されました。
エンジンは1800ccのガソリンエンジンに統一されましたが、電子制御DOHC車、SUツインキャブレターDOHC車、ツインキャブレターSOHC車、シングルキャブレターSOHC車の4種類がありました。また、バンパーや燈火類の形状、特にリアコンビランプの形状に変更が加えられました。
後継車もジウジアーロのデザイン
1977年12月にマイナーチェンジが行われました。最大の変更点はヘッドライトで、丸型から四角4灯(規格型)に変更され、表情が大きく変わりました。また、プラスチック成型品の増加などにより、コストダウンも図られました。
1975年に、排気ガス規制対策で出力がダウンしていたため、1978年にはエンジンを2000ccに変更。1979年には2200ccディーゼルエンジン搭載車がカタログモデルとして追加されました。
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