日陰に咲く徒花
それは現代のように腐女子などと呼ばれてテレビや雑誌で明るく取り上げられることもなく、こっそり買ってきて、同じ嗜好の数少ない貴重な友人達と回し読みするものでした。
June(ジュネ) サン出版
毎号掲載される美しい少年たちの写真に、少女達は胸をときめかせました。
2012年12月発売の最終号の表紙には「緊縛愛を貫いて15年」と書かれており、創刊当初の世界観とは全く変わってしまったことがわかります。
この最終号をもって、Juneはその歴史に幕を閉じました。
ALLAN(アラン) みのり書房
「少女のための耽美マガジン」がキャッチフレーズでした。
丸尾末広、花輪和一などJuneと共通するマンガ家の作品も多く掲載されていましたが、その後はマンガはまつざきあけみの「ぼくらは青年探偵団」一本のみになってしまいました。
中期以降のアランは、人気時代劇などを取り上げた巻頭特集と「ぼくらは青年探偵団」以外は全て読者からの投稿でページが占められていたのが大きな特徴でした。
そしてその投稿内容のほとんどはミュージシャンや俳優、野球選手などありとあらゆる有名人をホモに設定した妄想小説で、モデルにされた有名人からクレームがついたことも何度かありました。
和製デヴィッド・シルヴィアン 本田恭章
ミュージシャンに転向してからは本人の志向と世間のニーズがなかなか合致せず、ヒット曲に恵まれることはありませんでした。
ぼくらは青年探偵団
美麗な絵で知られる作者ですが、この作品は耽美、猟奇、ダジャレ、ナンセンスがつめ込まれたカオスな作品でした。
作中には不二家のペコちゃん、赤ん坊少女たまみちゃん、モスラ、北の湖他ありとあらゆるキャラクターが登場しました。
「月光」
その後は東京デカド社より、「月光」「LUNA」など何度か誌名を変えながら発行され続けました。
密やかに語り継がれる雑誌として
しかし普通の少女文化に適合したくなかったかつての少女達の胸の中に、今も存在し続けているのです。
インターネットの海で、密やかに語り継がれながら。
少年愛をテーマに、映画、音楽、マンガ、小説等カルチャー全般を扱った雑誌として、それまでの甘い初恋物語一辺倒の少女漫画に違和感を感じていた少女達に受け入れられたのです。
萩尾望都、坂田靖子他そうそうたる少女マンガ家達や、今ではカルト的な人気の丸尾末広、花輪和一ら、豪華な顔ぶれが揃っていました。
「風と木の詩」でカリスマ的人気を誇っていたマンガ家竹宮恵子は毎号の表紙を担当。更に連載「竹宮恵子の漫画教室」では西炯子などのマンガ家が巣立って行きました。
また「グイン・サーガシリーズ」で知られる作家の栗本薫(中島梓)は「小説道場」を連載し、数々の小説家を育てました。