MSF日本は、1992年11月15日に設立。「日本に人道主義を根付かせる」「日本からMSFの医療関係者を送り出す」の2つの大きな目標をめざして立ち上がった。当時のオフィスは狭く、会議机はダンボールの上に板を置いた粗末な物からのスタートであったが、フランスからやって来た初代事務局長や社会的意義に賛同した日本の有志らが集まり、「絶対日本で成し遂げる」という強い意志によって少しずつ成長を遂げていった。
当初の目標であった日本からの医療関係者の派遣は、1993年に初めて女性産婦人科医をスリランカに派遣することで達成。以降、採用活動の強化によって現在では年間の派遣者数は107人に増え、派遣回数はのべ156回に上る。MSFは、グローバル規模で活動資金の9割以上を民間からの寄付によって調達することで、活動の独立性・中立性、公平性を維持してきた。日本においても、個人を中心とした支援者より、年間約80億円の寄付が寄せられ、世界の人道危機での活動に活かされている。(派遣者数と寄付額は2016年実績)
この25年の間、紛争や感染症の流行などの人道危機が世界各地で続き、援助活動は今なお必要とされている。MSF日本も、こうした人道危機の現場にスタッフを送り、1人でも多くの命を救うことに尽くしてきた。日本でも阪神淡路大震災や東日本大震災、熊本地震など、未曽有の大災害の現場で一定の役割を果たしてきた。
MSF日本会長の加藤寛幸医師は、「25年間に頂いた多くのご支援に感謝を申し上げます。私たちは、これからも援助活動の質向上を図るとともに、独立・中立・公平という理念に基づく医療活動を実践し、活動地で目撃した人道危機を証言してまいります。必要な医療を受けることができない患者さん、そして苦悩の中の人びとに手を差し伸べたいという支援者の皆さまの思いを大切にしながら、活動を続けてまいります。いつか私たちの存在が必要でなくなる世界に思いを馳せながら」と、決意を新たにした。
国境なき医師団(略称MSF)は、紛争や自然災害、貧困などによって命の危機に瀕している人びとに医療を提供する、非営利で民間の医療・人道援助団体。「独立・中立・公平」を原則とし、人種や政治、宗教にかかわらず援助を提供、医師や看護師をはじめとする海外派遣スタッフと現地スタッフの合計約3万9000人が、世界約70の国と地域で援助活動を行う。1971年にフランスで医師とジャーナリストによって設立され、世界28ヵ国に事務局をもつ国際的な組織。1999年にはノーベル平和賞を受賞。MSF日本は1992年に設立され、2016年には107人のスタッフを、のべ156回、34の国と地域に派遣した。MSFの活動資金の95%以上は個人を中心とする民間からの寄付金によって支えられている。