【現代の日本の礎を築いた人たち】集団就職とは【高度経済成長を支えた金の卵たち】
2017年12月27日 更新

【現代の日本の礎を築いた人たち】集団就職とは【高度経済成長を支えた金の卵たち】

ミドルエッジ世代の人、というよりはその親御さんの世代に当たると思いますが、「集団就職」という言葉を皆さんご存知ではないでしょうか。現代の日本の繁栄の礎を築いた人たちにスポットライトを当てた本がありましたので、ご紹介します。

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過酷な労働と九州差別。

茶碗も重なると重い!。

茶碗も重なると重い!。

中学校を卒業してすぐということは15歳。しかし窯の中でやる仕事は過酷を極め、働きながら勉学をしようと思っていた古庄少年の夢は、疲労困憊でそれどころではなくなります。
また、九州弁もバカにされ、1人の九州出身の人が多治見で事件を起こしただけで、「九州人は乱暴だから結婚するな。」と言われてしまいます。
あまりの仕打ちに、半年後に古庄さんは会社を辞め、一旦郷里に帰ります。

「今ある仕事に全力投球すると道は開ける。」という強い信念。

半年後、古庄さんは再び中京地区に職を求めます。
しかし、過酷な労働は変わりません。また、転職しようにも、募集要件には「高卒以上」という制限が立ちはだかり、思うような仕事へのスタートラインにさえ立てませんでした。
絶望の限りを尽くした古庄さんは、やがて立ち上がります。
「頑張っていれば、きっと誰かが見ている。」と信じ、負けん気が生まれ、彼の人生が変わり始めます。というより、変え始めます。
絶望のどん底まで落ちた人間にしか見えない、一筋の光明。

絶望のどん底まで落ちた人間にしか見えない、一筋の光明。

営業マンへ転身。

ひそかに文章の修行もし、「勤労青少年作文」に作文を投稿し、昭和45年に岐阜県主催の「勤労青少年作文募集」で一等となり、以後、積極的に自分の思いを文章に託していきます。
いろいろな賞を獲得したものの、本業の仕事は高度経済成長期の終焉とともに、会社が倒産、彼は畑違いの営業マンになります。
これが彼の水に合って、いろいろなことが動き始めます。
33歳で結婚式場「高砂殿」の支配人となります。彼に、人生の目標が出来たのです。その目標は、「自分は人の世話がしたいのだ。」という目標。
それが、おそらく今の「議員」という非常に責任ある仕事を選挙で選んでもらっているという人生につながっているのだと思います。

64歳で初出馬。

自分の訴えを届けるための選挙。

自分の訴えを届けるための選挙。

何の組織票もない古庄さんは、それでも意志を貫き、出馬を決めます。
結果は下から3番目での当選。
その下地は、若い頃から文章というかたちで、自分の考えを鍛え、発表し続けることで、地元の人に考えを知ってもらい、おそらくその方々からいろいろな助言を受けるうちに、自分の目標を定めることができたのでしょう。

古庄さんの信念。

古庄さんは著者からのインタビューに、こう答えています。
「どんな時でも手を抜かない、一生懸命やる、ぼさっとした日を持たずに時間を惜しまないことですね。」
「常に今が出発」という言葉が原点であると言っています。

まとめとして。

「集団就職」は、正直、今の「ブラック企業」のようなところが非常に多かったように、この本を読むと思います。
都会の人は進学して学歴が高く給料も高いから、地方都市の、食い扶持を減らすために家から半分追い出されざるを得なかった人間の弱みに付け込み、安い賃金で過酷に働かせる、という企業も、すべてではありませんが、少なからずあったのではないかと、推測されます。
(すべてではない、という点は強調しておきます。従業員の幸せを第一に考えている企業の多さもこの本では紹介されています。)
挫折が人生の光明を生むことも。

挫折が人生の光明を生むことも。

今回、ご紹介した古庄さんの人生で最も大きな出来事は2つあると思います。
小学校の時に、家が大災害で流され、無一文になったこと。
そして、よりによって初任給を強盗にすべて奪われたこと。

その他にもいろいろあったとは思いますが、この究極の絶望を15歳までに2度も味わったこと。
そしてそれに耐えたこと。
それが、古庄さんが議員として当選するまでになった原動力になったのだと思います。
仮に家が流されなければ、望み通りの、もしかしから裕福な人生になっていたかもしれません。
しかし、金銭的に裕福な人生と、精神的に裕福な人生とは違います。
精神的な本当の幸福とは、「真の絶望」を味わった人にしかわからないものなのかもしれません。
そういう人生は、マニュアルには一切ない。
仮に1万2000円の初任給のうち1000円だけ取られたとしたら、絶望の度合いも違ったでしょう。
すべて失ったことにより、きれいごとですが、違うものを古庄さんは得たのかもしれません。
水は地球上で常に姿を変えます。

水は地球上で常に姿を変えます。

勝手な例えですが、古庄さんが失ったものは、池にたまったり川に流れる水のようなものなのかもしれません。
災害や犯罪により、その水はすべて蒸発してしまいました。
しかし、水は消滅したのではなく、水蒸気になっています。
その水は、循環し、いつか雨となって戻ってきます。
その「恵みの雨」を、うまくつかむことができた、できるように不屈の精神で努力したのが、古庄さんなのではないでしょうか。

ビジネスの教訓として。

43 件

思い出を語ろう

     
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  • 澤宮優 2018/1/3 12:41

    新年おめでとうございます。いつも拙著ご紹介いただきありがとうございます。古庄さんに注目いただき感謝しております。せっかくだからとご本人に記事をプリントアウトしてお送りしましたら、ご本人とても喜ばれていらっしゃいました。こうした読者の方の評は率直でとてもうれしいものです。本年もどうぞ世にあるよい書籍をご紹介くださいませ。

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