異質なSF映画「未来世紀ブラジル」 ディストピア映画の傑作とされ、シニカルな笑いも秀逸です!
2017年1月30日 更新

異質なSF映画「未来世紀ブラジル」 ディストピア映画の傑作とされ、シニカルな笑いも秀逸です!

1985年公開「未来世紀ブラジル」。イギリスのコメディ集団モンティ・パイソンのテリー・ギリアム監督が仕掛けたブラックユーモアに溢れたSF映画の名作です。

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SF最高傑作の一つ 「未来世紀ブラジル」

『バンデッドQ』から始まり、『バロン』で終わる、‘ぶざまなほど統制された人間社会の狂気と、手段を選ばずそこから逃げ出したいという欲求’というテーマを持った、モンティ・パイソンのテリー・ギリアムによる3部作の2作目にあたる、根強い支持を獲るSF映画の傑作。
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日本公開時のチラシ
製作はアーノン・ミルチャン。共同製作はパトリック・カサヴェッティ。監督は「バンデットQ」のテリー・ギリアム。

脚本はテリー・ギリアム、トム・ストッパード、チャールズ・マッケオンの共同。撮影はロジャー・プラット、音楽はマイケル・ケイメン、特殊効果はジョージ・ギブスが担当。

出演はジョナサン・プライス、キム・グライストほか。

情報化社会を風刺した内容

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ハエ一匹入れないような完全無欠の管理社会。
ですが、ハエ一匹でシステムに亀裂が走ります。
そこら中にダクトが張り巡らされ、徹底した国の管理下に置かれる20世紀の仮想国ブラジル。

情報省の役人が叩き落した一匹のハエによるコンピューターの誤動作によって、クリスマスの夜に起こった爆発テロの容疑者‘タトル’(ロバート・デニーロ)の名前が、‘バトル’と打ち間違えられ、善良な一般市民であるバトル氏は、上階に住むトラック運転手ジル(キム・グライスト)による抗議もむなしく、濡れ衣の容疑で連行される。

この問題をなんとかすべく、情報省に勤めるサム(ジョナサン・プライス)解決にあたるのだが、上階の住人ジルが、サムの出てきた夢の美女であることに気づく。
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夢の中でサム(ジョナサン・プライス、右)は、ジル(キム・グライスト、左)によく似た美女をサムライ(鎧兜)から救う。
それは情報省へ抗議に来ていたジルだった。

そんな折、サムの家のダクトが故障する。修理はセントラルサービスが行う法律だったが、勤務時間外なので来てくれない。
そこへフリー(非合法)の修理屋を名乗る男が現れ、あっという間に直してしまう。その男こそ、当局からテロリストとして追われているタトルだった。
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ダクトの修理屋・タトル(ロバート・デ・ニーロ、右)
サムはバトル家に検束費用の超過分払いもどし小切手を届けに行き、ジルを見つけた。

アパートにもどると、セントラル・サーヴィスの係員が勝手に入り込み、タトルにやらせたなと怒る。
その夜、彼はまたヒーローになってサムライ・モンスターと戦う夢をみた。
ジルのことを知るために、情報省検束局への昇進を承知した。そこでは旧友のジャック(マイケル・ペリン)が容疑者を拷問し、白衣を血だらけにしていた。
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キャラクターの造形や設定が、物語の不可思議さにより深みを与えています。

ブラックユーモアを基調としたコメディ集団「モンティ・パイソン」の一員であるテリー・ギリアム監督ならではと言えます。
混沌とした世界を、面白いまでに操ってくれます!
ジャックはバトルの誤認逮捕を隠蔽するためにジルを拘留しなくてはという。
サムは僕にまかせてくれといい、受け付けにまた抗議に来ていたジルを連れ出す。彼女は彼を信用しない。
デパートでの爆弾テロ騒ぎにまきこまれてしまい、ジルと別れ別れに。

アパートは部屋全体が巨大な冷凍庫と化し、セントラル・サーヴィスの係員がいじくっており、サムは強制退去されたという。

タトルがそっと現われメカをいじくり、中の係員に汚穢をひっかける。
ジルと再会して楽しい一時を過す。

翌朝、彼はつかまった。拷問室でジャックによる拷問が始まろうとした。そこへタトルが仲間と現われ、銃撃戦の末に救出。逃避行の末ジルの運転するトラックで二人はのどかな田園へ……

が、一転拷問室に戻る。
逃避行は拷問に耐えかねたサムの空想だったのだ。
廃人となったサムをみつめるヘルプマンとジャック。

二人が去った後拷問室にはサムが口ずさむ「ブラジル」のメロディが響き渡るのだった。
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サムの哀れな最期で物語は終わります。
しかし、本当に哀れなのはサムの方でしょうか?
情報を管理する人間が、いつの間にか情報に管理されてしまう世界。

私達にとって、未来世紀の話ではないかも知れませんね。

ブラックユーモアに溢れた予告

Brazil(1985) Trailer - YouTube

※予告(全編英語です。)

ディストピア映画としての秀作

ディストピア映画とは?

ディストピアとは、ユートピア(理想郷)の反対語で暗黒郷とも呼ばれる。ディストピア映画は、全体主義的・管理主義的な近未来の世界、終末戦争後などの人類が生きるのが困難な世界を舞台にしたSF映画であることが多い。
「AKIRA」のようなサイバーパンクやスチームパンク等、1980年以降に定着した映画ジャンルもディストピア映画の一つです。
同じ世界に、支配する者と支配される者がいるのも特徴ですね。

作品としては「時計じかけのオレンジ」や「ターミネーター」、「マッドマックス」等が挙げられます。

本作「未来世紀ブラジル」も同様ですね。
公開から30年以上経った今も代表作の一つとして挙げられます。

その大きな理由として、物語の疾走感や不条理さがあるように思います。
単に「重厚な作風」や「アクションが面白い」のではなく、順を追った正統な物語作りから逸脱している点が魅力です。

夢と現実を織り交ぜ、ある種感覚的な鑑賞を求める本作の「リズム感」が、全体として心地よく、最後まで持続しています。イマジナリー(空想的)な世界が見事に演出されています。
管理社会を風刺する為に、ブラックユーモアを織り交ぜた「軽さ」もまた秀逸でした。

それらが人気の理由の一つではないでしょうか。
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