高速バスに追いやられた急行「こまがね」【鉄道ジャーナル1985年5月号より】
2018年2月1日 更新

高速バスに追いやられた急行「こまがね」【鉄道ジャーナル1985年5月号より】

今や高速バスで「速くて安い」旅が楽しめる区間が多くなりましたが、かつてはそのような区間の多くに国鉄の「急行」電車が走っていました。そんな時代の入れ替わりの時期に発行された「鉄道ジャーナル1985年5月号」から、飯田線の急行「こまがね」と高速バスをご紹介します。

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今回は、こちらの書籍を参考にさせていただきました。

鉄道ジャーナル 1985年5月号 表紙。 (1971259)

via 鉄道ジャーナル 1985年5月号 表紙。
この号では、表紙に東北・上越新幹線200系と、おそらく「新幹線リレー号」と思われる185系電車が同時に映っています。
おそらく、新幹線は大宮ー上野間の開業前の試運転列車であると思われます。新幹線とリレー号が同時に映りこむという貴重なショットですね。

急行「こまがね」号。

長野県南部を走っていた急行列車(イメージ)。

長野県南部を走っていた急行列車(イメージ)。

現在は完全に高速バスの独占区間となっている、東京・新宿と長野県南部の都市・飯田、駒ケ根とは、かつて飯田線と中央本線を経由した急行「こまがね」号という列車が結んでいました。
そのレポートからご紹介します。

急行「こまがね」号とは。

Nゲージとして今も人気の急行「こまがね」号。

Nゲージとして今も人気の急行「こまがね」号。

飯田線から新宿に向かう準急列車が1963年に「急行」に格上げされ、1968年10月、さらに再編成され、かの有名な「ヨン・サン・トオ」改正で、急行「こまがね」は誕生しました。
しかし20年もたたない1986年11月には、急行「こまがね」は廃止されてしまいます。
この20年たらずの期間に、いかに急速にモータリゼーションが進んだかがわかります。

この号は1985年5月号ですので、その翌年に廃止ということですから、本当にラストランに近い時期の記事ですね。

飯田ー新宿間5時間半の長旅。

記事によると、レポートされた急行「こまがね2号」は、飯田を朝6:02に出発し、新宿を11:43に到着するという、実に5時間半を超す長旅の列車だったようです。

1984年12月に登場した高速バスの影響をもろに受ける。

現在は飯田駅から1時間ごと、ラッシュ時は30分ごとに出る新宿行き高速バス。
長野県南部のこの都市と東京とを結ぶこの高速バスは、現在4時間15分、4,200円で結んでいます。
対して急行こまがねは、消費税のない当時でも5,400円、時間も1時間以上余分にかかるとなると、昼間でも1時間ごと、ラッシュ時は30分ごとに発車するこの高速バスには、急行「こまがね」が勝てるわけがありません。

今やバスの現在情報がネットですぐわかるようです。

現在位置をネットで見られます。

現在位置をネットで見られます。

ガラガラの車内、単線で時速30キロで走行。

レポートによると、高速バスが登場した途端にあまりにも乗客が激減したため、編成を減らし3両にしたようですが、それでも乗客の数は、1台のバスの半分程度だったようです。
車掌さん自身が、「あまりにも(人が)乗らないのでびっくりしている」と述べていたそうです。
そこをカーブの多い単線でノロノロ走る急行「こまがね」。そのスピードは30キロ。
中央線との接続駅辰野駅では、松本から来る急行「アルプス」号と連結するため16分も停車。
中央本線に入るとスピードアップしたそうですが、それでも、この速達性、運賃の高さでは、高速バスには勝てないでしょう・・・。

対する高速バスのほうは。

6社が共同で運行する飯田発の高速バスたち。

6社が共同で運行する飯田発の高速バスたち。

via 鉄道ジャーナル 1985年5月号 13ページより引用。
6時に飯田を出る高速バスは、平日のラッシュ時ということもあり、予約で満席とのことです。
当時の最新鋭の「ハイデッカー」バスからの眺めもよく、快適なバス旅だったというレポートでした。
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  • 清らかな心でけふも行け 2019/8/30 23:26

    飯田線がローカル私鉄出自の低規格路線で、これに高速道路が並行してしまってはどうしようもなく
    さらにJR東海の路線となってしまったことで、JR東海にしてみれば大半がJR東日本の収入になってしまう飯田線の対東京輸送を強化するインセンティブがなくということでしょう。飯田-豊橋間にはJRになってから特急が運行されるようになりました(ただし豊橋経由で東京は遠回りすぎで専ら名古屋方面との連絡が使命ですが)

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