1987年、夏の終わりに公開された映画『ハワイアン・ドリーム』は、バブル時代に全編ハワイロケを敢行した作品だ。脚本・監督は、アウトロー映画の名手である川島透。1984年公開の『チ・ン・ピ・ラ』の続編的な位置付けにある当作品は、今なお多くのファンに語り継がれている。
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あらすじ
ひょんなことから日本を飛び出した2人のチンピラ・川添達彦と山際翔史。2人がハワイに住み始めてから3年が過ぎた。現地の日系人になりすまし、観光客に偽のクスリを売ったりとやりたい放題。行きつけのバーのママ・レイコや日系二世の老人3人組・大原、島村、ロレンス、ダンサーを目指す日系人の美女・カレンとも仲良くなり、自由奔放な毎日を送っていた。
そんなある日、地元の名士・モランがマフィアと関係していることを知った達彦と翔史は、ピアス警部の依頼を受け、モランを逮捕するための“作戦”を実行する
キャスト
時任三郎 - 川添達彦
ジョニー大倉 - 山際翔史
タムリン・トミタ - カレン・サイトウ
桃井かおり - レイコ・ケイン
G・W・ベイリー - ピアス警部
ジョニー大倉 - 山際翔史
タムリン・トミタ - カレン・サイトウ
桃井かおり - レイコ・ケイン
G・W・ベイリー - ピアス警部
ストーリー
ハワイアンドリーム CM 1987年
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抜けるような青空と海にマッチする『夢の続き』
オープニングで映し出されるのは、アメ車のオープンカーに乗り込んでワイキキの街中を転がす主人公の二人組。ビーチ、パームツリー、カラカウア通り……そんな眩しい街並みに重なるテーマソング『夢の続き』は、爽快感に溢れて、南の風を感じさせて、そして、僕たちを80年代にトリップさせてくれる。因みに、僕がハワイに行く時に必ず持参しているのが、この楽曲が入ったアルバム。ホノルル空港でオープンカーを借りて、まず一発目に『夢の続き』を聴くのは通過儀礼ともなっている。
Baby, baby, don’t look so sad
There’s gonna be a better tomorrow
重い扉の向こうは
いつでも青空さ
Baby, baby, close your eyes
Go back into your endless dream
果てしない夢の続き
見させてあげるから
Baby, baby, don’t look so sad
There’s gonna be a better tomorrow
重い扉の向こうは
いつでも青空さ
Baby, baby, close your eyes
Go back into your endless dream
果てしない夢の続き
見させてあげるから
ハワイアン・ドリームという名のカクテル
心に深く残っている名シーンがいくつかある。主人公の一人である達彦(時任三郎)が恋人のカレン(タムリン・トミタ)と喧嘩をした後にヤケ酒を飲むシーンなのだが、様々な国の酒を混ぜ合わせてながら、ジャパニーズ、コリアン、チャイニーズと次々と国名を呟いていくのだ。すると、隣にいた客が「何という名のカクテルなんだ?」と尋ねる。そこで、達彦は「ハワイアン・ドリーム」と応えるのだ。関心を持った客は「どんな味がするんだ?」と続けて聞いてくる。そして、達彦はこう応える。「甘く、ほろ苦い」とーー。
ハワイには、多くの移民たちが住んでいる。彼らは、夢を見て、様々な国から移民してきた。夢に破れてしまった者もいれば、夢を諦めずにもがき続けている者もいる。そんな彼らをカクテルに喩えて描写するシーンは、まさに、ほろ苦く、切ない。
ハワイには、多くの移民たちが住んでいる。彼らは、夢を見て、様々な国から移民してきた。夢に破れてしまった者もいれば、夢を諦めずにもがき続けている者もいる。そんな彼らをカクテルに喩えて描写するシーンは、まさに、ほろ苦く、切ない。
フザけながらも、真剣に人生を楽しむ
輝くワイキキの海をバックに達彦(時任三郎)と翔史(ジョニー大倉)がランチをするシーンも名シーンのひとつだ。仏頂面をしている達彦に翔史が言葉をぶつける。「いったい何が不満なんだよ。ここは、天国じゃないか!?」その言葉をうけて達彦はこう言い放つのだ。「天国に住めるのは、神様だけだろう!? 俺は人間なんだよ」
一瞬、二人はマジな顔になるが、それも束の間、いつも通りのフザけた調子に戻る。この洒落たやりとりを見ていると、フザけながらも真剣に人生を楽しむ大切さを感じてしまう。決して一人でもできないし、男女でも成立しないやりとり。阿吽の呼吸とも言える、気心の知れた男仲間だけに通じる言葉遊びのようなユーモア。しかしながら、笑い飛ばす表情や、台詞の行間に見え隠れする寂しげな想いもあり、それがジーンと伝わってくる。
世界には、「天国だ」と形容される場所は多くある。ハワイもそのひとつだ。だが、実際には、自分自身にとって心地よく感じるのは、どこででも、どんなパートナーとどれだけリラックスできる時間を過ごそうという心構えにかかっている。男同士の腐れ縁(弱音も見せ合える仲)という設定だからこそ、味わい深いシーンに昇華している気がするのだ。
一瞬、二人はマジな顔になるが、それも束の間、いつも通りのフザけた調子に戻る。この洒落たやりとりを見ていると、フザけながらも真剣に人生を楽しむ大切さを感じてしまう。決して一人でもできないし、男女でも成立しないやりとり。阿吽の呼吸とも言える、気心の知れた男仲間だけに通じる言葉遊びのようなユーモア。しかしながら、笑い飛ばす表情や、台詞の行間に見え隠れする寂しげな想いもあり、それがジーンと伝わってくる。
世界には、「天国だ」と形容される場所は多くある。ハワイもそのひとつだ。だが、実際には、自分自身にとって心地よく感じるのは、どこででも、どんなパートナーとどれだけリラックスできる時間を過ごそうという心構えにかかっている。男同士の腐れ縁(弱音も見せ合える仲)という設定だからこそ、味わい深いシーンに昇華している気がするのだ。
ダブル・ミーニングを知ると切なくなる
翔史(ジョニー大倉)とつきあっているのが、ホノルル現地でラジオのDJをしているレイコ(桃井かおり)。シングルマザーの彼女は、将来、翔史と暮らしていくことを考えていた。しかし、結局、翔史はある事件に巻き込まれてレイコの元を去ることになる。
そんな彼女の心情を吐露したのがDJをしている際に「アロハー、ハワイはいつでもあなたを待っています」という言葉。これには、観光地としてのハワイへいつでもようこそという意味に加えて、自分の元を立ち去ってしまった翔史への想いがダブル・ミーミングで表現されているのだ。とても、切なさを感じてしまうシーンなのである。
そんな彼女の心情を吐露したのがDJをしている際に「アロハー、ハワイはいつでもあなたを待っています」という言葉。これには、観光地としてのハワイへいつでもようこそという意味に加えて、自分の元を立ち去ってしまった翔史への想いがダブル・ミーミングで表現されているのだ。とても、切なさを感じてしまうシーンなのである。
DVD化が望まれる幻の名作
残念ながら、『ハワイアン・ドリーム』はDVD化がされていない。現在、流通しているのはビデオだけのようだ。当然のごとく、DVD化やオンライン化を望む声は多く、かくいう僕もその中の一人だ。加えて、ジョニー大倉の死去により、かつて川島監督が語っていた「ハワイを脱出した二人の続編」もどうなるのだろうと気が気ではない。もしかしたら、この作品もまた青春のように一度きりになってしまうかもしれない。だが、現在でも、そして、いつまでも輝きを失わない名作であり続けることは確かだろう。
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t23 2020/11/27 04:19
この前ケーブルテレビでやってた