「美味しんぼ」でお馴染みの海原雄山と美食倶楽部は実在した!
国民的グルメ漫画として世間に浸透している「美味しんぼ」。作中に登場するキャラクターである山岡士郎、海原雄山などの名前や、究極のメニュー、至高のメニューといった単語は、原作を読んだことのない人でも聞いたことがあるかと思います。そんな同作の主要人物である美食家・海原雄山ですが、実は「実在の人物をモデルにしていた」というのをご存じでしょうか?
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雄山のモデルとなった「北大路魯山人」
雄山のモデルになった人物とは、大正期~昭和期にかけて活躍した芸術家・北大路魯山人(きたおおじ ろさんじん)。特に陶芸家として知られており、食器に対する見識を深める傍ら美食にも目覚め、自身の経営する古美術店において常連客に手料理を振舞っていました。その料理は瞬く間に評判となり、1921年には会員制食堂「美食倶楽部」を設立。この美食倶楽部は「美味しんぼ」においても、雄山が主宰する会員制料亭としてその名が使われています。そして1925年からは、東京・永田町の料亭「星岡茶寮(ほしがおかさりょう)」で美食倶楽部を展開。魯山人はその顧問として1936年まで経営に関わっていました。
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陶芸及び美食の分野で歴史にその名を残している魯山人ですが、特筆すべきは彼の「人格」。生前より性格破綻者として知られており、気に入らない対象には容赦なく毒舌を浴びせることで有名でした。その対象はピカソ、横山大観、小林秀雄といった芸術・文芸の大家にまで及び、また私生活でも傲慢な態度を取り続けたため、6度の結婚を繰り返しています。また、この性格は前述の美食倶楽部の経営にも悪影響を与え、1936年には星岡茶寮から追放されています。
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「美味しんぼ」に魯山人の逸話が採用される!
美食倶楽部を追放されたことで「美食について語る資格無し」と事実上判断された魯山人ですが、彼の美食にまつわるエピソードとして、「粉わさび」の話が後世に伝えられています。これは、パリのレストラン「トゥール・ダルジャン」を訪れた際、出された鴨料理のソースを酷評し、持参していた「粉わさび」を使ったわさび醤油で鴨を食べたというもの。鴨肉に最適な味付けを追求した逸話ですが、これは「美味しんぼ」においても雄山が同様のエピソードを披露しています。
このように、雄山のモデルとなっただけでなく、作中のエピソードについても影響を与えているのが北大路魯山人という人物です。
このように、雄山のモデルとなっただけでなく、作中のエピソードについても影響を与えているのが北大路魯山人という人物です。
こちらは雄山が「しゃぶしゃぶ」を酷評したときの一コマ。こんな人物が同席すれば美味い料理も不味くなること間違いなし!
※画像はフィクションです。真似をしてトラブルに発展しても責任を負いかねます。
※画像はフィクションです。真似をしてトラブルに発展しても責任を負いかねます。
魯山人の人柄を参考にした(?)名言の数々!!
芸術家としての功績よりも、その性格の方がある意味有名な魯山人。「傲慢」「不遜」「虚栄」などと評されたその性格は、「美味しんぼ」の海原雄山にも脈々と受け継がれています。ここでは、魯山人に影響を受けたと思われる雄山の特筆すべき名言をいくつか振り返ってみましょう。
「馬鹿どもに車を与えるな」
単行本14巻に登場する名言「馬鹿どもに車を与えるな」。渋滞に巻き込まれた雄山が、渋滞の原因を「必要もない連中が車に乗るからだ」と自分を棚に上げて断罪。そして「馬鹿どもに車を与えるな」という後世に残る名言を繰り出しました。まさに「傲慢」の名を欲しいままにした魯山人の生き写しであるといえるでしょう。雄山の下僕である中川も「ははっ」と応じていますが、どうやって馬鹿どもに車を与えないようにするのでしょうか?この点も気になるところではあります。
※画像はフィクションです。真似をしてトラブルに発展しても責任を負いかねます。
「アメリカ人好みのあさましい食い物」
単行本9巻に登場する名言「アメリカ人好みのあさましい食い物」。これは美食倶楽部で働く若手の料理人が「美食倶楽部を辞めてハンバーガーショップを開きたい」と申し出たときのエピソードで、雄山は「味覚音痴のアメリカ人の食べるあの忌まわしいハンバーガー」と、ハンバーガーについて人種差別を用いて酷評しました。SNSが発展した現代であれば炎上必至の発言ですが、その後ハンバーガーを完食し評価する場面もあり、美食家として評価すべきところは評価するという姿勢が伺えるエピソードと言えるでしょう。
ほらね!!海原雄山先生ハンバーガーをガッツリいってるでしょ?あ~見たくない…。 pic.twitter.com/2wxxEyin
— 苺のジャム&マーガリン (@jamutomaagarin) September 9, 2012
※画像はフィクションです。真似をしてトラブルに発展しても責任を負いかねます。
その他、料理をひっくり返してからの「女将を呼べ!」という名言や、「食べ物の味もわからん豚や猿」といった自分と味覚の合わない人間を容赦なく罵倒し傷付けることの出来る雄山の生き様は、その至高の性格により美食倶楽部を追放されるに至った魯山人を、まさに現代によみがえらせたものであると言えるでしょう。