妊娠のショックを隠しきれない診療所からの帰り道、吉里に声をかけられる。「誰が女郎の子の父親に名乗りをあげるもんか。絶対産んじゃダメだ」と親身になって自分で子をおろす方法などを教えてくれた。そして、野口の借金返済に50円どうしても足りないので伸輔に借りてもらえないかと相談してきた。「酒もやめる、好きな男を助けたい」という吉里を応援する若汐。
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堕胎して倒れている所を車屋に発見され廓に運び込まれた若汐は、うわごとで「若さん」を繰り返す。女将から連絡が行き傍についていてくれた伸輔。吉里の自殺で野次馬から上がった悲鳴を聞かせないように若汐の耳をふさいでくれた。
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若汐は自分を指名して長く通ってくれている伸輔が自分を抱こうとしないことを哀しく思っていた。「なんで抱いてくれないんですか?」とついに聞いた若汐に伸輔は、裸を見せてくれと頼む。若汐の美しい裸体を前にして、「妄想の中でしか抱けない。なにをやっても中途半端な情けない人間だ。」と自分を責めた。
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小花に弟の連絡先を聞くが「聞かないで」の一点張り。唯一の肉親である弟に小花の病気を知らせてやりたい若汐たちは、過去を知っているとされる演歌師の元をたずねる。「母親は女郎で父親は誰かわからない。弟なんていない。8歳の頃から実の母を名乗る女に売春させられていた」と衝撃の事実を聞かされる。
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小花に代わって御職の花魁となった若汐は花魁名跡「紫」の名を継ぐ。紫の豪華な積夜具(布団など)が元は小花が使っていた部屋に運び込まれる。そんな中病院を抜け出した小花が中梅楼に現れた。自分の部屋にまっすぐ向かう小花。自分の部屋に紫の積夜具を見た小花は激怒し、カミソリでズタズタに切り裂く。
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そこへお座敷から戻った紫と伸輔。小花は怒り狂い「泥棒猫!ここは私の部屋だよ!出ておいき!」と絶叫。怒りに震える紫は声を発することもできぬまま、伸輔に腕をつかまれ引きずられるように部屋から出されてしまう。
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「嘘だらけのこの世界、小花の嘘なんて可愛い。許してやれ。」それでも小花への罵倒をやめない紫に、「君は心底娼婦に成り下がってしまったんだな」と伸輔。「この嘘だらけの世界で私は大輪の花を咲かせて見せますよ!」伸輔と紫の別れだった。そしてこの吉原で登りつめるという覚悟が決まった瞬間だった。
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