現在最も有名なテキ屋はやはり「寅さん」でしょう。
寅さん風口上
さア、もうやけだ!持って行きやがれ、好きなものを持って行け!ねえ、ヤケのヤンパチ陽焼けのなすび、色が黒くて食い付きたいが、わたしゃ入歯で歯がたたないよっときやがった。ね、角は一流デパート赤木屋黒木屋白木屋さんで紅おしろいつけたおねえちゃんに下さい頂戴でいただきますと、五百が六百下らない品物ですが、今日はそんなこと言いません。なぜかっていうと神田は六法堂という書店が僅か三十万の税金で泣きの涙で投げ出した品物です。四百、三百、二百、百両だ。どうだ!これでも買わない、ようし、もうこうなったら……」
スーパーやコンビニには求めようのない「物を売る芸術」らしきもの。
しかし現在では、世の中は効率一辺倒。アルバイトが時給を稼ぐためだけに、最低限の挨拶しかしないような店員さんにたまーに当たると、がっかりしてしまう時もあります。
まだお寺の縁日や神社のお祭りなどでは、露店が並ぶ風景を見ることができます。
「ひたすら効率を求めて安く買えればいい」というのもわかりますが、「物を販売する」こと自体がエンターテインメントという時代も、またよかったのではないかな、と思います。