『好奇心が原動力』高畑勲・宮崎駿両監督の先輩アニメーター『大塚康生』のワクワクする仕事術!
2016年11月23日 更新

『好奇心が原動力』高畑勲・宮崎駿両監督の先輩アニメーター『大塚康生』のワクワクする仕事術!

『未来少年コナン』や『カリオストロの城』の作画監督で知られる『大塚康生』さん。のびのびとした画風・ダイナミックな動きを取り入れたアニメーションは、大塚さんの人生の生き方、考え方そのものが反映されていました。大塚さんの類稀なる画力、機関車・ジープへの愛情、そして宮崎駿・高畑勲両監督と過ごしてきた若き日々を知っていただけたらと思います。

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『大塚康生さん』ってどんな人?

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1931年、島根県生まれ。1957年、東映動画に入社し日本初の本格カラー長編アニメーション「白蛇伝」(’58)、「わんぱく王子の大蛇退治」(’63)などに動画として参加、「太陽の王子ホルスの大冒険」(’68)で初めて作画監督を担当する。その後、東京ムービーを拠点に日本アニメーションなどでもアニメーターとして仕事をする。
作画監督作品は「ムーミン」(’69)、「ルパン三世」(’71)、「パンダコパンダ」(’72)、「未来少年コナン」(’78)、「ルパン三世 カリオストロの城」(’79)、「じゃりン子チエ」(’81)など多数。
1991年から9年間代々木アニメーション学院アニメーター科の講師として教壇にたつ。技術顧問を務めるテレコム・アニメーションフィルムのアニメ塾などを通じ、現在も後進の指導にあたっている。

『作画汗まみれ』(増補改訂版) 大塚康生 著 徳間書店 より引用
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『作画汗まみれ』の表紙を見ているだけで、「これも観た!あれも観た!」とワクワクしてきます。「あ~あれあれ!」とわかるキャラクターが何人もいませんか?
大塚さんが関わったアニメの数々。あなたはどれを覚えていますか?

高畑勲・宮崎駿監督が語る『大塚さん』とは

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大塚さんは私がはじめて出会った原画家でした。そして、はじめて演出をした作品の作画監督でもありました。労働組合運動に導き入れたのも大塚さんなら、劇場用長編に演出として迎え入れてくれたのも大塚さんでした。東映動画からAプロダクションに移ったときも、そこを去ったときも、さらに再び東京ムービー系に戻ってきたときも、私の決断を支えてくれたのは大塚さんのアドバイスでした。常にいっしょに歩むわけではけっしてなかったのに、私の転機には必ず大塚さんが現れて、私を別の方向に誘う(いざなう)のです。私がいちばんお世話になった人、それが大塚さんです。
via 『作画汗まみれ』(増補改訂版)大塚康生 著 徳間書店/寄稿文『人生の兄貴分』高畑勲より引用
アニメーションの面白さ、動かすことの面白さを教えてくれた人だね。
やればやるほど動きのことがわかってくる。(中略)
その入り口を教えてくれたのが大塚さん。
via DVD『大塚康生の動かす喜び』(ジブリがいっぱいCOLLECTIONスペシャル)宮崎駿監督 インタビューより
高畑・宮崎両監督の絶大な信頼を得ている大塚さん。
とても興味のわく人物です。その人となりを、少年時代から振り返ってみましょう。

機関車に夢中だった少年時代

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10歳くらいの時に、出征する兵士を見送るために、初めて大人に連れられて津和野駅にやってきた大塚少年。その時初めて見た蒸気機関車に「ハンマーで殴られたような」衝撃を受けたのが始まりだったそうです。
やがて山口市に引っ越し、小郡駅の近く(といっても12㎞離れていた)になって小郡機関区があるため、止まっている機関車を思う存分スケッチできるようになります。
駅員や機関区で働く大人たちは、熱心でしかも絵の上手い大塚少年を可愛がり、積極的に機関車の仕組みを教えてくれたり、運転台に乗せてくれたりしたそうです。

「ずっとあとになって、日本中の線路から蒸気機関車が姿を消そうとしたころ、SLマニアというのが大量に出現しました。しかし、私の場合は、話す相手も仲間もいない孤独な趣味だったのです。(中略)
もしあのころカメラがあり、フィルムが豊富にあったとしたら、私はいちいち機関車の絵を描かないで、ためらわずにシャッターを切っていたことでしょう。」
(『作画汗まみれ』(増補改訂版) 大塚康生 著 徳間書店 より引用)

まだ戦争中だった時代を振り返り、大塚さんが述べられた言葉です。
自分で描いて、家で眺めて、また次の日スケッチしに行く。
と言っても駅は遠く、家から1時間以上も歩いて通っていたそうです。
湧き出るような情熱と関心の強さを感じますね。
「ある日、大塚さんからスケッチが描かれたノートを見せてもらった。鳥肌が立つほどショックを受けた」と語るのは、鉄道写真家の南正時氏だ。南氏は鉄道写真家になる前は、大塚氏と同じアニメ制作会社に籍を置いていた。南氏は休暇のたびに関東や東北地方の蒸気機関車の写真を撮って回った。そのうちに大塚氏と南氏は、会えば鉄道談義に花を咲かせる間柄となった。
大塚氏からノートを見せられたのはそんな時だった。「とても子供が描いたとは思えなかった」。機関車の駆動装置や動輪などのメカニズムが万年筆で詳細に描かれていた。設計図のようにも見えるが、今にも動き出しそうなダイナミズムにあふれていた。
子どもが描いたとは思えないほど正確なスケッチ

子どもが描いたとは思えないほど正確なスケッチ

2012年、南さんは、このノートに描かれたスケッチをデジタルスキャンし、永久保存することを大塚さんに勧めました。
それらの作品をギャラリーで展示したところ、JR東日本で元車両部長をやっていた人が「これは文化的な価値が大きい」と驚かれたそうです。

大塚康生の蒸気機関車少年だったころ 予告編

予告編の画像の中で、大塚さんがたくさん描いた機関車のスケッチを見ることができます。
スケッチをすぐに見たい方は1:25あたりからご覧ください。

機関車から学んだ『作動原理』の重要性

大塚さんが、数多くの蒸気機関車を描くことで強く学んだことがあります。
それはどんなものにも、動くためには「作動原理」や「構造原理」が働いており、それをきちんと知って描かないと納得のいく絵が描けないということでした。
特に蒸気機関車は、この「作動原理」がむき出しです。
大塚さんはスケッチしながら、どうやって動くのが目の当たりにして覚えてきました。
これは機械だけでなく、人間の動作にもあてはまることです。
この経験は、アニメーターになってからの大塚さんの仕事を支える、大きな柱となりました。

次の興味はジープ

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終戦後、大塚少年が住む町にも、大量の占領軍がジープやトラックに乗って進駐してきました。今まで見たことのない軍用車両、青い目の兵士を見てカルチャーショックを受けたそうです。ところが怯えることもなく、むしろ好奇心が刺激され、たちまちジープの虜となってしまいました。
蒸気機関車の時と同様に、ペンとインクつぼをかかえ、ジープやトラックのスケッチをしに日参したそうです。
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大迫力の緻密なスケッチ!
ところが絵が上手くて緻密過ぎたために、アメリカ軍の諜報部に連行されてしまうのです!
それにしても、14歳にしてこのような絵が描けるとはさすがである。大塚少年の描画のすごいところは、そのデッサン力だけでなく、車体内外のマークやナンバー、載せてある貨車のナンバーまで細かく描きこむその完璧なまでの拘りである。そのおかげで、占領軍民間諜報部(CIC)の本部に連行され、尋問された上、スケッチブックを没収されたこともあるのだそうだ。戦後、表現の自由が得られたとはいえ、そこは占領下の日本。CICが戦犯や反占領軍活動に目を光らせていたのである。確かに少年とはいえ、軍の所属までがわかるマークやナンバーまで詳細に記録していれば、怪しまれるのは当然だ。(中略)しかし、少年のピュアな絵心は理解されたのであろう。その後は絵を描いていてもお咎めなしだったようだ。
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