黒柳朝    トットちゃんの母、チョッちゃん
2024年6月4日 更新

黒柳朝 トットちゃんの母、チョッちゃん

黒柳徹子の母、黒柳朝。バイオリニストの黒柳守綱に略奪、監禁されて結婚。戦争、夫の徴兵、300機のB29による東京大空襲、疎開、焼け野原となった東京で遭った寸借詐欺、黒柳徹子の結婚詐欺、どんなときでも自分らしく生きたチョッちゃんのエピソード。

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近所には、北海道の岩見沢高等女学校の同級生の米ちゃんがいた。
黒柳朝は音楽学校に入るため、米ちゃんは絵の修業のために一緒に上京。
黒柳朝は、実践女子学校の英文科に通いながら岡田三郎に絵を習う米ちゃんと毎日のように会って慰め合った。
独身の頃は絵の博覧会や音楽会にいき、本もよく読み、米ちゃんはヘルマン・ヘッセの「車輪の下」に、黒柳朝はジョルジョ・サンドの「アンデアナ」に感激。
黒柳朝が結婚すると米ちゃんは村田さんという銀行員と結婚。
米ちゃんの家は数駅離れた自由が丘だったので交流は続き、毎日おしゃべり。
2人は、少しピントが外れているところ、天然なところ、あまり物事にこだわらないところが似ていたが、米ちゃんは感情的にみえて慎重で理性的、黒柳朝は理性的にみえて感情的で直情的。
ある日、米ちゃんが
「いい映画がやっているから観にいこう」
というので
「なんという映画なの?」
と聞くと
「ホルモン物語」
「・・・・・・」
「ほらほら、海か湖でゴンドラに乗って、ロマンチックな映画よ。
歌もあるじゃない」
よくよく聞くと、それは「ホフマン物語」だった。
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黒柳朝は長女、徹子を、米ちゃんは長男、太郎を同じ年に出産。
おむすびやおやつを持って、それぞれ子供をオンブして出かけ、ピアノが聞こえる家のそばの空き地に腰を下ろし
「田園調布の音楽会よ」
といっておしゃべり。
少女の頃、ロミオとジュリエット、白雪姫、ハムレット、トスカ、椿姫などを読んで、大きなお城に住んで美しい衣装を着ているお姫様になりたなかった黒柳朝は、建ち並ぶ家々の中から
「私、あの白い洋館」
米ちゃんは、
「私はこっちがいいわ」
と好みの家を選び、
「あの部屋が私たちの寝室で、あの窓は子供部屋・・・」
「花壇には・・・を植えて」
などと語り合い、最後は
「あんなに大きな家は経費がかさむし、掃除だって大変。
やっぱりお返しすることにしましょう」
といってサバサバした気持ちで帰宅。
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太郎がおとなしくて素直なのに対し、徹子は活発で賑やか。
イジメて泣かすのは、いつも徹子だった。
お父さん・お母さんごっこで、徹子は葉っぱや草花をつんで食事の用意をし、太郎は
「じゃあ、いってきます」
といって会社へ。
しかしすぐに戻ってきて
「お母さん、出かけるときは窓をキチンと閉めて、火の元をちゃんと消して、カギをかけて出かけなさいよ」
「うん、わかった」
「いってきます」
黒柳朝と米ちゃんは、子供が本当の親そっくりなのをみて
「恐ろしい」
と思った。
徹子と太郎が6歳になって小学校に入ると、黒柳朝と米ちゃんも忙しくなって毎日おしゃべりすることはできなくなった。
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6歳になった黒柳徹子が日曜学校(教会)の演劇でキリスト役に抜擢された。
3人の賢者が天使に導かれてキリストが生まれた馬小屋にたどり着いて3つの贈り物をするという場面で、マリア様に抱かれた黒柳徹子は、羊役の子供に顔の前にティッシュペーパーを突きつけ
「アナタ、羊でしょ。
食べなさい」
「イエス様はそんなことなさいません!」
牧師にキリスト役を降ろされ、羊役になると
「チリ紙ちょうだい」
といいながらキリストの足をくすぐり、羊役からも降ろされた。
そして大田区の公立小学校に入学したが、3ヵ月後、黒柳朝は学校に呼び出され
「お嬢さんがいるとクラス中の迷惑になります」
といわれ、退学。
日本初のリトミック教育(音楽、演劇、ダンスなどを多用して楽しく学ぶ教育)を導入した自由が丘のトモエ学園に転校。
黒柳徹子は、初めて会った小林宗作校長に
「君は本当はいい子なんだよ」
といわれたことや、教室が廃車になった電車だったことが気に入った。
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トモエ学園の授業は、子どもたちの興味や個性を尊重し、席も時間割も自由。
その日の気分で好きな席に座り、各自のペースで勉強し、校外学習も多かった。
この斬新で自由なスタイルの下、徹子はノビノビと育っていった。
義経と弁慶の演劇をすることになたとき、自称、
「私、かわいかったので」
主役の義経に抜擢され、関所で
「義経と弁慶ではないか」
と疑われ、そうでないことを証明するために弁慶が義経を殴るシーンで、弁慶役にブタれた徹子は反射的に足にかみつき、山伏役に降格。
5人の山伏が
「お山は晴天♪」
と歌いながら山を登るシーンで金剛杖で指揮をとってしまい、山伏役も降ろされた。
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一方、長男の明児は、3歳のときに初めてスキー場へいき、2歳上のお姉さん、黒柳徹子に、
「回るときはこうやって・・・」
と肩教えてもらい、翌日には明児は上手に滑れるようになった。
4歳になるとバイオリンも習い始め、黒柳守綱は
「天才だな」
とベタ褒め。
クリスマスのとき、日曜学校の先生に貯金箱を差し出し、
「僕のお小遣いを貯めたお金なの。
困っている人にあげてください」
中には2円75銭が入っていた。
正義感が強く、近所でケンカをすることもあり、黒柳朝が謝りにいくこともあったが、
「いつも明児は自分なりの理由を持っていた」
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子供を2人産んだ黒柳朝は、
「体の結びつきを抜きにやっていけないのかしら?」
「男性は母親の懐がいつまでも恋しいのだろうか?」
と妻としての役割がイヤになり、体中鳥肌が立つほど男性恐怖症に。
別の部屋で寝るようになり、夜、黒柳守綱が入ってくると
「ヤメテ」
と追い返した。
それでもトイレに行くときは黒柳守綱の部屋の前を通らねばならず、帰りに黒柳守綱が自分の部屋の前で待っていて、力づくで引き入れられて有無をいわさずにお相手をさせられた。
「妻に対しても強姦罪があればいいのに。
そしたらさっそく110番も読んで警察に訴えてやるのに」
と本気で考え、ついに腰かけ式のトイレを購入。
自分の部屋で息を殺してソッと座り、音で黒柳守綱の様子をうかがいながら用をたした。
その後、異変に気づいた黒柳守綱は、恨みがましい顔でこちらをみてきた。
傷つき苦しむ顔をみて黒柳朝は、
「何年も連れ添った夫婦なのに体のつながりを持たないと信じ合えないものなのか?」
と悲しくなった。
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1940年年2月、建国記念日が紀元2600年に当たるということで日本中で日の丸の旗が立てられた。
日本の東アジアへの進出は 1931 年の満州侵略に始まり、1937 年から中国を攻撃。
これに反対するアメリカに経済制裁を科され、石油など資源不足に直面した日本は、状況を打開すべく東南アジア・太平洋方面に進出し、アメリカとの戦争が始まり、1945年8月15日の敗戦する。
しかしこのときはまだ日中戦争の真っ只中。
盛大な祝賀式が行われ、山田耕作が指揮し、黒柳守綱がコンサートマスターを務める新交響楽団は、紀元2600年祝典シンフォニーを演奏。
その後、2ヵ月間、満州へ祝賀演奏旅行にいくことになった。
長男の明児が4歳、二男の紀明は8ヵ月だったが、子供より手がかかる黒柳守綱が2ヵ月もいなくなるため、黒柳朝は内心ウキウキしていた。
逆に黒柳守綱は家を離れたくなく
「僕が出かけたらママは清々して嬉しいだろう」
とイヤミ。
黒柳朝は
「当たり前でしょ。
清々するなんてもんじゃないわよ」
といってやりたかったが
「パパがいなかったらさみしいに決まってるじゃないの」
とツラいフリ。
そして黒柳朝は、ちょうど夏休みに入っていたので、略奪されて以来、初めて北海道の実家に帰ろうと計画。
仕事が終わると飛んで帰ってくる黒柳守綱によって、ずっとカゴの中の鳥状態だった黒柳朝は、修学旅行を待つような心境でときを過ごした。
そしてパパが出発する日は東京駅でお見送り。
楽団員80人にスタッフ、医療関係者も加わってかなり大所帯な演奏隊は、見送る側もかなり大勢で賑やか。
そんな中、子供を1人ずつ抱き上げて
「ママのいうことを聞いて、いい子にしてるんだよ」
という黒柳守綱をみて黒柳朝は、
(いい外面をしやがって)
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その後、黒柳朝は、まず青森まで数十時間かけて移動し、数時間、津軽海峡を渡る連絡船を待って、5時間船底で揺られて北海道に上陸。
さらに函館から空知郡滝川町まで10時間かかり、勉強道具を入れたランドセルを背負った黒柳徹子と乳児を抱えて、合計3日がかりで実家へ戻った。
「よく帰ってきたね」
「おかえりなさい」
父親、母親、看護婦、お手伝いさんから口々にねぎらわれ、それからは上げ膳下げ膳のうれしい生活が始まった。
父親は、孫を連れて近所に見せびらかしにいき、黒柳徹子は、大木から落ちたスモモが絨毯のようになっているのをみて、その上を滑って転ぶのに夢中。
10日くらいして黒柳守綱から手紙が届き、小学生のような字で
「ものすごい歓迎を受けていますが、僕はちっともうれしくない。
ママを愛してる。
別れがこんなにつらいとは思わなかった。
毎日帰りたい気持ちでいっぱいです。
手紙をください」
とあり、住所も書いてあったが、黒柳朝は毎日のように友人と遊んでノビノビと過ごして返事を出さなかった。
するとある朝、満州から電報が届き、家中の者が
「何事か」
と驚き集まって電報を開くと
「テガミクレ キガクルイソウダ モリツナ」
と書いてあり、みんなに大笑いされて恥ずかしがりながらも
(永久にこの家にいられたらいいなあと思ったのがテレパシーでパパに伝わってしまったのではないか!)
と思い、あわてて返事を書いた。
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1941年12月、日本がハワイの真珠湾を奇襲攻撃したことで太平洋戦争が勃発。
真珠湾攻撃終了後、日本は潜水艦9隻をアメリカ大陸西岸に展開し、10日間でタンカーや貨物船10隻を破壊。
カリフォルニア州サンタバーバラのエルウッド石油製油所への砲撃も成功させ、これまで殆ど本土を攻撃された経験のないアメリカに大きな衝撃を与えた。
1942年1月、日本はマニラを占領。
2月、日本はシンガポール占領し、さらにオーストラリア北部への空襲を開始。
4月、アメリカの爆撃機が東京、横須賀、横浜、名古屋、神戸を空襲。
日本はこれが本土初空襲だったが、東京はB25爆撃機13機が飛来。
以後、そして終戦までに122回の空襲を受けた。
黒柳家には蘭の栽培をするための温室があって、そこに防空壕を掘って空襲警報が鳴る度、家族はそこに避難していた。
あるとき防空壕の中で大きなカエルを見つけた黒柳朝は、素手でつかんで黒柳守綱にくっつけた。
カエルが嫌いな黒柳守綱は、警報が鳴る中、何度も防空壕から出そうになり、それをみて子供たちは小声で笑った。
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