その昔、音楽記録メディアといえば、カセットテープ一択だった
カセットテープのメリットといえば、自分の好きな曲を好きな順番で録音できるところ。ラジオでかかる好きなミュージシャンの楽曲を録りためて、自分だけのオリジナルアルバムをつくっている人なんかもいました。今みたいに、曲順を編集したり、ランダムで再生したりなんかできない時代だから、出だしの曲を何にしようか、とか、残りあとちょっとしかないテープになんの曲を入れようかとか、無駄に頭を悩ませていたのも、今となってはいい思い出です。
ニュー・ウェイヴミュージックの流行に一役買った『カセットブック』
そんなコスパの良さもあって、1980年代、書籍・雑誌にカセットテープが付属した『カセットブック』なるものが流行したのです。今だとDVDやCDが付録としてついてくる本がよく書店で売られていますが、そのカセット版といったところでしょうか。
おりしも時は、ニュー・ウェイヴミュージック全盛の時代。YMOやシーナ&ザ・ロケッツ、ムーンライダーズといった独自のスタイルを打ち出したアーティストたちが、若者の間で新たなムーブメントとなっていました。彼らのフィロソフィーを、音はもちろんのこと、ビジュアル・文章をまじえて、あますところなく伝えたい…そんな意図も働いて、ニュー・ウェイヴミュージックを取り扱ったカセットブックが数多く発刊されたのです。
スタイリッシュな表紙が魅力的だったニュー・ウェイヴ系カセットブック『TRA』
80年代のインディーズデモテープ、高価買取いたします。
— FLOWER RECORD (@FLOWER_RECORD) November 22, 2017
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TRA Vol.2 (Winter 1982) Side-A pt.1
いずれも、アルバム扱いなのに、レコード会社ではなく出版社が発売元となっているのが、なんとも、面白いところです。こうした流れの背景には、出版社発行のカセットブックはレコード会社の管轄外となるため、アーティストがより自由闊達な創作活動を展開できるという利点があったことも見逃せません。
ヌード写真集と登場モデルの声を収録したカセットブックも!
時を経て2017年現在。今やMP3プレイヤーの天下で、すっかり過去のメディアとして忘れさられていたかに思われていたカセットテープが、ここに来て突如、脚光を浴びているといいます。カセットテープをリアルタイムで利用していた30~40代が昔を懐かしんで使用しているのはもちろんのこと、10代~20代にもひそかなブームが来つつあるようであり、なんでも、アナログな音質やめんどくさいところが逆に好評なのだとか。ということで、ここ数年、見かけなくなっていたカセットブックですが、まさかの再ブレイク、あるかも知れません!