円谷プロが世に送り出したアイドル「花井その子」
皆さんは「花井その子」という人物をご存じでしょうか?80年代前半に、特撮で有名な円谷プロダクションに所属していたアイドル歌手で、元々は円谷プロ所属の子役として活動しており、1980年に東京12チャンネルで放送された特撮ドラマ「ぼくら野球探偵団」に出演していました。このドラマは、野球と特撮という異色の組み合わせの“特撮野球アクション”として、当時特撮マニアの間で話題となったのを覚えている方もいらっしゃるかと思います。
1982年、シングル「キューピッドLOVE」で歌手デビュー!
ドラマ「ぼくら野球探偵団」から2年後の1982年、花井その子は円谷プロ初のアイドル歌手として、シングル「キューピッドLOVE」でデビューを飾りました。当時のキャッチコピーは「その子は、ヘルシーな光源体」と、円谷プロならでは(?)の特撮を意識させる単語が。しかしながら、楽曲自体は80年代前半にありがちなアイドルポップスであり、「花の82年組」と呼ばれた他のトップアイドルたちの陰に隠れ、大きな注目を浴びることはありませんでした。
貴重なテレビ出演時の映像!
キューピッドLOVE
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セカンドシングル「COSMIC★LOVE」がある意味注目を浴びる!!
デビューシングルが不発に終わってしまった花井。このままでは駄目だと判断した円谷プロは、起死回生の一手を放つ決断をします。それは、翌1983年に発表したセカンドシングル「COSMIC★LOVE」にて、円谷プロが誇る怪獣の数々をフィーチャーすることでした。
シングルのジャケットには、ご覧の通りウルトラシリーズに登場するバルタン星人、ピグモン、レッドキングが、花井本人とともに登場。さらに、「レッツゴーヤング」などのテレビ出演にも怪獣は同行し、着ぐるみたちがバックダンサーとして歯切れの良くない踊りを披露していました。その一方で、花井はいたって真面目な振り付けで、いたって真面目な歌唱を展開。このミスマッチな演出には、一部のマニアは反応したものの、全国区の人気を得るには至りませんでした。
貴重なプロモーションビデオ!
花井その子 コズミックラブ(PV)
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テレビ出演時の映像も必見!
花井その子「コズミック・ラブ」
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花井その子、結局シングル2枚で打ち止め!
「COSMIC★LOVE」も一部のマニア受けに留まった花井ですが、その後新曲を発表することはなく、1986年に月曜ドラマランド「ザ・サムライ」に出演するなどといった活動は見られたものの、結局芸能界からフェイドアウトする結果となってしまいました。
そして、自社でアイドルを育成することに失敗した円谷プロですが、その創設者である円谷英二の孫・円谷優子が1988年にアイドルとしてデビューした際には、彼女を研音に所属させるという対応を取りました。研音は中森明菜らを輩出したアイドルに強い芸能事務所であり、「餅は餅屋」のことわざ通りアイドルを育てるならその専門家に任せるべきとの判断をしたと思われます。一方、円谷プロはその後も「ウルトラマンシリーズ」をはじめとした特撮作品をヒットさせ続け、現在に至るまで特撮の老舗として君臨することとなったのです。