円熟期の高倉健
「鉄道員(ぽっぽや)」 劇中の名言
ポッポヤはどんなときだって、げんこのかわりに旗をふり、涙のかわりに笛をふき、大声でわめくかわりに、歓呼の裏声をしぼり出さなければならないのだった。
ポッポヤの苦労とは、そういうものだった。
by 鉄道員
レビューでの評価
一人の男の生き様が心に染み入る、さながら雪国のファンタジー。
この年、最もお気に入りの一本となった。
よく高倉健の演技を、どれ見ても同じと言う意見は多い。
でもでもでも、「幸福の黄色いハンカチ」や「鉄道員」など、もし高倉健でなかったら、あれほどの画になっていただろうか。
僕は高倉健の映画や演技を、“高倉健は何を演じても高倉健だが、やはり高倉健でしか成り立たない”と思っている。
ベストセラー小説の映画化
廃線を間近にした、北海道の元運炭路線であるローカル線の駅長に訪れる幸福を描いた作品。第16回日本冒険小説協会大賞特別賞。短編集は第117回直木賞受賞作で、140万部を売り上げるベストセラーとなった。
また、1999年に降旗康男監督、高倉健主演により映画化され、第23回日本アカデミー賞(2000年3月)の最優秀作品賞、最優秀主演男優賞など主要部門をほぼ独占した。
浅田次郎は、「散歩しているときに、あの(鉄道員の)ストーリー全部が一瞬にして頭の中に降って来た」と語っている。
「鉄道員(ぽっぽや)」のあらすじ
北海道の幌舞線の終着駅幌舞の駅長・佐藤乙松は、鉄道員(ぽっぽや)一筋に人生を送ってきた男だ。
幼い一人娘を亡くした日も、愛する妻を亡くした日も、彼はずっと駅に立ち続けてきた。
だが、その幌舞線も今度の春で廃線になることが決まっていた。
さてその最後の正月、かつて乙松と共に機関車を走らせていた同僚で、今は美寄駅の駅長の杉浦が乙松を訪ねて幌舞駅へやってきた。
彼は、今年で定年になる乙松に一緒にリゾートホテルへ...
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雪の似合う名作
この作品に余計な解説など不要だと思った。
四の五の言わずにぜひとも観ていただきたい。
そして、できれば寒い冬の夜にじっくりと堪能してもらいたい。
「おら、ポッポやだから身内のことで泣くわけにはいかんでしょ」
乙松が歯を食い縛って、それでも心で号泣する哀しい姿に、思わず目頭が熱くなる。
しんしんと降り続く雪の白さと、「プォーッ」と言う白銀に響く警笛がたまらなく郷愁を誘う。
こんな世知辛い世の中だからこそ「鉄道員」を観て、主人公・佐藤乙松の骨のある生き様に学んでいきたいと思った。
実は高倉健はこの映画を撮るために今まで映画に出演していたのでは
ないか。
もちろんこれはあやまった考えだ。言い方を変えよう。
この映画の高倉健は戦後日本の男たちのたどりついた姿そのものである。
オープニング、雪のホームに高倉健が立っている。
もうそれだけで私には涙である。
via usagi.be