【戦場のメリークリスマス】ビートたけし、デヴィッド・ボウイに坂本龍一出演の大島渚監督作品。
2017年1月30日 更新

【戦場のメリークリスマス】ビートたけし、デヴィッド・ボウイに坂本龍一出演の大島渚監督作品。

 1983年に日本公開された大島渚監督の「戦場のメリークリマス」。主演にデヴィッド・ボウイだけでも豪華ですが、ビートたけし、坂本龍一、それに、内田裕也、ブレイク前に三上博史、ジョニー大倉も出演しており、今となっては、これまた豪華な顔合わせの映画でした。坂本龍一の音楽も印象的であり、戦闘シーンのない戦争映画という触れ込みもインパクトが大きかった作品でした。

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見どころ

出演者が男性ばかり

 第二次世界大戦をテーマにした戦争映画でありながら、戦闘シーンは一切登場しない。また、出演者はすべて男性という異色の映画でもある。撮影はクック諸島のラロトンガ島で行われた。
ロレンス英軍中佐とセリアズ英軍少佐

ロレンス英軍中佐とセリアズ英軍少佐

 本当に、男性ばかりでした。男性ばかりの中で起こる様々な人間模様…といった感じで、戦争シーンは出てこない映画です。とにかく広島に修学旅行に行って以来、戦争アレルギーのようになっていた私には、ありがたい映画でした。
こういう場面はあります。

こういう場面はあります。

戦闘シーンはないのですが、随所にこういうシーンはありました。

歴史の闇

ハラ軍曹らに見られる当時の日本軍による捕虜に対する扱いや、イギリスなどにおける障害者への蔑視行為やパブリックスクール(寄宿制名門校)におけるしごきなど、歴史の闇の部分も容赦なく描いている。
 確かに、日本兵である方が何かとても残酷だったように思います。どんな戦争映画でも捕虜が優遇されるという場面は見たことはあまりないのですが…。

 また、セリアズの学生時代を思い起こすシーンで、セリアズの弟が障害者で、学校でいじめられている…にも関わらず、学生であるセリアズは、それを建物の影で見て見ぬふりをするシーンもありました。その時は、
「セリアズ…ひどい奴だ。なんで弟さんを助けないの?」
 と思ったのですが、それを一番、悔いていたのは実はセリアズ自身だったのかもな…と思わせてくれたシーン(最後の方)もありました。
処刑されるセリアズ…

処刑されるセリアズ…

こんな残虐な処刑シーンもありました。
見たくない…シーンです。

メリークリスマス、ミスター・ローレンス!

 やがて時は流れて戦争は終わりを告げます。   
 戦犯として翌日に処刑されることになったハラにロレンスが会いに行く場面。 
 くしくもその日は またクリスマス・・・ 
 2人は戦時中のクリスマスの思い出を語り合います。別れを告げて部屋を出ようとするロレンスに最後にハラが語りかける台詞が 「 メリークリスマス、メリークリスマス、ミスター・ロレンス 」なのです。  
 この時のハラの笑顔にも いつかの無邪気さがあります。
 死を翌日にひかえた者の口からでる「 メリークリスマス 」という言葉には立場の違いを越えて訴えかけるものがあります。
ロレンスとハラ軍曹

ロレンスとハラ軍曹

戦場のメリークリスマス ED - Merry Christmas Mr. Lawrence Endi - YouTube

1983 Nagisa Oshima film. The scene of the movie last. Appearance: Tom Conti, Beat Takeshi (Takeshi Kitano). Composition / Arrangement / Performance by Ryuich...
「戦場のメリークリスマス」ラストのシーン
 既に、この動画を見て涙が…!
 せつないラスト・シーンに、坂本龍一さんのあの音楽…たまらない気持ちになります。
 戦争が終わり、敵も味方もなくなり、立場は逆転し、虐待していた方が次は処刑される…という前日に、
「メリークリスマス、メリークリスマス、ミスター・ローレンス」
 と言うハラ軍曹(ビートたけしさん)の顏が、なんとも言えない顔…。
 このラスト・シーンだけでも見るべき映画だと思います。
 「正しい者などどこにもいない」
 というロレンス英軍中佐(トム・コンティ)も心に残りました。

禁じられたキス

セリアズとヨノイ大尉

セリアズとヨノイ大尉

中学時代の私がまったく理解できなかった場面

キスの意味

 中学時代、映画館でこの映画を三度も見ようとした理由は、このシーンのためです。ボウイと坂本さんがキス(と言っても頬に少し)しているところをもう一度見たいわ…と言った「♡ハートマーク」な理由ではまったくなく、前述通り、
「なんで、セリアズはそこでヨノイさんにキスしたの?、それでヨノイさんがふら~っと倒れて…。???? なんのことかさっぱりわからん…(^_^;)」
 という情けない理由からです。
 が、高校時代に父が買っていた「文藝春秋」(だったと思います)を読んで、この映画の解説のような記事もあり、それを読んで初めて、「そうだったのか」と納得したのです。
 その記事の内容を書いてみようと思いますが、記憶が曖昧ので、うまく書けるかどうかわからないのですが、書きだしてみます。

 その雑誌には「戦場のメリークリスマス」を「わかりにくい映画」と書かれていました。まったくもって私もそう思ったので、読んでみたわけです。
 「同性愛行為は人間だけがするものだと思っていたけど、猿がその行為をしているのを見たことがある」
 と記事に書いてあり、それだけでも高校生の私は興味津々だったわけです。
「ただし、猿の場合、普段の生活ではオスはメスに、メスはオスに…と普通の状態だ。自分がその珍しい猿の同性愛行為を見たのは、オス同士の激しい争いの場だった」
 と…。これは、動画を見ていただければわかる通り、映画でも一触即発、ヨノイ大尉は日本刀を持ち出し…という場面でした。
「争いはボス猿と思しき、一際でかい猿と、少々小さ目の猿(以下、小猿)との間で起こった。どう見ても体のでかいボス猿が優勢だった。それは、小猿にもわかったのか、そこで、小猿は何を思ったか、ボスの股間あたりに自分の尻をこすりつけたのだ。あ…と思っている内に、争いは血を流すことなく終わっていた」
 とこんな内容だったかと思います。
 あ…と思ったのは、この記事を書いた方だけでなく、私もそうでした。
 仲間を助けようとしてセリアズがとった行動は、ヨノイ大尉を力づくで押さえつけるという方法ではなく、この猿の争いが終わった方法と同じ、キスという行為で日本刀を持ち荒ぶるヨノイ大尉の緊迫した心を解き放った…という方法だった…?!
「あ、そうだった…かもしれない、あの場面…!」
 と合点がいった瞬間でした。
 この時、セリアズの頭には学生時代、障害のある弟を助けなかった…という想いもあったかもしれないな…とも思えました。
 結果的にその場は、治まりましたが、セリアズは処刑される運命となります。
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