魅力溢れる「間」や 「キタノブルー」
『あの夏、いちばん静かな海。』では、北野武監督の作品の特徴である「間を省略した展開」「キタノ・ブルーと言われるほどの青い空」「極限まで切り詰められたセリフの少なさ」が随所に見られる本作は、北野武映画の原点とも呼べるべき作品となっています。
淀川長治や黒澤明も絶賛した!
映画評論家の淀川長治は「ビートたけしと言う人は、お年寄りのことを馬鹿にしたりするので嫌いだったが、この映画を観て考えが変わった、一度会いたい」という旨の発言をしている。
その後、映画雑誌でのインタビューにおいて、「あのね、日本の映画の歴史の中でね、一番言いたいくらいあの映画好きなのね。なんでか言うたらね、あれってとってもサイレントなのね。サイレントだけど見とったらラブシーンが一番いいのね」との賞賛を残した。また、蓮實重彦もこの映画を絶賛している。
黒澤明に高評価されたが、一方でよくわからないラストシーンはいらなかったと指摘される。
これに対して北野は観客に対するサービスだったとしている。
via ks.c.yimg.jp
淀川長治は本作の「ノン・リアリズム」に言及
「最近の日本映画、結構な評判をとったものでも、見とれんぐらい表現が貧しい。でもこれは、じっくり撮ってるし、いい感覚してますよ。
詩みたいにね、ノン・リアリズムで撮って、家族はどうしてるとか、どうやって知り合った、というような要らんことを全部省略してるの。
男の子がいなくなっても、探したり葬式したり、そんな場面は出てこない。
変にリアリズムしないところが、上手いよ、こいつ。きざだけど、洒落てる」
(『淀川長治のシネマトーク』より)
北野武が映画界で評価を高めていく過程で、彼の作品の特徴である暴力的な表現を排除した本作は、非常に異質な作品でもありました。
淡々とした変哲のない日常が描かれますが、あくまでも映画的な描写にキラリと光るセンスがありました。
耳の聞こえない男女の恋物語を中心に据える事で、心のつながりを顕著にしました。
他の作品のように、拳銃で瞬間的に死を演出するのではないある種の情緒が本作にはありました。
そういう意味でも主人公には、台詞の要らない映画でした。
淡々とした変哲のない日常が描かれますが、あくまでも映画的な描写にキラリと光るセンスがありました。
耳の聞こえない男女の恋物語を中心に据える事で、心のつながりを顕著にしました。
他の作品のように、拳銃で瞬間的に死を演出するのではないある種の情緒が本作にはありました。
そういう意味でも主人公には、台詞の要らない映画でした。
【トリビア】製作のきっかけは稲村ジェーン!?
実は本作が製作された背景には、ある一つの映画があったと言われています。
それは、サザンオールスターズのボーカルで有名な桑田圭祐が監督した映画『稲村ジェーン』(1990年)。
サーファーの青春を描いた内容で、公開当時主題歌とともに大ヒットしましたが、内容がめちゃくちゃすぎると批評家から散々酷評されました。
北野武も「眠くなる」と酷評し、それに桑田圭祐が「若者の気持ちが理解できていない」と反論。本作はその反論に対しての返礼だと言われています。
サザン・桑田が監督!映画「稲村ジェーン」 湘南を舞台にサーファー達の人間模様が描かれた大ヒット作です! - Middle Edge(ミドルエッジ)
1990年公開の大ヒット映画「稲村ジェーン」。加勢大周のデビュー作とも知られる本作。湘南鎌倉市の稲村ヶ崎を舞台にした波乗りに魅せられた若者の物語です。
桑田とたけしの一件にも触れております。
画像は茂が参加したサーフィン大会からの帰りのフェリー