女性の幽霊と言えば「お岩さん、お菊さん、お露さん」
2022年7月17日 更新

女性の幽霊と言えば「お岩さん、お菊さん、お露さん」

昭和の怪談話と言えば、井戸の中から「うらめしや~」。髪が乱れ、悲しそうに皿を数える女性。そんな怪談話を聞かされたこと思い出しませんか?

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はじめに

子どもの頃、夏の夜の怖い話と言えば「一枚、二枚、三枚・・・」と悲し気にお皿を数える「お菊さん」の話を覚えています。
でも、お菊さんの話を話すことができるかと言えば・・・。できない。

よく似た怪談話って多くなかったですか?その中でも「お菊さん」「お岩さん」「お露さん」が有名で、話しているうちに3話がごちゃ混ぜに。そんな3話をしっかりと回想したいと思います。

「一枚、二枚・・・」皿屋敷

お菊さん

お菊さん

お皿を「いちま~い、にま~い」と数えるシーンが思い出される皿屋敷。各地にこの皿屋敷の話はあり、播州姫路が舞台は「播州皿屋敷」と伝えられ、江戸番町が舞台は「番町皿屋敷」と伝えられています。

皿屋敷の話の原型に、播州を舞台とする話が室町末期の「竹叟夜話(ちくそうやわ)」にあるのですが、皿ではなく盃だったりと一般的な皿屋敷の話とは異なる点があり、皿や井戸が関わる怨み話は、18世紀の初頭頃から、江戸の牛込御門あたりを背景にした話がみうけられます。おそらく1720年に大阪で「皿屋敷」が歌舞伎の演目とされたことにより、全国各地へ話が広まり現在の知り得るところではないかと推測されます。

それでは「播州皿屋敷」よりも「番町皿屋敷」が、より恐ろしいお話ですのでご紹介します。

「番町皿屋敷」・・・
  牛込御門内五番町に火付盗賊改・青山播磨守主膳の屋敷がありました。ここで菊とい
 う下女が奉公しておりました。
  承応二年正月二日、菊は主膳が大事にしていた十枚の皿のうち、1枚を割ってしまい
 ます。怒った奥方は菊を責め、主膳はそれでは手ぬるいと皿一枚の代わりに菊の中指を
 切り落としてしまいました。さらに手打ちにするといって菊を縄で縛り一室に監禁しま
 す。そんな菊は、自ら命を絶つため、縄付きのまま裏の古井戸に身を投げてしまいまし
 た。
  それからまもなく、夜ごとに井戸の底から「いちま~い、にま~い、」と皿を数える
 女の声が屋敷中に響き渡ります。やがて奥方は、右の中指が無いお子を産みました。こ
 の事件は公儀の耳にも入り、主膳は所領を没収されますが、その後も屋敷内で皿数えの
 声が続くというので、公儀は小石川伝通院の了誉上人に鎮魂の読経を依頼します。
  上人は屋敷に出向き読経をしていましたところ、皿を数える声が聞こえてくるではあ
 りませんか。「八ま~い、九ま~い、」と、そこですかさず上人は「十」と付け加えま
 すと、菊の亡霊は「あらうれしや」と言って消え失せた、というお話です。

各地で少しずつ登場人物が変わり、お菊さんの亡くなり方も違います。みなさんが覚えている皿屋敷のお話はどんなお話でしたでしょうか?

1981年フジテレビの「時代劇スペシャル」枠で放映された「傑作怪談シリーズ」の一作目です。青山播磨役に田村正和、お菊役に片平なぎさが出演しています。すこしSFがかった怪談時代劇ですよ。

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1971年7月4日から9月26日まで日本テレビ系列にて放送された怪談時代劇「怪奇十三夜」。全13話あり、1971年7月11日に放送されたのが、中尾彬、津川雅彦、藤田弓子出演の番町皿屋敷でした。

「カラ~ンコロ~ンと下駄の音」牡丹灯篭

怪談話と言えば「牡丹灯篭」と言う方も多いのではないでしょうか。この牡丹灯篭は、1955年に映画化されて以来、何度も映像化されています。

牡丹灯籠(怪談牡丹灯籠)は、明治の落語家である三遊亭圓朝の作品です。原話は中国の「剪灯新話(せんとうしんわ)」が日本に伝わり、江戸中期に怪談集「奇異雑談集」・「伽婢子(おとぎぼうこ)」に翻案され、さらにそのモチーフが「雨月物語」や「復讐奇談安積沼」などの読本、「阿国御前化粧鏡」などの脚本になります。圓朝はこれらに着想を得て「牡丹灯籠」の噺をつくったと考えられています。

では、お話をご紹介します。

「牡丹灯篭」・・・
  根津の清水谷に住む浪人・萩原新三郎は、恋愛に奥手で実直な人物として知られてい
 ました。ある日、新三郎は亀戸へ出かけた帰り、旗本・飯島平左衛門の屋敷へ立ち寄り
 ます。平左衛門の屋敷には平左衛門の妾・お国と一人娘・お露が住んでいました。若い
 新三郎とお露はたちまち恋に落ちてしまいます。
  やがて新三郎が立ち去る日がやってきます。恋人との別れを惜しんだお露は「またお
 顔を拝めなければ死んでしまいます」と泣いて訴え、二人は再会の約束を交わすのでし
 た。しかし、引っ込み思案の新三郎は再訪の覚悟が決まらず、月日は過ぎ去ります。
  
  そんなある日、お露は会いに来ない新三郎を恨み、恋煩いで寝込んだのちに死んでし
 まったのです。また、お米もお露を失った哀しみで死んでしまいます。新三郎はお露を
 偲んで家に籠り読経を続け、盆の十三日の夜半、どこからか涼しげな下駄の音が「カラ
 ~ン、コロ~ン」と響いてきます。こんな夜中に客人かと怪しんで縁側に出た新三郎が
 目の当たりにしたのは、先導するお米がさげた燈篭に浮かび上がる、生前のままに美し
 いお露の姿でした。
お露さんと牡丹の灯篭を持つお米さん

お露さんと牡丹の灯篭を持つお米さん

  死んだお露と再会が叶った新三郎は狂喜し、毎夜毎夜お露と逢瀬を重ねます。
  ところが、新三郎の使用人・伴蔵が目にしたのは、お露とお米の幽霊だったのです。
 主人が幽霊に取り殺されようとしていると案じた伴蔵は、占い師に新三郎を見てもらい
 ます。するとこの占い師は、近日中に彼は死ぬだろうと予言したのです。それを知った
 新三郎は、お坊さんから授かった有難い札を家中に貼り付け、同じく貰った海音如来像
 を体に巻いてお経を上げました。

  その晩もお露とお米は通ってきたものの、お札の効果で屋敷に上がり込めません。そ
 こでお露は伴蔵と妻のお峰が暮らす長屋に赴き、お札をはがしてくれるようにお願いし
 ます。最初はお露に怯えきっていた伴蔵とお峰ですが、お露が多額の金子と引き換えに
 と懇願すると、欲にくらんでお札をはがすと約束してしまったのです。
  翌日二人は、新三郎の海音如来像を粘土製の不動像と交換します。その夜、約束通り
 半蔵のところへ多額の金子を包んでお露がやってきました。大喜びした伴蔵とお峰は、
 屋敷のお札を全部剥がしてしまいます。
  明け方、新三郎を裏切った罪の意識に苛まれた伴蔵は新三郎の様子を見に行きました
 が、すでに遅し。首に乱れ髪のしゃれこうべが巻き付き、新三郎は絶命していたのでし
 た、というお話です。

短編、長編とあるようですが、おおまかなあらすじは、上記のとおりです。

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1968年、山本薩夫監督により映画化された作品。新三郎役に本郷功次郎、お露・赤座美代子、お米・小川真由美となっています。赤座美代子と小川真由美の演技は、背筋がゾクゾクする怖さがあります。

幽霊となり復讐を果たす四谷怪談

主人公・お岩が出てくるのが「四谷怪談」ですね。
元禄時代に起きたとされる事件を基に創作された怪談話で、江戸の雑司ヶ谷四谷町(現・豊島区雑司が谷)が舞台となっています。基本的なストーリーは「貞女・岩が夫・伊右衛門に惨殺され、幽霊となって復讐を果たす」というものなのですが、お岩さんの容姿が醜くなってしまう点などが描きなおされる度に少しずつ違っています。

お岩さんの容姿は、生まれつき・病気・服毒などにより醜くなったとありますが、服毒により容姿が醜くなっていく東海道四谷怪談をご紹介しましょう。

「東海道四谷怪談」・・・
  時は暦応元年、元塩冶家の家臣、四谷左門の娘・お岩は夫である田宮伊右衛門の不行
 状を理由に実家に連れ戻されていました。伊右衛門は左門にお岩との復縁を迫ります
 が、過去の悪事を指摘され、辻斬りの仕業に見せかけ左門を殺害し、時を同じくして、
 お岩の妹・お袖に横恋慕していた薬売り・直助が、お袖の夫・佐藤与茂七を殺害して
 しまいました。二人の亡骸を見つけ嘆くお岩とお袖。伊右衛門と直助は仇を討ってや
 ると言いくるめ、伊右衛門とお岩は復縁し、直助とお袖は同居することとなったので
 す。
  
  田宮家に戻ったお岩ですが、産後の肥立ちが悪く病がちに。そんなお岩を伊右衛門は
 疎ましく思うようになります。そんな折、伊藤喜兵衛という者の孫・梅が伊右衛門に恋
 をし、伊右衛門を婿に望むようになります。伊右衛門は喜兵衛と結託し、お岩と離縁す
 る策を練ります。そんなこととは知らず、喜兵衛から贈られた薬を飲んだお岩。目の周
 りはただれ、髪はズルっと抜け落ちてしまいます。

お岩さんと伊右衛門

お岩さんと伊右衛門


  ひどい姿となったお岩は、伊右衛門と喜兵衛の策を知り、悶え苦しんだあげく、置い
 てあった刀が首に刺さって死んでしまいます。おかげで伊藤家の婿になることが叶った
 伊右衛門。梅との婚礼の晩、ひどい姿となったお岩の亡霊が現れます。錯乱してしまっ
 た伊右衛門は梅と喜兵衛を殺害して逃亡してしまいます。
  
  その頃お袖は、姉のお岩の死を知らされます。直助の手を借りて仇討ちにと思ってい
 た矢先、死んだはずの夫・与茂七が帰ってきたのです。与茂七は妻の不貞を見て、お袖
 を殺害してしまいます。しかし直助からすべての真相を知らされた与茂七は、蛇山の庵
 室でお岩の幽霊と鼠に苦しめられて狂乱している伊右衛門を見つけ、舅・四谷左門と義
 姉・お岩の敵を討ったのでした、 というお話です。

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1956年、毛利正樹監督の映画「四谷怪談」。伊右衛門は若山富三郎、お岩は相馬千恵子。

レビューに「幼い頃、本作品を見て以来、実に60半ばの今でも、この作品の「見せる」コワさのために、まともに鑑賞出来ません。」とあったのですが、自分も同意見でして、おそらくテレビで放映されたものを見たのだと思いますが、とにかくお岩さんがとても怖かったのを記憶しています。

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1959年、中川信夫監督による「東海道四谷怪談」。伊右衛門は天知茂、お岩は若杉嘉津子。

作品説明に『冒頭の移動ワンカット撮影、怪談史上に残る「戸板返し」「髪梳き」、夕日に染まった畳敷きの部屋が隠亡堀に一転する斬殺シーン等、原作を意識しながらも独特の美学、美意識で表現された、日本怪談映画の最高峰。』とありますが、この作品もまた違った怖さがあります。

おしまいに

3話がすっきりと思い出せたところで、最後に見出しの画像のお化けを紹介しておきます。

「柳ばば」というお化けです。1841年に刊行された「絵本百物語」に出てくるお化けで、樹齢千年以上の柳の木が美女に姿を変えて人を惑わしたり、あるときには老婆に姿を変え、道を行き来する人々に声をかけたという話です。日本のみならず中国の書物にも記載が多くみられるのだそうですよ。
 さて、今夏、懐かしい昭和の怪談話はいかがでしょうか。
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