【INXS】世界的成功をおさめたカリスマロックバンドの光と影
2020年2月8日 更新

【INXS】世界的成功をおさめたカリスマロックバンドの光と影

アルバム『Kick(キック)』で世界のミュージックシーンに躍り出た、オーストラリア出身のカリスマロックバンドINXS(インエクセス)。彼らの成功までの道のりとバンドを襲った悲劇を振り返ります。

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INXS誕生

INXS - Underneath the Colours - Amazon.com Music (2166008)

1977年、後にオーストラリアから世界に羽ばたいたカリスマロックバンドINXSが誕生しました。結成当時はThe Farriss Borthers(ザ・ファリス・ブラザーズ)として、シドニーのライブハウスを拠点に音楽活動を開始しました。

メンバー
バンド結成当時のメンバーは、ベーシストのGarry Beers(ゲイリー・ビアーズ)・キーボードと作曲を担当するAndrew (アンドリュー)・ドラマーのJon(ジョン)・ギタリストのTim(ティム)のFarriss(ファリス)兄弟・ギターとサックス担当のKirk Pengilly(カーク・ペンギリ)そしてリードシンガーのMichael Huchence(マイケル・ハッチェンス)の6人。

ファリス兄弟とその友人たちで構成されたバンドは、78年にアンドリューとマイケルの二人がハイスクールを卒業すると、プロのミュージシャン目指してデモテープの制作にとりかかりました。

Midnight Oil(ミッドナイト・オイル)との出会い
デモテープの制作とパブやライブハウスでのギグに明け暮れる彼らに、チャンスが訪れました。パプ「Narrabeen Antler(ナラビーン・アントラー)」でのギグを終えた彼らに一人の男が声をかけてきました。男の名前はGary Morris(ゲイリー・モリス)。ゲイリーは、当時オーストラリア国内で人気急上昇中だったロックバンドMidnight Oil(ミッドナイト・オイル)のマネージャーでした。

この出会いを機に、彼らはMidnight Oilの前座としてステージに立つようになりました。INXSというバンド名は、Midnight Oilのメンバーからの提案だったといいます。

Chris Maurphy(クリス・マーフィー)
INXSとしてパブでのギグを精力的に行っていた彼らは、Chris Murphyをバンドマネージャーとして迎え入れます。卓越したビジネスセンスを持つクリスは、INXSにシドニーベースのインディペンデントレーベルDeluxe Records(デラックス・レコーズ)との契約という一大事をもたらしました。

82年になると、クリスは方向性の違いを理由にレコード会社を移籍し、INXSの海外進出に向けて準備を開始しました。翌83年、INXS4枚目のシングルとなる『The One Thing(ザ・ワン・シング)』は、日本・北米・ヨーロッパ・東南アジアでリリースされ、INXSは、Stray Cats(ストレイ・キャッツ)やHall&Oats(ホール・アンド・オーツ)といったトップ・アーティストの前座としてステージに立つチャンスを得ました。

ロックバンドINXS
アメリカを中心に活動するようになったINXSに新たな転機が訪れました。当時大ヒットしていたDavid Bowie(デビッド・ボウイ)の『Let‘s Dance(レッツ・ダンス)』をはじめ、数々のヒット曲を生み出した、売れっ子プロデューサーNile Rogers(ナイル・ロジャース)が彼らに興味を示しました。ナイルがプロデュースしたシングル『Original Sin(オリジナル・シン)』は、バンド初となる全豪チャートNo.1を記録、音楽評論家の間でも高く評価される楽曲となりました。

ロックバンドへの転換を目指していたINXSは、次作のプロデューサーとして、Sex Pistols(セックス・ピストルズ)やPink Floyd(ピンク・フロイド)といった名だたるロックバンドのプロデュースを手掛けた、Chris Thomas(クリス・トーマス)を迎えました。1985年にクリスのプロデュースで製作された、INXSの5thアルバム『Listenn Like Thieves(リッスン・ライク・シーヴス)』がリリースされ、シングルカットされた『What You Need(ワット・ユー・ニード)』が全米チャート5位を記録する大ヒット。INXSは世界のミュージックシーンに躍り出ました。

アルバム「Kick』がもたらしたもの

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『What You Need』の大ヒットを受け、次のアルバムもロック色の強いものにするべく、再度クリス・トーマスをプロデューサーとして迎えました。「収録曲全てがチャートインするようなアルバム」を目指して製作されたというアルバム『Kick』は、1987年にリリースされて以来、現在までに2,000万枚を超えるセールスを記録。INXSを、そして時代を彩る一枚となりました。

『Kick』からは、全米チャートNo.1に輝いた『Need You Tonight(ニード・ユー・トゥナイト)』を含む5曲がリリースされ、どの楽曲も全米・全英・全豪チャートなどで上位にランクイン。INXSは世界のトップアーティストの仲間入りを果たし、アルバムのヒットを受けて敢行したワールドツアーでは、どの会場にも隙間なく埋め尽くしたファンの歓声が響き渡りました。

その後もINXSの快進撃は続き、90年に発売されたアルバム『X(エックス)』も世界のメジャーチャートのトップにランクインし。INXSの人気を不動のものにしました。特にリードボーカルのマイケルは、「世界で最もセクシーな男」と称されるようになり、数々のセレブレティーとのロマンスが大きくメディアで取り上げられるようになりました。

マイケルとの別れ

Mystify Michael Hutchence: Richard Lowenstein, Michael Hutchence: Amazon.com.au: Movies & TV Shows (2166011)

カリスマロックバンドと呼ばれるようになったINXSは、92年に『Welcome to Wherever You Are(ウェルカム・トゥ・ウェアエヴァー・ユー・アー)』、93年に『Full Moon,Dirty Hearts(フル・ムーン,ダーティー・ハーツ』を、そして97年に『Elegantly Wasted(エレガントリー・ウェイステッド)』の3枚のアルバムをリリースしましたが、『Kick』や『X』のような成果をおさめるには至りませんでした。バンドとしての活動に翳りが見えはじめても、マイケルの「セクシーなスター」というイメージは変わることはありませんでした。

『Eleganntly Wasted』の制作を前に、マイケルに彼の人生を大きく左右することになる新たな出会いが訪れました。イギリスのテレビプレゼンターとして活躍していたPaula Yates(ポーラ・イェーツ)との出会いでした。ポーラが司会を務めたインタビュー番組にゲストとして出演したマイケルに、ポーラが一目惚れしたといいます。ポーラは当時エチオピアの飢餓救済プロジェクトBand Aid(バンド・エイド)を立ち上げたことで、一躍時の人となったBob Geldof(ボブ・ゲルドフ)の妻であり、ボブとの間に生まれた3人の娘たちの母としても知られていました。しかし妻であり、母であったはずのポーラはボブの元を去り、マイケルと生きる道を選択。マイケル・ポーラ・ボブの三角関係は、メディアで大きく取り上げられました。

マイケルとの暮らしが始まり、ポーラはボブとの離婚を希望しました。しかし子供達の親権を巡ってポーラとボブは壮絶な争いを繰り広げ、マイケルも矢面に立たされるようになっていきました。

ポーラの離婚が成立したのと時を同じくして、マイケルはポーラの体に自分の子供が宿ったことを知りました。96年、二人は生まれてきた女の子にHeavenly Hiraani Tiger Lily Hutchence (ヘヴンリー・ヒラーニ・タイガー・リリー・ハッチェンス)と名付けました。マイケルはタイガーの誕生を心から喜び、彼女を愛したといいます。

愛娘タイガーが生まれてからわずか1年足らずで、マイケルはポーラもタイガーもいない世界に一人旅立ちました。97年11月22日、マイケルは滞在していたシドニーのホテルで遺体となって発見されました。死因は薬物の過剰摂取による自殺。ポーラはマイケルの死を受け入れられず、自らも自殺を図ったといいます。そしてこれがきっかけとなり、ボブとの3人の子供達の親権はボブに委ねられ、失意のどん底にいたポーラはどんどん薬物に依存していきました。そして2000年、ポーラもまた薬物の過剰摂取により逝去。彼女の死は事故だったとされています。両親亡き後タイガーは、なんとボブが養子として他の3人の子供達と一緒に育てることになりました。

マイケル・ハッチェンス 享年37歳。マイケルの死は、あまりにも早く、そして突然訪れました。

マイケルのいないINXS

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マイケルの突然の訃報を耳にした多くのファンや音楽関係者は「マイケルのいないINXSに存在価値はあるのか」と、考えたのではないでしょうか。

マイケルの死後、1年に及びINXSはバンド活動を停止し、その後の2年間は、オーストラリアの人気ロックシンガーJimmy Barnes(ジミー・バーンズ)やアメリカのポップアーティストTerence Trent D'Arby(テレンス・トレント・ダービー)をリードシンガーに迎えて、単発のコンサートには出演しました。そして2000年、Jon Stevens(ジョン・スティーヴンス)をリードシンガーとして迎え、INXSは本格的に音楽活動を再開。2005年にはJD Fortune(JD・フォーチュン)、2011年にはCiarann Gribbinn(キアラン・グリッビン)がリードシンガーを務めて活動を続けていたものの、2012年にINXSは活動中止を発表しました。

INXSというバンドにとって、マイケルは唯一無二のリードシンガーだったのではないでしょうか。

まとめ

マイケルの死後12年が経った2019年、マイケルの人生を綴ったドキュメンタリー『Mystify: A Musical Journey with Michael Hutchence(ミスティファイ:ア・ミュージカル・ジャーニー・ウィズ・マイケル・ハッチェンス』がリリースされ話題になりました。生前マイケルと親交のあったスターたちのマイケルとの思い出話が詰まっているといいます。
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