「片腕ドラゴン」が俺たちに教えてくれた、映画の素晴らしさ&トラウマ体験! 格闘ゲームの世界を先取りした、その素晴らし過ぎる敵キャラとは?
2017年6月3日 更新

「片腕ドラゴン」が俺たちに教えてくれた、映画の素晴らしさ&トラウマ体験! 格闘ゲームの世界を先取りした、その素晴らし過ぎる敵キャラとは?

、1974年の空前のカンフー映画ブームにいち早く登場し、当時の少年たちにトラウマを植え付けた伝説のカンフー映画「片腕ドラゴン」と、主演のジミー・ウォング大先生の存在を忘れてはいけない!

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我々ミドルエッジ世代にとって、「思い出のカンフー映画スター」と言えば、ブルースリーにジャッキーチェン!いや、人によってはサモ・ハンやユン・ピョウの名前を挙げる方もいるはずだ。
しかし、1974年の空前のカンフー映画ブームにいち早く登場し、当時の少年たちにトラウマを植え付けた伝説のカンフー映画「片腕ドラゴン」と、主演のジミー・ウォング大先生の存在を忘れてはいけない!
そう、本作こそ日本にカンフー映画の素晴らしさと、「面白ければ何でもアリ!」精神を教えてくれた、記念碑的作品なのだ!

「片腕ドラゴン」が公開された1974年、その時代背景とは?

公開当時の新聞広告:タイプA

公開当時の新聞広告:タイプA

「ドラゴン最新作!」や、「ポスト・ブルースリーの本命」の宣伝文が示す通り、ワーナーの「燃えよドラゴン」大ヒットの勢いに乗った宣伝戦略が取られていたことが判る。
via 滝口アキラ
本作が日本で劇場公開されたのは、ブルース・リーの「燃えよドラゴン」が前年の12月に公開され、日本がカンフー映画ブームに沸く真っ只中の1974年の2月のこと。
既に邦画系では、2月2日より千葉真一主演の国産カラテ映画「激突!殺人拳」が公開されていたが、年が明けてもまだ続映中の「燃えよドラゴン」に続く、外国産カンフー映画は未だ公開されておらず、映画ファンのカンフー映画に対する渇望は頂点に達していた。

そこに満を持して公開されたのが、この「片腕ドラゴン」だ!写真でもお分かりの通り、迫力満点のビジュアルと、どこかいかがわしさ漂う「片腕」というキラーワード。
「燃えよドラゴン」の夢よもう一度!当時の観客は、期待度MAXで劇場に駆けつけたのだった。
公開当時の新聞広告:タイプB

公開当時の新聞広告:タイプB

こちらは敢えて、宣伝文を手書き文字風のフォントに変更。
via 滝口アキラ
当時の新聞広告から読み取れるのは、上映劇場が明らかに「燃えよドラゴン」よりも良い条件の映画館であったということ。
実際、本作は2月8日から35日間ロードショー公開され、観客動員は121476人、興業収入が約1億円という、「ドラゴン危機一発」が公開されるまでの間に日本公開された、他の香港カンフー映画作品の中でも、抜群に高い興業成績を上げている。
千葉真一主演作と「片腕ドラゴン」、2月に公開されたこの2作品のヒットを受け、いよいよ3月以降、日本中の映画館がドラゴン映画一色に染まって行くのだが、それはまた別の機会に詳しく紹介することにしよう。

奇跡の映画、「片腕ドラゴン」とは?

「片腕ドラゴン」本編OPより。

「片腕ドラゴン」本編OPより。

新聞広告やポスターにも使用された飛び蹴りシーンから始まる、このタイトルバック。
テーマ曲は英語版・北京語版で異なるが、マカロニウエスタンを思わせるこのタイトル部分だけで、当時の観客は期待に燃えたのだ!
ジミー・ウォング大先生が、独立にまつわるトラブルで自身の当たり役、「片腕必殺剣」シリーズのキャラ使用が出来なくなったため、己の再起をかけて「片腕必殺剣」での片腕の剣豪の設定を、そのままカンフー映画に流用した、問題作にして起死回生の大傑作!
それがこの、ミドルエッジ世代の永遠のバイブルとも言える傑作カンフー映画、「片腕ドラゴン」だ!

片腕のヒーロー!この設定に子供心に何かワクワクしたものを感じ、期待に胸膨らませて劇場に駆けつけた友達が大勢いたのを覚えている。
しかし、当時の観客がそこで眼にした物とは・・・。
それは、余りにも「燃えよドラゴン」とはかけ離れた内容とクオリティ。しかし、面白さとサービス精神だけは「燃えよドラゴン」に匹敵する作品だった。何より本作に登場する敵キャラの、バラエティ豊かな顔ぶれと言ったら!
劇場パンフより、敵の格闘家軍団の紹介。

劇場パンフより、敵の格闘家軍団の紹介。

世界中から集まった強豪だけに、そのビジュアルのインパクトも凄い!
via 滝口アキラ
日本、タイ、インド、韓国、チベット。世界各国から終結した、敵の格闘家軍団のムチャクチャな面子は、正に後の「ストⅡ」の世界観を先取りした物だと言えるし、片腕というハンデイキャップを負った主人公の設定は、日本の「丹下左膳」や「座頭市」を彷彿させる。
実際ジミーウォング自身も、勝新太郎主演の座頭市シリーズ中の1本「破れ唐人剣」に出演している。
「破れ!唐人剣」公開時の新聞記事。

「破れ!唐人剣」公開時の新聞記事。

掲載されたのは、1970年12月8日のスポーツニッポン誌。
この映像が放送されたのは、毎日テレビ「スターものまね大合戦・勝新太郎ショー」の中でのこと。
当時大映スタジオで撮影中だった本作のプロモを兼ねて、映画の中のアクションを再現披露したそうだ。
via 滝口アキラ
「片腕ドラゴン」公開時のジミー・ウォング来日記事。

「片腕ドラゴン」公開時のジミー・ウォング来日記事。

掲載されたのは、1974年2月2日の報知新聞。
すでにカンフー映画ブームの衰退期を迎えていた香港と、新たにカンフー映画ブームを迎えた日本との温度差について、かなり厳しい見通しの内容を報じている。
この記事によれば、ジミー・ウォングはテレビに出演して、カンフーの技を披露したとのこと。
via 滝口アキラ
本作の日本公開に際しては、主演のジミー・ウォングも来日して、舞台挨拶やプロモーションのために全国各地を回るなど、今から考えると非常に羨ましい状況が展開していたことが、当時の新聞記事から読み取れる。

「燃えよドラゴン」に続いて公開されたため、当時まだ香港映画のエネルギーに免疫の無かった日本の映画ファンの間では、未だに伝説の作品となっている本作。
とにかくそのサービス精神と、ジミー大先生の「ここで観客たちを満足させないと、俺にはもう後が無い!」感満載の熱量には、当時劇場で鑑賞した関根勉が、あまりの面白さに感動したとの伝説が生まれたほど!

格闘ゲームを先取り!これが片腕ドラゴンに登場する敵キャラたちだ

世界各国から集結した個性豊かな武道家たち。その顔ぶれは正に「超人オリンピック」状態!
韓国テコンドーの達人、キム・チー・ヨン!

韓国テコンドーの達人、キム・チー・ヨン!

服装的に、いまいち日本との区別が付き難い・・・。
なんと瓶ビールの栓を抜かず、ボトルの先を歯で食いちぎる、ワイルドさ!
via 「片腕ドラゴン」コレクターズ・エディション より
柔道の達人、高橋と、ヨガの達人、モナ・シン!

柔道の達人、高橋と、ヨガの達人、モナ・シン!

敵の強烈過ぎる面子の中では、一番マトモそうな高橋。
ヨガの達人のモナの、いかにも胡散臭そうな外見と対照的だ。
インドのヨガの達人は好評だったらしく、姉妹編の「片腕カンフー対空飛ぶギロチン」にも登場する。
via 「片腕ドラゴン」コレクターズ・エディション より
タイのキックボクサー兄弟&チベットのラマ僧ペア!

タイのキックボクサー兄弟&チベットのラマ僧ペア!

2人がかり、という時点で、既に本作の「何でもアリ」感が強く感じられる。
同じく姉妹編の「片腕カンフー対空飛ぶギロチン」にも、ラマ僧は重要な悪役として登場する。
via 「片腕ドラゴン」コレクターズ・エディション より
本作最凶の悪役、沖縄空手の二谷太郎!

本作最凶の悪役、沖縄空手の二谷太郎!

このアップでもちょっと判る通り、実はこの男、キバが生えている!
特に噛み付き攻撃をするわけでも無いのだが・・・
via 「片腕ドラゴン」コレクターズ・エディション より
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