1997年カンヌ映画祭で物議を醸したサイコ映画『ファニーゲーム』暴力シーンを”描かずに描いた”問題作
2018年8月13日 更新

1997年カンヌ映画祭で物議を醸したサイコ映画『ファニーゲーム』暴力シーンを”描かずに描いた”問題作

1997年のサイコホラー映画『ファニーゲーム』。ミヒャエル・ハネケ監督が暴力の蔓延する映画界に疑問を投げかけた問題作です。1997年のカンヌ映画祭では物議を醸しロンドンでは、ビデオの発禁を求める運動が起こったとされています。

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1997年の問題作!サイコホラー映画『ファニーゲーム』

1997年のサイコホラー映画『ファニーゲーム』。
ある一家が、徐々に追い詰められていく様子が描かれた作品です。

同作の特徴として、残忍で狂気に満ちたシーンが多く、観る者に不快感を与えました。また、台詞やカメラワークなど、他の映画とは一線を画す表現が多かった点が挙げられます。
映画『ファニーゲーム』

映画『ファニーゲーム』

別荘で休暇を楽しむ家族のほのぼのとした団らんが、犯人達の登場により惨劇の場に変わりますが、両者の初対面からしばらくの間は、ごくごく日常的な会話が交わされていました。

卵を拝借しに来た隣人である犯人。そして、それに気さくに応える被害者。卵をあげる側ともらう側。一見、何でもないやりとりですが、いつの間にか立場が逆転していきます。

日常的にありえるシチュエーションを出発点としている点が、追い詰める側と追い詰められる側の構図にリアリティを与えました。

映画『ファニーゲーム』 あらすじ

ショーバー一家は、ある夏の午後、湖付近にある別荘へ休暇を満喫する為、車で向かう。
家族構成は主のゲオルグ、妻のアナ、そして息子のショルシと愛犬のロルフィーである。

途中、ベーリンガー一家の別荘の前で、庭にいた彼らに声を掛けるが、普段とは違いよそよそしい態度で挨拶を返される。そこには見知らぬ青年二人がいたが、アナはベーリンガー一家の態度に腹を立て、愚痴を言う。

その後、別荘に着き、台所で夕食の支度をするアナの元を、ベーリンガー邸にいた青年が訪れる。
別荘のイメージ

別荘のイメージ

青年二人組の一人が「ベーリンガー婦人は今お料理をしていますが、卵がなくなってしまったようです。ご迷惑ですが、4個くらいもらえたら大変ありがたいんです...」と申し訳なさそうに話し掛けてきた。

アナは仕方ないわねといった様子で、卵をその青年ペーターに渡す。しかし、ペーターは手を滑らせて卵を割ってしまう、さらにはアナの携帯電話を水の中に落とす。それに対して、怒りの表情を見せるアナだが、ペーターは当たり前のように代わりの卵を要求してくる。

ますます苛つくアナ。さらにもう一人の青年パウルが半ば強引にゴルフクラブを手に取り、外で試し打ちをしたいと出て行ってしまう。
割れた生卵のイメージ

割れた生卵のイメージ

ボートにいたゲオルグと息子のショルシは、屋外で激しく鳴く愛犬に異様な雰囲気を感じていた。すると突然泣き止んだ愛犬の危機を感じ、ゲオルグがボートを降りて、自宅方向へと向かう。

自宅に戻ると、アナがヒステリックに叫び声を上げ、青年二人を追い出そうとしていた。アナを落ち着かせようとするが、一向に収まらない。
妻の言葉を信じ、青年に帰宅を命じると、あまりにふてぶてしい態度を取る。ゲオルグはパウルに思わず平手打ちをしてしまう。
愛犬のイメージ

愛犬のイメージ

すると、パウルはゴルフクラブでゲオルグの脚を殴りつける。痛みに耐えられずもがくゲオルグ。
アナとショルシが制止するが、一家は全員ソファーに縛り付けられる事となる。

二人はさも慣れたように、部屋でくつろぎ始める。夜になると、2人は一家にある提案をする。「明日の朝まで君たちが生きていられるか賭けをしないか?」と。

こうして一家は青年達の操る『ファニーゲーム』に強制参加させられる事となった・・・。
ゴルフクラブのイメージ

ゴルフクラブのイメージ

メタ表現、暴力を想像させる描写など特徴的な演出方法

同作では、犯人の青年が時折画面に向けて話掛けてきます。その場には居ない私達観客に対して、ウィンクをしたりと所謂メタ的な表現を行います。

さらに、犯人ペーターが、妻アナの機転によって殺されるシーンがあります。しかし、仲間を失ったパウルはリモコンを手に取り「巻き戻し」ボタンを押します。すると、映画の画面が巻き戻され、ペーターが殺される直前のシーンに戻り、危険を回避する事が出来ました。
リモコンのイメージ

リモコンのイメージ

さらに劇中、パウルが「虚構が現実のように見えれば、それは現実になる」と台詞を吐きます。登場人物を通して、フィクションである映画でさえ現実であると宣言するのです。
その台詞で伝えたかったのは、「理不尽な暴力への反抗」ではないでしょうか。

劇中の多くの時間を暴力が支配しますが、実際にはそういった描写は映し出されず、殴ったであろう効果音などを用いて、想像を鑑賞者に委ねます。
悲劇的な状況を踏まえた上で、鑑賞者に想像の余地を与える事で、暴力をより際立たせています。

そうした表現の裏には、「ハリウッド映画は暴力を快楽の道具につかっている」とするミヒャエル・ハネケ監督が、映画界に警鐘を鳴らす意図があったと言われています。
ミヒャエル・ハネケ監督

ミヒャエル・ハネケ監督

1997年に公開された同作の日本公開は2001年でした。その際のキャッチコピーは「人間が一番怖い」で、暴力をテーマにした同作の本質を的確に捉えています。

1997年カンヌ映画祭で物議を醸したサイコ映画『ファニーゲーム』

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