全女子の心を射止めた「日下部まろん」
少女漫画雑誌「りぼん」で当時掲載されていた漫画の中でも、ダントツの人気を誇った「神風怪盗ジャンヌ」の主人公こと日下部まろん。女子高生の彼女は、成績優秀で眉目秀麗、スタイルも抜群。男子にもモテモテで、おまけに新体操部のエースという、全女子が憧れてしまう非の打ちどころのないキャラクターです。作者の種村有菜先生はどの作品でも主人公愛が非常に強いのですが、特にこの作品でのヒーロー、ヒロイン至上主義は色濃く感じられますね。
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まろんは仕事で忙しい両親とはなれてずっと一人暮らしをしています。平凡な日常の傍ら、実はジャンヌ・ダルクの生まれ変わりであり、そして「怪盗ジャンヌ」として美術品に潜む悪魔を回収し、神の力を取り戻すという使命を担っています。なんだか女子小学生には少し難しい題材のようですが、実際の歴史上の出来事には沿わずきちんと興味を引くようにデフォルメしてあり、しっかりイケメンヒーロー・名古屋稚空との恋愛も絡んでくるので問題ありません。
何と言っても作画がすごすぎる
この漫画の魅力は何と言ってもその絵柄。他に類を見ない豪華絢爛、非常に繊細で細部まで書き込まれた原稿に、幼い私は目を輝かせて読み進めました。特にカラーの扉絵には毎月わくわくしたものです。扉絵をきれいにちぎり、ファイリングしてコレクションしていた人は少なくないはず・・・。当時小学生ながら、単純に作画の技術が他作品と比べてもずば抜けているんだなあと感じたものです。
種村先生のファンは多く、原画展などでも細部へのこだわりに驚かされるとの声が寄せられました。またアナログ主義の種村先生。最近の作品ではデジタルを用いたものもあるようですが、どこまでもアナログで自分の手で描くことにこだわっているようです。素晴らしいですね。
女子小中学生にはちょっと過激?!
まろんはだんだんとヒーロー・名古屋稚空に惹かれていきます。しかし彼の正体はジャンヌの敵である怪盗シンドバッド。彼がまろんに近づく目的は、まろんにジャンヌを辞めさせることでした。しかしまろんの愛らしさ、ひたむきさ、時折見せる弱さに次第に惹かれていき、二人が相思相愛となるのに時間はかかりません。イケメンでプレイボーイ、常にハーレムの中にいる彼に好かれるという夢のような図式も、また当時の女子の心をつかみます。
惚れた腫れただけで終わらないのが有菜ワールド。前世でのジャンヌの恋人ノイン・クロードの生まれ変わり、紫界堂聖(まろんの通う高校の教師)との濃厚な絡みや、終盤では稚空とのベッドシーンも。当時のりぼん掲載漫画の作中ではなかなか見られないシーンで、ドキドキしましたよね。それでももちろん少女漫画らしく、聖なる雰囲気を保ちながらの描写にはなります。話の流れ的にも過度なラブシーンなしでよかったんじゃないか?とは思いますが、個人的には種村先生が「どうしてもこの可愛い主人公を男と絡ませたい」という意志があって組み込んだのではないかなと感じました。
信頼する相棒・フィンの裏切り
ラストに向かって大きく影響してくる存在、天使のフィン・フィッシュ。常にまろん・ジャンヌどちらの姿の時も隣にいる、相棒的存在です。神からの使いとしてジャンヌを支え続けましたが、実際には魔王から遣わされた堕天使であることが分かったのです。彼女の裏切りによってジャンヌへ変身することができなくなったまろんは自暴自棄に陥ります。変身する際に必ず必要なロザリオは石化してしまい、ある日フィンの手によってマンションのベランダから投げ落とされてしまいます。それを追って飛び降りたまろんは意識を失い、中世フランス、いよいよ前世であるジャンヌ・ダルクと対峙することに・・・。
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魔王との最終決戦時に自らの身を差し出してまろんを守ったフィンは、消滅はしてしまいますが7年後に稚空とまろんの間に生まれた子として転生を果たします。これがまた幸せな結末でうれしいんですよね。
「一人の不幸な女の子を幸せにしたい」
種村有菜先生のこの作品にかける思いは「同じ世界に住む、不幸な一人の女の子を幸せにしてあげたい」というものだったそうです。ジャンヌダルクの生まれ変わりという壮大なテーマをかかげ、弱くてひとりぼっちの女の子がだんだんと強くたくましく成長していく。怪盗セイント・テールが起こした怪盗モノブームにうまく乗り、実際それ以上の人気を誇ったのは言うまでもありません。また「悪魔を回収する」というセーラームーンを彷彿とさせるストーリーも手伝って、今でもなお語り継がれる名作となりました。
あまりにも完璧で周りに愛されすぎて、嫉妬からまろんのことが嫌いと言う女子の声も当時は多く聞きました(笑)それぐらい心に残る作品だったのですね。久しぶりに読み返してみたくなったでしょうか?有菜っちの至高のファタジー、再度ご堪能あれ。
あまりにも完璧で周りに愛されすぎて、嫉妬からまろんのことが嫌いと言う女子の声も当時は多く聞きました(笑)それぐらい心に残る作品だったのですね。久しぶりに読み返してみたくなったでしょうか?有菜っちの至高のファタジー、再度ご堪能あれ。
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