漫画「家栽の人」 裁判官・桑田は植物を愛し、罪を犯した少年達へも優しい眼差しで接していましたね。
2016年3月28日 更新

漫画「家栽の人」 裁判官・桑田は植物を愛し、罪を犯した少年達へも優しい眼差しで接していましたね。

小学館・ビッグコミックオリジナルに連載されていた漫画「家栽の人」。裁判官が主人公ですが、法廷闘争や事件の謎解きが描かれる訳ではありませんでした。人間の本質や尊厳に対して問いかける内容で、多くの感動を生みました。

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涙する院長。

院長は何度も全国各地へ「飛ばされている」。
転校の繰り返しに不満を持つ息子。
上司に問題の件で叱責され、晩酌しながら自分の信念が理解されない事を嘆く院長。

その様子を見て「(父親は)進歩がないよ・・・どうして、あんな思いしてまでつっぱるのかな。」と息子。
しかし、桑田は院長が心配しなければ、新しく入所した少年達はどういった気持ちで過ごすのかと諭す。
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院長の転勤に全く動じない奥さん。
何事もポジティブに捉える奥さんに支えられている院長。
院長は「来年あたり、どこかへ飛ばされるかもしれん・・・」と奥さんに伝えるが、「どこだってかまいませんよ。慣れてますから。」と奥さん。
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段ボール箱の中には「ヒトリシズカ」の鉢植えが入っていた。

「ヒトリシズカ」の特徴
・寒い地方や暖かい地方などに関係なく、どこでも育てることが出来る。
・ヒトリシズカという名前に反して、株はどんどん増えいく。「理解者」が増えていくようにと連想できる。
息子が桑田から預かってきた「ヒトリシズカ」を見て、院長がポツリと一言。
「あいつめ・・・僕が落ち込むたびに、これを持って来る・・・」

「逃走」が起こる度に鉢植えをもらっていて、今回で10鉢目である事に気付く院長。
「まあ!」と拍手する奥さん。

その後、「う~ん」と唸る院長「我ながら、こんなにとは思わなかった。」
「人に歴史あり!」とまたまた奥さん(笑)

そして、息子が「馬鹿じゃないの、この夫婦・・・」と呆れ顔で心で呟き、物語が終わる。

原作者・毛利甚八という人物

ノンフィクション作家、漫画原作者、写真家。

1958年、長崎県佐世保市生まれ。2015年11月21日、死去。

日本大学芸術学部卒。大学卒業後からフリーライターとして「ナンバー」「BE-PAL」「サライ」などでルポやインタビューを手がける。1986年より漫画「家栽の人」の原作を手掛ける。

漫画原作作品に「家栽の人」(小学館)、「地の子(つちのこ)」(集英社)など。

その他の著作に、ルポルタージュ「宮本常一を歩く」(小学館)、インタビュー集「裁判官のかたち」(現代人文社)などがある。
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「家栽の人」以降も「少年の更生」に関して、意欲的に活動をされていた毛利甚八さん
ルポライターとして民俗学者、宮本常一さんの足跡を追う一方、2001年に豊後高田市(大分県)に移住。
篤志面接委員として地元の少年院でウクレレを教えながら、毎日新聞で少年問題に関する「さかさメガネ子ども論」や「育ち直しの歌」(西部本社版)などのエッセーを連載。
少年事件の厳罰化の流れに反対し、少年院などを通した更生の可能性を発信し続けていらっしゃいました。

2012年10月から2015年4月まで、サンデー毎日に掲載された、
商店街を舞台にした漫画「のぞみ」の原作も担当。

2015年10月には、故郷の佐世保市で昨年7月に起こった高1同級生殺害事件に関する著書「『家栽の人』から君への遺言」を出版され、末期がんにかかっていることを明かされており、2015年11月21日、食道ガンでお亡くなりになりました。

「家栽の人」から君への遺言 佐世保高一同級生殺害事件と少年法:Amazon.co.jp

1512(Kindle版) ※価格は変動することがありますので、随時販売サイトにてご確認ください。
毛利 甚八 (著)
講談社 2015/10/14発売

桑田判事のような性格

絶筆となった『「家栽の人」から君への遺言』(講談社)の担当編集を務めた井上威朗さんも言う。

「穏やかな方で、取材対象者とぼんやり世間話をし始めるんです。
『今日は、いい天気で釣りができますね』みたいな感じで。本当に桑田判事のような性格でした。

そのうえで単刀直入に『非行少年を雇って怖くないですか』『お金を盗まれたりするんでしょうか』など質問をあびせ、更生をサポートする人たちに食い込んでいきましたよ」
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2006年頃。
手にしているのは日弁連の裁判員漫画。
「家栽の人」はこれまで三度ドラマ化もされています。片岡鶴太郎や時任三郎が桑田を演じました。
内容は好評で、大貫妙子の主題歌「春の手紙」も非常にマッチしていましたね。

原作の桑田は、非常に優しい人物でしたが、怒っている時が少し怖かったですね。
激高するのではなく、静かに相手の甘えや偏見を諭します。登場人物は一様に己の過ちに気付き、反省します。
そこに社会の「少年犯罪」への無理解といった現状が表出し、物語で伝えたいテーマがより明確になりました。
読者もハッと気付かされる事も多かったのではないでしょうか。

原作者の毛利甚八さんが亡くなり、もう続編は期待できませんが、再度「家栽の人」を読み返すことで「隠れた名言」を発見出来るかも知れませんね。
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