ドラマ化もされた漫画「家栽の人」
魚戸おさむ作画、毛利甚八原作による漫画作品。
家庭裁判所の裁判官が裁判所に持ち込まれるさまざまな人間模様を暖かく見つめる物語。
『ビッグコミックオリジナル』1988年~1996年に連載。小学館ビッグコミックス全15巻。
1993年TBS系列で連続ドラマが、1996年と2004年スペシャルドラマが放映された。タイトルの「栽」は誤記ではなく、植物を愛する主人公のキャラクターにちなむもの。
via gakushumanga.jp
人間の本質に迫った名作
問題を起こして家庭裁判所に送られてくる少年少女に、土いじりの好きな桑田義雄判事が、草木を育てるように愛情を込めて接し、更生を促すストーリーだ。96年1月まで続いた。
バブルに浮かれる日本社会にメスを入れる作品として話題になり、法曹界にも多くのファンを獲得した。
人間の「生き方」に触れる物語
主人公は植物好きの裁判官
この人、お父さんは最高裁判所の長官で、自身は22歳で司法試験合格、司法修習生時代の成績抜群、実務面もその優秀さから既に最高裁からお呼びがかかるというスーパーエリート裁判官ながら、一切の出世を拒否し、自ら地方の家庭裁判所に身を置く道を選び、まわりからは変人と見られています。
さらに、彼は変人と見られる要素がもう一つあります。彼はありとあらゆる草花に精通し、昼休みも寸暇を惜しんで園芸に精を出すくらい、大好きな草花と過ごす時間を何よりも大切にしています(ある意味仕事よりも)。今の時代なら、植物オタクとでも呼ばれていたでしょう。
しかし、彼は、言葉を発しない草花達のはかなく、たくましく生きていく姿に、家族のあるべき姿のヒントを見出しています。
そして、犯罪を犯した少年や、崩壊寸前の夫婦や兄弟に対峙する際、ときにそんな草花の姿をひきあいにだしながら、家族であることの本質を考えさせていくのです(各話のタイトルには植物の名前がついている)。
via blogs.c.yimg.jp
珠玉の言葉たち
調査官が担当の少年を憎いと感じてしまったという相談に対して主人公はこう言っている。
「憎ければ、憎めばいいじゃないですか。愛だけで憎しみを消すことはできませんから。」・・・。
その意味は調査官が親身になって関わった少年が、その信頼を裏切る行動を繰り返すとき、調査官がその少年に憎しみを感じてしまう自分の心を否定して悩む必要はない、という意味である。本当に必要なのは、そういう自己否定ではなく、その憎しみを持つ自分自身の心さえ受け入れて、それを超える大人の知恵を探すこと、だとしている。
「どんなに長い処分を与えても、少年は社会に戻ってくるんです誰かの隣に住むんですよ。
そのときに彼が笑って暮らせる可能性を探すのが私たち裁判官の仕事じゃないでしょうか?」
「街が少年達を育てないで誰が育てるんですか?」
桑田の贈り物が心温まる物語 「ヒトリシズカ」
via f.st-hatena.com
ある少年院で、脱走事件が発生。
大きな問題になり、新聞でも報道される。
主人公・桑田は、そのニュース記事が掲載された新聞を持って電車に乗り、どこかへ向かう。
桑田の傍らには段ボール箱。
大きな問題になり、新聞でも報道される。
主人公・桑田は、そのニュース記事が掲載された新聞を持って電車に乗り、どこかへ向かう。
桑田の傍らには段ボール箱。
少年院での、脱走事件の発生に繋がったような外出行事などは、院長の裁量によって決められるのだそうだ。
ここの院長は、見てわかるように人情家かつ剛腹で、こういう行事を積極的にやってきた。行事をやることで、今回の脱走事件のようなことも当然発生しやすくなるのだが、その信念をつらぬく。
その信念とは…
桑田と院長の息子が3年振りの再会。
院長の息子は言う。
「少年院に入ってる人達は、周りから信頼された経験が少ないから、いっぱい信じてもらった思い出を持って、出て行ってもらいたいんだって・・・」
「だからできるだけ、花見とか遠足とかをさせてあげたいんだって・・・」
その考え方に「立派な考えだと思うよ。」と微笑む桑田。
ちなみに院長は桑田の父の後輩。
院長の息子は言う。
「少年院に入ってる人達は、周りから信頼された経験が少ないから、いっぱい信じてもらった思い出を持って、出て行ってもらいたいんだって・・・」
「だからできるだけ、花見とか遠足とかをさせてあげたいんだって・・・」
その考え方に「立派な考えだと思うよ。」と微笑む桑田。
ちなみに院長は桑田の父の後輩。
各話に名言があり、考えさせられました。