「月下の棋士」に「将棋の渡辺くん」 棋士が関わっている将棋漫画たち
2017年6月3日 更新

「月下の棋士」に「将棋の渡辺くん」 棋士が関わっている将棋漫画たち

「月下の棋士」「ハチワンダイバー」「3月のライオン」。専門的な作品には専門家の助言が必要なのは将棋漫画においても同じこと。なかには将棋指しが原作、原案を担当している作品もある。将棋指しを描いた物語、将棋指しが描いた物語。そこに差はあるのだろうか。

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将棋漫画の金字塔 「月下の棋士」

月下の棋士

月下の棋士

 1993年から2001年にかけて連載されていた将棋漫画。2000年にはドラマも作成されている。全32巻で完結済。

 将棋界に突如として現れた氷室将介。彼は棋界の暴れん坊と呼ばれていた御神三吉の孫であり、ずぼらな格好、誰に対しても物怖じしない言動、初手端歩、そして抜群の強さでもって将棋の《名人》に向かい活躍していくストーリー……

 という紹介の仕方をするとだいぶ少年漫画らしくなる。実際のところはビッグコミックスピリッツ掲載、作者能條純一ということで少年漫画というよりかは青年漫画である。
 おそらく将棋漫画があまり出回っていなかったせいだと思うが、対局中に吐血失禁絶命とすさまじい演出(?)が並んでおり、そのせいか将棋ファンのなかでも引いている人は一定数存在している様子。

 一方で「月下の光がよく似合う」をはじめとする名言や名演出もまた多い。
 能條純一がシャープな演出、クールな人物描写を得意としているという部分もあるが、監修が河口俊彦八段だというのも見逃せない。
 彼は奨励会に16年在籍したというだいぶ苦労派の棋士で、タイトル戦に絡んだり抜群の活躍には恵まれなかったようである。一方で文筆に関しては天与の才とでも言うのか棋界でも屈指の人物で、1987年には《将棋ペンクラブ》を創設し初代会長にまでなっている。
 つまり、将棋界の生き字引的存在であった。1936年生まれということもあって様々な棋士、勝負師を知っていたはずの彼がそのエピソードを出し惜しみするはずもなく、「月下の棋士」登場人物は元ネタが特定できるキャラやシーンも多い。
 「駒が泣いている」というのも元は明治の棋士・坂田三吉の「銀が泣いている」という発言だろう。
河口俊彦八段

河口俊彦八段

将棋とアクションのハイブリッド 「ハチワンダイバー」

 将棋漫画には悩みがある。盤面を説明しようとすると字数がかさばるし読んでいる人がついてこれないというものである。「月下の棋士」も将棋そのものよりかは棋士の人物像や逸話を多めに取り入れているのだと思うが、完結から5年してまさかのジャンプ系列で将棋漫画が出てきた。
ハチワンダイバー

ハチワンダイバー

 2006年から週刊ヤングジャンプで掲載され2014年に完結した作品「ハチワンダイバー」。
 プロを目指したものの叶わず、賭け将棋を生業とする《真剣師》となっていた主人公が《アキバの受け師》と呼ばれる女性に出会い、やがてとんでもない戦い(将棋)に巻きこまれてゆくというあらすじ。

 作者の柴田ヨクサルは1996年から2006年までヤングアニマルに「エアマスター」を掲載しアニメ化までされた人気作家である。なぜ将棋漫画を? という疑問があったがこの作者もまたべらぼうに将棋が強い。というのも子供の頃はプロを目指していたらしく、企画で藤田綾女流二段と平手で対局したところ勝利してしまった。アマ四段はかたいところである。
エアマスター

エアマスター

 「ハチワンダイバー」監修は鈴木大介九段。八段から九段に昇ったのはつい最近のことである。
 主人公・菅田の師匠役であったことはまだしも作中にまさか《鈴木八段》として登場するとは思われていなかったようでファンの間でしばらく話題になっていた。
 22巻表紙の右から3人目も鈴木である。
鈴木大介九段

鈴木大介九段

主人公は棋士か少年か少女か 「3月のライオン」

 2007年よりヤングアニマルで掲載されて現在連載中なのが「3月のライオン」。
 この作品はアニメ化、映画化とメディアミックスが盛んである。
3月のライオン

3月のライオン

 作者は羽海野チカ。この人は「ハチミツとクローバー」でもそうだったが群像劇がたいへんうまい。美大にいるから美大らしい天才肌の人物も登場するのだが、そうではない人物もちゃんと登場している。むしろそういう、自分と同じ人たち、異なる人たちの間で発生する心理や微妙な関係がメインであり、美大というのはひとつの舞台であり装置であったのかもしれない。
ハチミツとクローバー

ハチミツとクローバー

 「3月のライオン」の主人公は中学生で棋士となった桐山零なのだが、関わりが深い川本家の少女たちがおくる日常、抱える問題が中心の話が多い。零の周辺の人物に焦点を当てた話も多く、やはり主人公がいかに過ごし成長するかという漫画というよりかは群像劇の印象が強い。

 監修は先崎学九段。コラムなどを読んでいると人の好いおじさんというイメージを持つが無頼めいたところがあり、それ系の逸話が豊富である。
 将棋界有数のコラムニストとしての一面を持っているが、師匠の米長永世棋聖に「原稿ばっかり書いていないで将棋の研究をしろ」と叱られたというのはなんともフィクションノンフィクションの線引きが難しい話である。
 実は先崎九段は《羽生世代》のひとりであり、奨励会時代には天才の呼び声が高かった。1970年生まれだが奨励会に入ったのは1981年。このあたりから中学生になるまで師である米長邦雄永世棋聖の内弟子として住み込みをしていた。才能はあったのだが、あり過ぎて麻雀などを覚えてのめりこんでしまいキャリアとしては下だった羽生世代に追い抜かれてしまった。羽生が四段になった時の写真では「天才の羽生と元天才?の先崎初段」と書かれてしまったという逸話がある。
先崎学九段

先崎学九段

少女小説家の意外な漫画 「しおんの王」

しおんの王

しおんの王

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