もう「復活の呪文」には悩まない。セーブ方法の進化の歴史を辿る
2019年7月16日 更新

もう「復活の呪文」には悩まない。セーブ方法の進化の歴史を辿る

書き間違いに悩まされた「復活の呪文」。なぜか冒険の書が消えてしまうバッテリーバックアップ。ミドル世代にとって、セーブはいつ消えるかわからないものでした。今回はそんなセーブ方法の歴史を紹介します。

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セーブ機能がなかったファミコン

ファミコン時代のドラゴンクエストで採用され、メモの間違いでゲームが再開できないなど、多くのミドル世代を悩ませた「復活の呪文」。

そもそもなぜ復活の呪文という仕組みが存在したのでしょうか。
今では考えられないことですが、ファミコン本体にはデータをセーブする仕組みがなかったからです。
パズルやシューティングではなく、RPGのように何日も続けてプレイするゲームは、最初は想定されていなかったのです。
そのため、電源を切った後も前回の続きから遊べるように、ゲームの進行度合いを暗号化した文字列を表示するという仕組みを採用しました。
しかし、当時はスマートフォンどころかデジカメもないため、手書きで表示された「呪文」をメモするしかありませんでした。
ゲームが複雑になって、文字列が長くなると、書き間違いの頻度が増えて、ゲーマーを悩ませました。
画質の良くないブラウン管テレビで、「め」と「の」と「ぬ」や、「わ」と「れ」といった文字列は誤認しやすかったのです。
ドラゴンクエスト

ドラゴンクエスト

「バッテリーバックアップ」の登場

このような問題を解決するために、1986年11月発売のMSX向けソフト「ハイドライドII」で、ゲームカセットの中に記憶装置を搭載する「バッテリーバックアップ」が登場しました。
バッテリーバックアップは、1987年4月発売の「森田将棋」を皮切りに、ファミコン向けソフトでも続々搭載されて広く普及しました。

この画期的な仕組みで長大なデータも安心して保存できるようになったため、「ファイナルファンタジー」や「ドラゴンクエストIII」と言った長編RPGが登場しました。
また、「ターボファイル」や「天の声BANK」などの別売の記憶装置を使って、データを記録する試みも生まれました。
ファイナルファンタジーIII

ファイナルファンタジーIII

「冒険の書は消えてしまいました。」バッテリーバックアップの問題点

しかし、この方法でもしばしばデータが消滅してしまいました。
「ドラゴンクエストIII」で、おどろおどろしい音楽とともに「おきのどくですがぼうけんのしょはきえてしまいました。」というメッセージが流れてデータが消失する様子も、ファミコン世代には語り草になっています。

なぜでしょうか?実は、この保存方法には2つの問題点があったのです。
一つ目は、データセーブを想定していなかったファミコンの設計の関係で、電源を切断して回路の電圧・電流が低下した瞬間に、CPUが誤動作して、カセットの記憶装置のデータが壊れてしまうことがあるという問題がありました。
セーブ機能のあるファミコン用ソフトで、リセットボタンを押したまま電源を切ることが要求されたのは、
リセットボタンを押している間は、CPUの動きが止まるからという理由だったのです。
この点は、スーパーファミコン以降は解決されました。

二つ目は、当時のゲームカセットの中に搭載されていた記憶装置は、常に電気が供給されていないと消えてしまう仕組みだったことです。
そのため、ゲームを起動していなくても電気を供給するためのボタン電池が同時に内蔵されており、その電池の寿命が切れるとゲームデータも消えてしまいました。
電池を使ってバックアップするから、「バッテリー」バックアップという名前なのです。
レトロゲームファンの中には、古くなった当時のゲームソフトを分解してボタン電池を交換することで、セーブ機能を復活させた方もいるのではないでしょうか。

当時の子供たちの間では、ゲーム機やソフトの動作が安定しない時は、カセットの端子に息を吹きかけてホコリを飛ばすと良いという噂が広く信じられていました。
余談ですが、実はこれは逆効果でした。息に含まれるわずかな唾液の水分で端子が錆びてしまう恐れがあったのです。
現在は、メーカーもこうした行為を控えるように呼びかけています。ホコリを取る場合は、端子を綿棒で優しくこすると良いそうです。
ゲームボーイ・アドバンス用 タブ付き ボタン電池 CR...

ゲームボーイ・アドバンス用 タブ付き ボタン電池 CR1616

カセットからディスクへ。「メモリーカード」の登場

1990年代後半、プレイステーションの発売以降は、カセットの容量や生産コストの関係から、カセットではなくディスク型のソフトを読み取るゲーム機が主流になりました。
電気が供給されなくてもデータが消えない記憶装置もコストが安くなり、一般に普及しました。
当時「EEPROM」と呼ばれたこうした記憶装置は、「フラッシュメモリ」と殆ど同じ先進的なものです。

現在では私たちのスマートフォンの中のSIMカードやSDカード、USBメモリーといったあらゆる所で「フラッシュメモリ」が使われていますよね。
そのため、別売の「メモリーカード」を使ったセーブが主流になりました。
ゲームボーイアドバンスのようなカセットでも、一部のソフトでは「EEPROM」が搭載されてボタン電池が不要になり、ニンテンドーDS以後は完全に移行しました。

余談ですが、「EEPROM」を家庭用ゲーム機ではじめて採用したのは、1990年にファミリーコンピュータ向けに発売された「ナイトガンダム物語」でした。
当時の「EEPROM」は高価で、あまり大きなデータを保存することはできませんでした。
「ナイトガンダム物語」に搭載された記憶装置では、「復活の呪文」にしても100文字程度でおさまるデータしか保存できなかったそうです。

また、メガドライブ時代後半のセガ発売のゲームソフトも「EEPROM」を採用していました。
さすが昔のセガは、ディープなゲームファンを支持層に抱えていただけのことはありますね。
メガドライブミニ

メガドライブミニ

ハードディスク、SSDの搭載

2010年代、プレイステーション3やプレイステーション4では、ゲームソフトのボリュームがさらに膨れ上がり、ゲーム機本体に、デスクトップパソコンで使うようなハードディスクを内蔵していました。

SSDも、ざっくり言うとUSBメモリーと同じような仕組みで、ハードディスクのように大きな容量を扱える記憶装置です。SSDをパソコンに搭載することで起動を早くすることが最近流行っていますよね。

今後発売される後継機種では、読み込みの速さを重視して、SSDを搭載する予定だと言われています。
PlayStation 4 ジェット・ブラック 500GB

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