訴訟からおよそ20年後の1967年、62歳になった定は「若竹」というおにぎり屋を開店。実際には現在で言うところのスナックであったこの店には、芸能人や有名力士、そして政治家まで幅広い客が訪れ賑わいを見せていました。同時期に映画にも出演し、後述の「明治大正昭和 猟奇女犯罪史」には定の貴重なインタビューが収められています。
映画に登場するなど表舞台に顔を見せていた定ですが、1970年に若竹からぱったりと姿を消してしまいます。そして翌1971年、千葉県市原市にあった「勝山ホテル」の従業員として働き始めました。しかし、そのホテルにも「リウマチを治療し、7月8月が過ぎたら戻る」という置き手紙を残し失踪。その後1974年の目撃情報を最後に、定は完全に消息不明となりました。
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消息不明となった定ですが「その後もしばらくは生きていたのではないか?」と推測できる点があります。阿部定事件で犠牲となった石田の命日になると、石田が永代供養されている山梨県の久遠寺に花束が毎年届けられていたのです。しかしその花束も1987年頃には途絶え、その頃に定は亡くなったのではないかと推測されています。
阿部定事件を題材とした秀逸映画の数々!!
上述の通り世間を震撼させた阿部定事件ですが、後年になって映画や小説などの題材として幾度となく取り上げられました。「愛のコリーダ」が特に有名ですが、ここではそれ以外の名作の数々についても振り返ってみたいと思います。
明治大正昭和 猟奇女犯罪史(1969年)
1969年に公開された映画「明治大正昭和 猟奇女犯罪史」。実在の猟奇事件を題材にしたオムニバス映画で、作中に阿部定本人が登場しており、事件についてインタビューに答える貴重な映像が収められています。
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四畳半襖の裏張り(1973年)
1973年公開の映画「四畳半襖の裏張り」。「女地獄 森は濡れた」の神代辰巳が監督・脚本を担当し、遊びの限りを尽くした中年男と芸者との床シーンの数々を描いています。
実録 阿部定(1975年)
1975年公開の「実録 阿部定」。男を想う女の哀しい性を女性の視点から描いた作品で、「(秘)色情めす市場」の田中登が監督を担当。
愛のコリーダ(1976年)
1976年公開の大島渚監督作品「愛のコリーダ」。阿部定事件を題材として男女の愛欲の極限を描いた作品であり、日本初のハードコアポルノとして当時大きな話題となりました。2000年にはノーカット版の「愛のコリーダ2000」が発表されています。