道化師姿で”笑い”を届けるホスピタルクラウン。実在の活動家をユーモラスに描いた映画『パッチ・アダムス』
2017年1月15日 更新

道化師姿で”笑い”を届けるホスピタルクラウン。実在の活動家をユーモラスに描いた映画『パッチ・アダムス』

日本では1999年に公開された心温まる映画『パッチ・アダムス』。笑顔を絶やさず、常にふざけていて、周りに笑いを提供するある医学生の物語。また、実在の人物パッチ・アダムスがモデルとなっており、本人のプロフィールや活動もご紹介する。

7,591 view

心温まるユーモアが詰まった映画『パッチ・アダムス トゥルー・ストーリー』

笑顔を絶やさず、常にふざけていて、周りに笑いを提供するある医学生の物語。

監督は「ライアーライアー」のトム・シャドウイック。脚本は「ナッシング・トゥ・ルーズ」の監督・脚本を務めたスティーヴ・オーデカーク。
出演は「グット・ウィル・ハンティング 旅立ち」のロビン・ウィリアムス、「コン・エアー」のモニカ・ポッターほか。
映画『パッチ・アダムス トゥルー・ストーリー』

映画『パッチ・アダムス トゥルー・ストーリー』

≪あらすじ≫病気で苦しむ患者を”笑顔”で救っていく物語

1969年。自殺未遂を繰り返し、精神病院に自ら入院することになったハンター・アダムス(ロビン・ウィリアムス)。
入院当初、患者たちの奇声や突飛な行動に驚くが、徐々に心を開き、得意のジョークで笑いをとっていく。

有名な大富豪で天才病の患者アーサー(ハロルド・グールド)は、アダムスがアーサーの紙コップの水漏れをシールで直したことから「パッチ(傷をなおす)」というニックネームをつける(以下、パッチ)。

そして、ベッドから降りることを怖がる同部屋のルディに対して、ユーモアを織り交ぜながら勇気を持たせ、ベッドから降ろすことに成功する。そして、心を病む人を助ける素晴らしさに目覚め、それまで自らがやりたいことが見つからないと嘆いていたパッチは、目を輝かせ、退院していく。
パッチ(ロビン・ウィリアムス、左)とアーサー(ハロルド...

パッチ(ロビン・ウィリアムス、左)とアーサー(ハロルド・グールド、右)

常日頃、指を4本差し出し、「指は何本?」と聞いて回るアーサー。
最初は「4本」と答えていたパッチに、アーサーが「問題ばかり見てると、答えが目に入らない。問題を見ず私を見ろ」と助言。
すると、指がぼやけ、8本に見え始める。
「8本」と答えたパッチを喜ぶアーサー。「人に見えないものを見ろ。恐れとか怠惰で人が見ようとしないものを。新しい世界が見えてくる。」と伝えた。
2年後、パッチは精神科医を目指し、バージニア大学医学部に入学。

同級生トルーマン(ダニエル・ロンドン)と白衣を着て病院に潜入し、患者たちの心を掴んでいく。パッチの笑いの療法が次第に功を奏で、ベテラン看護婦たちも温かな目で見守ってくれるようになる。しかし、学部長のウォルコット(ボブ・ガントン)はパッチを快く思わず、放校処分に。
常に成績がトップクラスのパッチに学長が理解を示し、学校に残ることが許される。
真っ赤な浣腸を鼻に付け、ユーモアたっぷりに難病の子供を...

真っ赤な浣腸を鼻に付け、ユーモアたっぷりに難病の子供を笑わせようとするパッチ

途端に笑顔になる子供

途端に笑顔になる子供

ゴム手袋もパッチに掛かれば楽しい小道具に!

ゴム手袋もパッチに掛かれば楽しい小道具に!

なんとか放校を免れたパッチだが、懲りずに医学生の立場ながら、病院内で多くの患者に感動を与えていく。もちろんユニークな方法で。
一方で、テストで良い成績を取ることを目的とすることに疑問を持ち、本当の医療とは何かを考えていく。

また、パッチは入学当初から惹かれていた同級生のカリン・フィッシャー(モニカ・ポッター)にアタックを続けていた。ストレートに気持ちを伝えていくが、最初は全く相手にされない。
しかし、いつも純粋に”誰かのために”行動し、実現させていくパッチへカリンも徐々に惹かれていく。
患者を病人とだけ認識する大学病院の体質に疑問を持つパッチ。

患者を病人とだけ認識する大学病院の体質に疑問を持つパッチ。

大学教授に、病気に対しての質問ではなく、患者の名前を質問する。教授は病気の詳細や治療法はスラスラと言葉に出来るが、資料を見なければ名前は答えられない。
人と人が触れ合う医療現場の重要性がよく演出されたワンシーン。
フランクに話しかけてきたパッチを軽い男だと思い、あしら...

フランクに話しかけてきたパッチを軽い男だと思い、あしらうカリン・フィッシャー(モニカ・ポッター)

実際にカリンは男性に対してトラウマがあり、恐怖心が強い。
ある日、パッチはカリンの誕生日を温かく祝い、心を通わせ、後に愛のこもったキスをするまでになる。

そして、パッチは病院や医療制度の理不尽さから無料の病院を作りたいと考え始める。精神病院で患者同士として出会った富豪のアーサーの出資により、夢が現実となる。

トルーマン、カリンと共にさまざまな患者を無料で受け入れ、順調に思えた頃。非常に悲しい事件が起きてしまう。ある患者がカリンを自宅に招き入れ、その後カリンを殺し、自殺したのだ。

パッチは全てを失った気になり、診療所に誘った自分に責任を感じ、ショックから自暴自棄になっていく。そして、診療所を閉め病院もやめると言い始める。しかし、ひょんなことから患者の望みを叶え、患者に元気を取り戻したことをきっかけに再度自らの信じる医療を目指していく。
部屋一杯に風船を敷き詰め、カリンの誕生日を祝った!

部屋一杯に風船を敷き詰め、カリンの誕生日を祝った!

しかし、そんな時、医師免許も無いうちに無料で診察していたことを理由に退校が申し渡される。医師会の裁定に判断を仰いだパッチは、裁定の場で医者と患者は対等であることや心をほぐすことが何よりの治療になることを主張。認められ無事大学を卒業し、独自の治療方法を広く伝えることになるのだった。
映画のラスト、卒業式のシーン。

映画のラスト、卒業式のシーン。

犬猿の仲の学部長のウォルコットは、”普通に”式へ臨むパッチに対し「体制に順応したようだな」と声を掛けた。「ええ、もちろん!」と笑顔で返すパッチだが、列席者に背中を見せ、深々とお辞儀。すると、マントの真ん中がパックリ割れ、お尻が丸出しになった。最後までユーモアを絶やさないパッチだった。

道化師姿で”笑い”を病院に届ける活動 = ホスピタルクラウン

ホスピタルクラウン。病院などで心のケアをする道化師のこと。
”笑い”は身体の免疫力を上げ、健康維持や病気の身体にも良いと言われている。そこで笑いを病院にも届けようとする活動が、ホスピタルクラウンである。

病院内で患者は、医師や看護士の指示のもと生活することが前提で、時として立場的に弱く感じることもある。一方、クラウンでは患者と同じ目線に立ったり、さらには彼らに主導権を持たせることが可能とされている。
ホスピタルクラウンは、医師をはじめ関係者に『クラウン』という存在をよく理解してもらい、相互の協力があって成り立つものだ。

そうした活動に尽力した実在の精神科医パッチ・アダムスの若き日を描いた映画が、本作『パッチアダムス』である。
医師であるパッチ・アダムス

医師であるパッチ・アダムス

35 件

思い出を語ろう

     
  • 記事コメント
  • Facebookでコメント
  • コメントはまだありません

    コメントを書く
    ※投稿の受け付けから公開までお時間を頂く場合があります。

あなたにおすすめ

関連する記事こんな記事も人気です♪

眠り病の実話を基にした映画『レナードの朝』 デニーロの演技が圧巻!

眠り病の実話を基にした映画『レナードの朝』 デニーロの演技が圧巻!

医師・オリバー・サックス著作の医療ノンフィクションである『レナードの朝』。それを基にした映画『レナードの朝』。ロバート・デ・ニーロとロビン・ウィリアムズの名優同士の共演など貴重な一作となっている。彼らの見事な演技についても触れる。
ひで語録 | 31,703 view
言葉がなぜ発達した?女を口説くためさ。教師・ロビンウィリアムズが情熱的に人生を説いた映画『いまを生きる』

言葉がなぜ発達した?女を口説くためさ。教師・ロビンウィリアムズが情熱的に人生を説いた映画『いまを生きる』

1990年に日本で公開された映画『いまを生きる』。名優ロビン・ウィリアムズが教師役として出演し、進学校の生徒たちに人生の素晴らしさや尊さを伝えていく。思春期の生徒がそれぞれ葛藤し、行動していく様子をあたたかく見守るロビン・ウィリアムズの笑顔が印象的な映画である。
ひで語録 | 2,781 view
当時無名のマットデイモンが脚本を執筆!映画 『グッド・ウィル・ハンティング』

当時無名のマットデイモンが脚本を執筆!映画 『グッド・ウィル・ハンティング』

『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』は1997年公開のアメリカ映画。ハーバード大学中退のマット・デイモンと、友人ベン・アフレックの新進俳優の共作によるオリジナル脚本だった。ロビン・ウィリアムズの好演が光った作品でもある。
ひで語録 | 8,687 view
1980年代のおすすめ感動映画

1980年代のおすすめ感動映画

1980年代、バック トゥ ザ フューチャー・E.T・ゴーストバスターズ・プレデター・スター ウォーズといった人気のメジャー映画がたくさん登場してます。これらの映画は空想小説の世界。しかし、感動の名作も負けてはいません。今回は、そんな名作のご案内です。
五百井飛鳥 | 555 view
怪優「ロビン・ウィリアムズ」がアンドロイド役に挑む、SF映画『アンドリューNDR114』

怪優「ロビン・ウィリアムズ」がアンドロイド役に挑む、SF映画『アンドリューNDR114』

そう遠くない未来のある日、郊外に住むマーティン家に届いた荷物は、家事全般ロボット“NDR114”でした。 最新鋭の機能を持ちながら、礼儀正しく、どこかアナログ感も漂わせるこのロボットは“アンドリュー”と名付けられました。 『アンドリューNDR114』は、1999年に公開されたアメリカのSF映画で、原題はアイザック・アシモフの原作通り『バイセンテニアル・マン』、監督は「ホーム・アローン」を手掛けたクリス・コロンバスです。
みやびんぬ | 1,681 view

この記事のキーワード

カテゴリ一覧・年代別に探す

あの頃ナウ あなたの「あの頃」を簡単検索!!「生まれた年」「検索したい年齢」を選択するだけ!
リクエスト