アカデミー賞史上最多の主演女優賞に輝いたキャサリン・ヘプバーンのよもやま話
2018年7月28日 更新

アカデミー賞史上最多の主演女優賞に輝いたキャサリン・ヘプバーンのよもやま話

私は今まで、1940年代後半から50・60年代のハリウッド映画黄金期に銀幕を賑わせた映画女優達について、何人かをピックアップしてきたが、この時代のハリウッド映画界の1頁を語る上で重要な女優を一人忘れていた。その女優がキャサリン・ヘプバーン、その人だ。

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”赤狩り”の対象にされる!!

第二次世界大戦後、ハリウッドに ‟赤狩り” の嵐が吹き荒れた際、キャサリンは自由主義者たちの集会に参加し、「私たち の自由を更に価値あるものにするために闘う 」 と堂々宣言してしまったため、共産主義者(アカ)との疑いをかけられ、出演作の上映を拒否する映画館もあったそうだ。
アフリカの女王 [DVD]

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第一次大戦下の東アフリカ。船長チャーリー(ハンフリー・ボガート)と宣教師の妹ローズ(キャサリン・ヘプバーン)を乗せた蒸気船“アフリカの女王”号は河を下っていくが、彼らの行く手には激流や大瀑布、そしてドイツの戦艦が待ち受けていた! C・S・フォレスターの冒険小説を、H・ボガートとK・ヘプバーンという見事なキャスティングでJ・ヒューストンが映画化した傑作ロマン活劇。船上で繰り広げられる二人の芝居から、クライマックスの敵の砲艦襲撃シーン、そしてラストシーンの意表を突く展開まで、いろいろな意味で目を離させない面白さだ。9年ぶり5度目のアカデミー賞 主演女優賞候補に。自身初のカラー作品。
なお、全編薄汚れているハンフリー・ボガートが本作でオスカー主演男優賞を獲得している。

The African Queen (1951)

百獣集う雄大なアフリカを舞台に、酔っ払い船長とそばかす年増女がおんぼろ蒸気船でドイツ砲艦撃破に向かうことになる。ユーモアもたっぷりのアドベンチャー・ロマンで、古き良きアメリカ映画を感じさせてくれる。ミニチュアやスクリーン・プロセスといった特撮映像も古くさいが心地良い。
旅情 [DVD]

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監督 デヴィッド・リーン
脚本 H・E・ベイツ、デヴィッド・リーン
原作 アーサー・ローレンツ
出演者 キャサリン・ヘプバーン、ロッサノ・ブラッツィ

ベニスに観光で訪れたオールド・ミスのジェーン(キャサリン・ヘプバーン)は、そこでレナート(ロッサノ・ブラッツィ)というハンサムな男性と知り合う。彼の案内でベニスを観てまわる内、ジェーンは次第にレナートに淡い恋心を抱いていく。だが、レナートに息子が居ることを知ったジェーンは、自分がからかわれていたと思い込み、ベニスを立ち去る決心をするが……。有名なラスト・シーンが心に染みる作品。キャサリンはアカデミー賞主演女優賞にノミネート (6度目)。また、ベネチアの運河に落ちるシーンを撮影した際に、目を感染症に冒されたそうで、この病気は死ぬまで直らなかったらしい。恐るべし!目の感染症!!

旅情 (1955) ヴェニスの夏の日 - ジェリー・ヴェイル

恋愛恐怖症のオールドミスが美しいベネチアの風光の中で恋に溺れていく。愛してしまった人は妻子ある男。苦しくも自らの意志でけじめをつけて身を引く女。パーティーは終わったのだ。
「オールドミスのひと夏のアヴァンチュール」。要約してしまうとそれだけのことだが,女性の生き方に現在ほど理解のなかった当時にあっては,英(U.K.)題の「Summer Madness(夏の狂気)」が最も端的に内容を表しているんでしょうね。キャサリンのそんな演技が自然なのは何故なのか??

1960年代に入り、たて続けに2回もアカデミー賞を受賞!!

招かれざる客 [DVD]

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『招かれざる客』(まねかれざるきゃく、Guess Who's Coming to Dinner)は、1967年のアメリカ映画。第40回アカデミー賞では作品賞を含む10部門の候補となり、キャサリン・ヘプバーンが二回目のアカデミー主演女優賞を、ウィリアム・ローズ(英語版)が脚本賞を受賞。公開を前に亡くなったスペンサー・トレイシーの遺作でもある。

監督 スタンリー・クレイマー
脚本 ウィリアム・ローズ
製作 スタンリー・クレイマー
出演者 スペンサー・トレイシー、
   シドニー・ポワチエ、
   キャサリン・ヘプバーン
ヘプバーンとトレイシー

ヘプバーンとトレイシー

世界的にその名を知られる黒人医師ジョン(ポワチエ)はハワイで知り合った白人女性ジョーイ(C・ホートン)と人種の壁を越えて結婚を誓い合い、互いの両親の許しを得るためサンフランシスコのドレイトン家を訪れる。最初戸惑っていた母(キャサリン・ヘプバーン)も、娘の喜ぶ様子を見て次第に祝福する気になるが、だが父マット(スペンサー・トレイシー)はそうはいかない。
彼は人種差別反対を自ら経営する新聞の論調としてきたが、いざ自分の娘が黒人と結ばれるとなると心境は複雑だ。やがて、ジョンの両親プレンティス夫妻もかけつけるが、彼らも息子の相手が白人とは知らされていず愕然とする。けれども、彼の母も何より子供の愛を信じた。こうして、二人の母同士の強い説得によって、頑迷なマットの心もほぐれ、娘たちの仲を認めてやるのだった。

招かれざる客 (Guess Who's Coming to Dinner - Glory of Love)

1967年という時代を考えるとジョアンナ(キャサリン・ホートン)とジョン(シドニー・ポワチエ)の人種を超えた恋愛、というのはまだまだハードルが高かったんだろうなと思う(現代でもさほど変わらないんだな!これが!!)。
筋金入りのリベラル派だという新聞社社主の父マット(スペンサー・トレイシー)と画廊を経営する母クリスティーナ(キャサリン・ヘプバーン)でさえ、あまりに突然の出来事に事態を消化しきれてないし、しかも出逢ってわずか二週間で結婚を決め、ジョンは今夜の便でジュネーブに向かわなくてはならない、だからそれまでに返事が欲しい…ってそりゃあまりに突然過ぎるぞ。私も今はマットの心境が理解できる年になったから、余計に心苦しい。
リベラルであったはずなのに、父親としては許すことが出来ないという欺瞞。葛藤に揺れるスペンサー・トレイシー!!。私もこの年になると、娘婿と舅の両方の気持ちが判るので、余計にこの映画に肩入れしたい!!!。
冬のライオン [DVD]

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『招かれざる客』が公開された翌年の1968年に公開された『冬のライオン』(1966年初演のブロードウェイの演劇作品)に出演したキャサリン・ヘプバーンは又もやアカデミー主演女優賞を受賞する。王位継承をめぐる争いを描いた歴史ドラマ。

監督 アンソニー・ハーヴェイ
脚本 ジェームズ・ゴールドマン(英語版)
原作 ジェームズ・ゴールドマン
製作 マーティン・ポール
製作総指揮 ジョーゼフ・E・レヴィーン
出演者 ピーター・オトゥール
キャサリン・ヘプバーン
アンソニー・ホプキンス
ティモシー・ダルトン、他
エレノア役のキャサリン・ヘプバーン

エレノア役のキャサリン・ヘプバーン

1183年、クリスマスも間近の夜、イギリス国王ヘンリー2世(ピーター・オトゥール)は、後継者を決めるために一族を召集。息子三兄弟のほか、幽閉状態の王妃エレノア(キャサリン・ヘプバーン)、さらにフランス国王フィリップと彼の姉でヘンリーの愛人アレース(ジェーン・メロウ)も参加した。ヘンリーは三男ジョン(ナイジェル・テリー)を、エレノアは長男リチャード(アンソニー・ホプキンス)をそれぞれ後押しし、次男ジェフリー(ジョン・キャッスル)とフィリップ(ティモシー・ダルトン)はよもやの機会を伺う。やがて、息子たちの策略や堕落に失望したヘンリーは彼らを地下牢へ閉じこめ、自らの手で処刑に及ぼうとするのだが…。

The Lion In Winter (1968) - Trailer

1966年にブロードウエイで初演された演劇を映画化したものすが、晩年のヘンリー2世を描いているだけに、シェークスピアを思わせるような作品だ。キャサリン・ヘプバーンが3度目のオスカーを受賞。ピーター・オトゥールもノミネートされていますが、彼はベケット(1964年)でもヘンリー2世を演じているそうで、やはりノミネートされた。この2人が主役なのだから、流石に演技は立派な物だ。一方フランス王役のティモシー・ダルトンは映画デビューで、長男リチャード役のアンソニー・ホプキンズにしてもデビュー2本目ですから配役には見所があります。

4回目となるアカデミー主演女優賞作品がこちら!!

1970年代からはTVでも活躍し、ジョージ・キューカー監督のTV映画 「Love Among the Ruins 」(1975年)、「The Corn is Green 」(1979年) などに出演。御年70歳を越えても、まだまだ演劇に対する情熱は冷えていなかったに違いない。
4回目となるアカデミー賞主演女優賞を受賞した黄昏 [DVD]

4回目となるアカデミー賞主演女優賞を受賞した黄昏 [DVD]

『黄昏』(たそがれ、原題: On Golden Pond)は、1981年製作のアメリカ映画。湖畔の別荘を舞台に、人生の黄昏を迎えた老夫婦とその娘、彼女の結婚相手の連れ子の心の交流を描く。

監督 マーク・ライデル
脚本 アーネスト・トンプソン
製作 ブルース・ギルバード
製作総指揮 マーティン・スターガー
出演者 キャサリン・ヘプバーン
    ヘンリー・フォンダ
    ジェーン・フォンダ、他

この映画の出演当時、キャサリンは74才。シワだらけ、そばかすだらけ。整形なんて馬鹿げた真似は、真の大女優は歯牙にもかけない。それでもなお、スクリーンの吸引力は変わらないのだ。
また、演技者としての実力は誰もが認めていながもアカデミー賞に縁がなかったヘンリー・フォンダ(当時76歳)は、この映画で死の間際、5カ月前にアカデミー主演男優賞を受賞。ハリウッドの伝説の美談の一つになっている。

On Golden Pond(黄昏)-Dave Grusin

ニューイングランドの別荘でバカンスを過ごしている一組の老夫婦(ヘンリー・フォンダとキャサリン・ヘプバーン)のもとに、彼らの娘がやってきた。父親は愛情の示し方がわからず、それが故に、父娘の仲は疎遠になっていた。だが、娘のつれてきた孫を通じて、彼の娘への愛情は形にあらわれていく……。ジェーン・フォンダが不仲だった実父ヘンリーのために用意した作品で、スクリーンの裏側でも映画同様の葛藤が行われていたらしい曰付の映画。
美しい自然と、人生の終焉を迎えようとする人の気持ち、そして夫婦愛と親子愛。静かに流れる時といくつかの小さな事件。さりげなく進む物語と深みのある人生と人の心を見事に描いた素晴らしい作品だと思う。湖畔に別荘があってモーターボートを所有し釣りを楽しむ・・・、こういう余生を送れることがなんとも羨ましい限りだ!!
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もこ | 307 view

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