有り余るエネルギーを抱く若者が向かった先は北極!日本人初の南極点無補給単独徒歩到達に成功した冒険家、荻田泰永さん。
2018年10月17日 更新

有り余るエネルギーを抱く若者が向かった先は北極!日本人初の南極点無補給単独徒歩到達に成功した冒険家、荻田泰永さん。

カナダ北極圏に始まってグリーンランド、北極海を中心に主に単独徒歩による数々の冒険に挑戦。世界でも有数の北極冒険キャリアを持つとともに、2018年1月に日本人初となる南極点への徒歩による無補給・単独踏破に成功した北極・南極冒険家の荻田泰永さんにその歩みを伺いました。

734 view
「根拠のない自信」「打ち込める何かが欲しい」

そのような葛藤は、誰もが一度は経験することのような気がします。
「そして大学も面白くなくて、意味ないなと思って辞めたんです。99年の3月で大学を辞めて、で、その年の7月21日、テレビでNHKのスタジオパークからこんにちはっていうね、昼にやってたトーク番組で、大場さんっていう人をたまたま見たんです。」
大場 満郎(1953年1月10日 - )は、日本の冒険家である。山形県最上町出身。山形県立農業経営研究所卒。「アースアカデミー・大場満郎冒険学校」主宰。

北極でも砂漠でも宇宙でもよかった、エネルギーをぶつけたかった

「大場さんの生き方。エネルギー、熱量が凄くて、もう番組を食い入るように見ちゃって。そしたら、番組の中で一番最後で、来年まったく素人の若者を連れて一緒に北極を何百キロもソリで歩こうと思ってるんですよってしゃべってるわけです。で、大場さんに手紙を書いたんですね。テレビ見ました、何にもやったことないんですけど行けるんでしょうかってね。それがきっかけで実際参加することになって、2000年に北極に行ったんですね。」

「だから、北極に行きたいと思って行ったわけじゃないんです。たまたま北極だったんです。別にどこでもよかったんです。別にそれが砂漠だろうがジャングルだろうが、北極だろうが、海だろうが、なんだろうが、宇宙だろうが、なんでも良かったんです。ただ、何かを探していたんだけれども、その時に色々タイミングがまたパシッと合ったんですね。」

極地へ向かうのはあくまでも手段

有り余るエネルギー、何かを為したくて為せていない自身への怒り。
若き日の荻田さんを突き動かしたのはそんな気持ちだったといいます。

「どこでもよかったんです」という荻田さんの言葉。
自身のエネルギーを一方向に定める手段が極地への冒険であり、それを続けるうちに「もっと行けるはず、もっとやれるはず」を繰り返してきたのだと。

「なんていうかな、到達することが目的ではないんですね。じゃあどこに向かってるのかって言ったら、大きなラインの上に乗っていることが大事であって、そこは中にこうチェックポイントがあるわけですね。北極点とか、南極点とか。だから、自分の中のイメージの中では、ラインの上にいるわけです。で、このラインの上を走っていることが目的であって。」

「プロセスの中にいることが目的。着くことは目的ではなくて、向かうことが目的なんですよ。着くと向かうって全然違うんですね。着くってのは結果の話。向かうってのはプロセスの話なんです。プロセスの中に身をおいていること、つまり走っていることが目的。で、走りたいんですよ。走っていたいんですよね。で、走り続けて、どんどんどんどん走っていけば、誰も着かないとこには行けるだろうっていう、根拠のないが自信があるってことです。」

「何のためにやるのって聞かれたら、やりたいからやる」

「スタートボタンは押された、その後はただ走ってきただけ。」

そう笑う荻田さん。
もちろん常人には計り知れない苦労や努力があったことと思いますが、当の本人はさらっと「誰でも成し遂げられるんですよ、やるかやらないかの違いだけなんです。」と話します。
「私も常人ですから。例えば100メートルを9秒台で走れというのは、どれだけ努力してもできない人のほうがもう、ほとんどなわけですよ。日本の陸上界でやっと1人出たっていうね。長い歴史の中で。たぶん桐生祥秀よりも努力した人って、多分いるはずなんですよね。」

「彼よりも情熱を傾けて、彼よりも激しいトレーニングを積んだ人は、きっといるはずなんですよね。でも、走れなかった。9秒台で走れっていうのは、やれば出来ることではないんですよね。たぶんそれは常人ではできないというか、そのレベルになってくると思うんですけど、我々がやっていることというのは、だから100メートルを9秒台で走るって言うのを、達成率が0.001%だとしても、我々がやっていることって、やる人が0.001%なだけであって。分母がね、陸上競技だと分母が100万分の1だとするじゃないですか。我々は分母が、もう1なんで。」
「やりたいからやる」だからこそ心が折れる理由もないと笑う荻田さん。

それは何かに抗ったり無理をすることで生じるものであり、ただやりたくてやってきた自分には無縁のことなのだと仰います。

そんなまっすぐ荻田さん、冒険家人生の中では大きな挫折も味わっていました。

半径500キロ無人の地で起きた事故

「2007年にテントの中で火を出して、死にかけて救助されたんです。両手大火傷を負って。その時は、結果的にSOSで救助されてピックアップされて、その時は落ち込みました。2007年から7、8年通って極地が分かった気になってて。甘く考えていたんでしょうね。自分で招いたものなんですけど。燃料こぼしてテントの中で出火して、火が出て、半径500キロ人がいないところでテント燃えてしまって。」
当時の想いを語る荻田さん

当時の想いを語る荻田さん

両手に負った火傷跡は今も残っています。
「あ、もう辞めようかなって思ったというのが一瞬ないことはなかったけど、でも失敗したままでそのまま終わらせておくのも許せなくて、そうじゃないってことをまた自分でも証明したくて。」

「結果としては、時をおいて2010年から歩き始めるんです。3年後ですね。」

極点を目指すと決めた2012年からは自らスポンサー集め

「極点やると決めたときからですね、スポンサーを募ろうと考えたのは。それまではアルバイトで稼いだお金で挑戦していたので。極点目指すとなると、例えば今回の南極点も2000万ぐらいかかってますし、北極点も大体1500万2000万ぐらいはそれぞれかかってしまうので、そこからですよね。」
-意識は変わりましたか?
「自分で賄っていた期間ていうのは、なんだろうな。要は自分が好きでやっているわけだから、人から金もらうのは筋違いと思っていたんです。」

「で、この段階でもらっちゃいかんなとは思ってたんですよ。なのでスポンサーを求めて歩いたこともなくて。ただ、その日々を繰り返していったその先には極点がね。そうなるとスケールの大きい費用もかかる、チャレンジをする日がいずれ来たときにはスポンサー集めをする日が来るだろうなというのは、やっぱりイメージとしてはあるわけですよ。だからその時に、その時のためじゃないですけど、ただ今はその段階じゃない。まあ言ってみれば、まだ経験づくりというか。」
59 件

思い出を語ろう

     
  • 記事コメント
  • Facebookでコメント
  • コメントはまだありません

    コメントを書く
    ※投稿の受け付けから公開までお時間を頂く場合があります。

あなたにおすすめ

関連する記事こんな記事も人気です♪

『ルール~「十五少年漂流記」より~』の全キャスト&キービジュアルが解禁!さらに大阪公演も決定!!

『ルール~「十五少年漂流記」より~』の全キャスト&キービジュアルが解禁!さらに大阪公演も決定!!

2024年5月、東京・よみうり大手町ホールにて舞台『ルール〜「十五少年漂流記」より〜』が上演されます。このたび全キャストが決定し、キービジュアルが公開されました。さらに6月1日~2日には大阪でも上演が決定!
隣人速報 | 74 view
トム・ソーヤの冒険が懐かしい!トムやハックと共に子供時代に戻ってみませんか?

トム・ソーヤの冒険が懐かしい!トムやハックと共に子供時代に戻ってみませんか?

1980年に放送された「トム・ソーヤの冒険」は、19世紀の開拓時代のアメリカの大自然を舞台に、少年トムソーヤがハックや仲間たちと共にワクワクするような冒険を繰り広げるというアニメでした。ハックが住む木の上の小屋に憧れた人も多かったのではないでしょうか。毎日が楽しかったあの頃、環境は違っても誰の胸にも仲間と過ごした子供時代は忘れられない思い出です。今回はそんな「トム・ソーヤの冒険」についてご紹介します。
そうすけ | 238 view
南極の昭和基地にも行ったペコちゃんって覚えてますか?

南極の昭和基地にも行ったペコちゃんって覚えてますか?

子供の頃、両親に連れられて行ったあの不二家。子供には魅力的な洋食や甘いケーキなど。クリスマスのショートケーキは日本の家庭には欠かせませんよね。子供たちの誰もが心をときめかせた不二家。その入り口には必ずペコちゃんがいて、私たちを迎えてくれました。
五百井飛鳥 | 354 view
未知のウイルスと戦う人類・角川映画が送る壮大なSF映画「復活の日」が面白い!

未知のウイルスと戦う人類・角川映画が送る壮大なSF映画「復活の日」が面白い!

1970年代~1980年代の角川映画は、角川3人娘(薬師丸ひろ子・原田知世・渡辺典子)などアイドル女優が輝いていましたし、それはそれは面白かったです。でも角川3人娘がスターダムに駆け上がる前夜のSF映画も素晴らしかったですよね。今回は角川映画のSF大作である「復活の日」についてご紹介します。
そうすけ | 1,657 view
【PR】アニメ「サマーウォーズ」をフルで無料視聴できる動画配信サービスを比較!

【PR】アニメ「サマーウォーズ」をフルで無料視聴できる動画配信サービスを比較!

2009年公開のアニメ「サマーウォーズ」。国内外の映画賞を多数受賞した「時をかける少女」(2006年)の細田守監督による劇場アニメでした。この傑作アニメをフルで無料視聴できる動画配信サービスをご紹介します!
みるみる | 78 view

この記事のキーワード

カテゴリ一覧・年代別に探す

あの頃ナウ あなたの「あの頃」を簡単検索!!「生まれた年」「検索したい年齢」を選択するだけ!
リクエスト