「人生の楽しみ方」を教えてくれるウディ・アレンの傑作映画『アニー・ホール』は、観ておいて本当に損はないと思う
2017年1月24日 更新

「人生の楽しみ方」を教えてくれるウディ・アレンの傑作映画『アニー・ホール』は、観ておいて本当に損はないと思う

ウディ・アレンが好きでも嫌いでもそんなの関係ない。とにかく、「映画芸術」みたいなものを語りたいなら外せない映画ではある。とはいえ、そんなに肩ひじを張って観る必要はない。ただ、楽しめばいい。そうすれば見えてくるはずだ。「人生の楽しみ方」が。そんなものが詰まっている映画が、この『アニー・ホール』なのだ。

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ウディ・アレンとボブ・ディランの「グッド・シンキング」

 ウディ・アレン最高のエピソードといえば、『アニー・ホール』でアカデミー賞の作品賞と監督賞、さらに脚本賞を受賞したにもかかわらず、欠席してみせたこと。こんな痛快なことはない。2016年、ボブ・ディランもノーベル文学賞の授賞式に欠席した。素晴らしい。男子たるもの、それぐらいの気概が必要だ。「権威に背を向けよ! ボーイたちよ」と誰が言ったかはともかく、長いものに巻かれないこと、これこそがこの世界に生まれ落ちて、僕らが成すべきことだ。
 ウディ・アレンはそういう意味でそうとう「グッド・シンキング・ガイ」 だ。まあ、グッド・ルッキングではないよなあ。身長167センチで髪は薄くてメガネをかけて神経質そうで、爽やかさのカケラもないんだから(ただ、アジア人には親近感があるかもしれないが)。
 でも、まあ、アカデミー賞の欠席は、本当に素敵だ。
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とりあえず、ウディ・アレン。
この感じ、あんまり友達にはなれそうにない。
ちなみに、アカデミー賞受賞式の夜は、ニューヨークの「マイケルズ・パブ」という行きつけのジャズ・クラブで得意のクラリネットを吹いてたとか。そんな伝説的な話、男ならぜひ作ってみたいでしょ。そんなウディ・アレンの最高傑作と言われる映画がこの『アニー・ホール』。まあ、真っ当な映画を期待してるなら観るのはよした方がいい作品。個人的には好きだけど、「『ランボー』が最高!」という人にはおすすめしない、とりあえず。
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「マイケルズ・パブ」の貴重フォト。
ネット時代に乾杯!

「破裂するまで何十億もかかる。それまで楽しまなきゃ」と笑い飛ばしてみる

 ウディ・アレンを手放しで好きだなんて言ってる人間はだいたいが、自意識過剰のうぬぼれ屋に過ぎない。学歴がどうとか、ロジックがどうとか、周りの人間がバカで自分はこんなに賢いとか思ってる人間が好きになるのだ。いや、違うか。
 こういう側面もある。いわゆる文化人思考の人間。なんでも評論してしまう癖があって、人間はこうあるべきだとか、世界はこんなふうにできているとか、だからこうじゃなきゃいけないとか、面倒くさい人たちがきっと好きなんだ、この映画を。うーん、違うか。
 そう、こんな映画が好きなのは、「宇宙は膨張している、ふくれあがって破裂したらすべてはおしまいだ」とか言ってしまう子供時代を送った人間だ。あっ、それ、この映画に出てくる主人公アルビー・シンガーの子供のときのセリフだった。
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主人公アルビー・シンガー、子供の頃。
口元に膨張せんとする宇宙が宿ってる。
このセリフがイカしてる。そう、膨張してるんだ。いったい、なにが膨張してるって? 1977年。40年前。主人公に、それも子供にそんなこと言わせてるウディ・アレン。膨張してるのは人間の業欲なのかもしれないし、悪意なのかもしれないと最近思うじゃないか。予言的だと思えて、頭がシビれる。それは映画冒頭のシーンだ。その子供の言葉を聞いた医者のセリフがいい。
「破裂するまで何十億もかかる。それまで楽しまなきゃ」
 こう言って笑い飛ばす。まさに気持ちいいぐらいに。
 このシーンですでになんだかこの映画を好きになる。
 いや、好きになる人と、「意味不明・・・」と言って観るのをやめる人がいるはずだ。

 まあ、とにかくこの映画について何かを語ろうとすると、支離滅裂になる。それは仕方のないことだ。だって、この映画だって決して理路整然としてるわけじゃない(と思う)。もしかしたら、エラい映画評論家やロジック好きのうんと賢い人は、「この映画はそう見せて実は計算されつくしてる」なんて言うかもしれないけど、そんなことはどうでもいい。どうでもいいっていうか、わかる人だけそう思えばいい。

 そういえば、数年前に「そんなの関係ねぇ!」ってギャグが流行ったけど、最近、この言葉の偉大さと奥深さに僕は気づいてしまった。そう、関係ないのだ。みんな、なにか自分に関係あると思いすぎて、思いたくて、関係し続けたくて、自分の首を絞めていることに気がつかない。息苦しく生きてることに気づかなくなってる。それもこれも、この宇宙時代に宇宙が膨張していることにみんな気づかないからだ。
 ウディ・アレンはもしかしたら、そんなことを40年前に言いたかったのかもしれない。それをアンサーで、小島よしおは返してみせた・・・。まあ、そんなことはないか。

『アニー・ホール』の冒頭シーンを楽しんで

 ところで、『アニー・ホール』のウィキによると、「ロジャー・イーバートは『おそらく誰もが好きなウディ・アレン映画だ』と述べている」とあるが、それはウディ・アレンが好きな人が前提ということだ。まあ、ウディ・アレンの容姿にまったく関心がないブラピファンのお姉さん方には、まったく理解できない映画であることは間違いない。
 ウディ・アレン映画でもっとわかりやすく誰もが心寄り添える恋愛映画もたくさんあるような気もするが、きっとそっちが好きな人もいるだろう(『ローマでアモーレ』なんてそんな感じじゃなかったかなあ)。でも、アメリカで最も有名で信頼される映画評論家であったらしい人(ロジャー・イーバート)が言うのだから、この『アニー・ホール』についてはいちおう襟を正して観てもらうのが、ある意味正当な映画文化への寄り添い方であるとは思う。
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なんといっても、「ハリウッド業界が最も好きな映画ランキング100」でも堂々の18位ですから。詳細は下のリンクで!
 しっかし、この素晴らしいインターネット時代の21世紀では、映画の冒頭のシーンがこの場で観れてしまう(いいのだろうか・・・)。1977年公開時には誰も想像がつかなかっただろう。ひとまず、この冒頭シーンを観て、自分の態度を決定されんことを望む。
 こんな顔の男に、頭っからペラリペラリしゃべられるのはうんざりだと言う人は必ずいるはずだ。そんな人はワザワザ、TUTAYAにDVDを借りに行ったり、名作だからといってAmazonで大人買い(量ではなく踏ん切りの意味で大人)する必要はないのである。

ちなみに、字幕はないので英語がわからない人は雰囲気だけ。
わかる人はわかる人なりに。
さて、関心が出てきた人にはこの先も読んでいただこう。

『アニー・ホール』が生まれた時代

 『アニー・ホール』は、1977年の映画である。昭和でいうと52年。
 アメリカでジミー・カーター大統領が就任し、ロッキード事件の丸紅ルート初公判があり、青梅マラソンで初の死者が出るとか、小学館から『コロコロコミック』が創刊されるとか、全米女子プロゴルフ選手権で樋口久子が優勝して日本人初の世界タイトルを獲得するとかがあって、さらに、ニューヨークが大停電したり、王さんがホームラン世界新記録の756号を達成したり、ダッカ日航機ハイジャック事件が発生したり、喜劇王チャップリンが死んだ年なのだ。
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監督、脚本、主演をこなし、後世に残る大きな成功をおさめたのはチャップリンとウディ・アレンぐらいだと言われる。チャップリンの成功の記録は下のウィキペディアで。
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