『子供達を責めないで』名優・伊武雅刀のエキセントリックな演説ソング
2017年2月4日 更新

『子供達を責めないで』名優・伊武雅刀のエキセントリックな演説ソング

低く響くバリトンと渋い演技。名優や怪優と呼ばれる俳優・伊武雅刀が1983年に出した『子供達を責めないで』。 歌というより演説風なスタイルと秋元康による斬新で強烈な詞で物議を醸した異色のシングルについて振り返る。

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名優・伊武雅刀のソロデビューシングル『子供達を責めないで』

「宇宙戦艦ヤマト」デスラー総統の声優を務めて知名度を高め、「スネークマンショー」により怪優の印象を不動のものにした伊武雅刀。

若き日の伊武雅刀は1983年に異色のソロシングルをリリースしている。
歌というよりド迫力の演説といった感じの『子供達を責めないで』について紹介していく。
伊武雅刀(いぶ まさとう)

伊武雅刀(いぶ まさとう)

1949年3月28日生まれ、東京都中野区出身。
小林克也らとコントユニット「スネークマンショー」で活躍後、 演技派俳優として数多くのテレビドラマ・映画に出演。
存在感のある渋く低い声で宇宙戦艦ヤマトのデスラー総統の声などを担当、声優やナレーターとしても人気が高い。
伊武雅刀『子供達を責めないで』

伊武雅刀『子供達を責めないで』

1983年8月25日リリース
作曲:H. B. Barnum、原詞:Ivan Reeve
日本語歌詞:秋元康

カップリング曲は「パパと踊ろう」
※アンドレ・クラボーの『Viens Valser avec Papa(パパと踊ろうよ)』のカバー。

【動画】伊武雅刀『子供達を責めないで』

刺激的な歌詞であるが、テレビ番組ではフジテレビ系の『夜のヒットスタジオ』と『オレたちひょうきん族』のコーナー「ひょうきんベストテン」にて披露された。

配慮のせいか『夜のヒットスタジオ』での歌詞は一部が本来のものと異なっているという。

『子供達を責めないで』伊武雅刀

「私は子供が嫌いです…」から始まり、なぜ子供が嫌いなのか熱弁をふるう。
テンションはどんどん上がり、最後には絶叫!
渋い声と強面、そして抜群の演技力。
全てを兼ね備えた伊武雅刀ならではの演説ソングである。

原曲はサミー・デイヴィスJr.の同名曲『Don't blame the children』

『子供達を責めないで』は原曲が存在しており、サミー・デイヴィスJr.が歌った『Don't blame the children』である。

こちらも同様に演説ソングであったが、詞の内容は「子供達が犯罪を犯してしまうのは、我々大人達にも原因があるのではないか」というメッセージであった。

『Don't blame the children』サミー・デイヴィスJr.

20世紀のアメリカを代表するエンターテイナー、サミー・デイヴィスJr.
フランク・シナトラ一家、タップダンサーとしても有名だが、カーアクション映画『キャノンボール』(1981)の出演で知った人も多いのでは。

秋元康による絶妙な訳詞で生まれ変わった『子供達を責めないで』

『Don't blame the children』の訳詞を依頼された秋元康は、原詞を直訳したのではひねりがないとあえて逆説的な詞にしたという。
人生の深みも 渋みも 何にも持っていない
そのくせ 下から見上げるようなあの態度
via 歌詞:『子供達を責めないで』
好きなものしか食べたがらない 嫌いな物にはフタをする
泣けばすむと思っている所がズルイ 何でも食う子供も嫌いだ
via 歌詞:『子供達を責めないで』
あの計算高い物欲しそうな目がいやだ 目が不愉快だ
何が天真爛漫だ 何が無邪気だ 何が星目がちな つぶらな瞳だ
via 歌詞:『子供達を責めないで』
ちょっとしたことで炎上してしまう現在、こんな歌をテレビで歌ったら大クレーム間違いなしである。
「この世の中から子供がひとりもいなくなってくれたら」なんてフレーズには歌とはいえそんなこと口にしていいのかとドキドキさせられる。

当時においてもこの刺激的な歌詞は議論され、発売元であるCBSソニーは発売前に試聴会を開いてアンケート調査を行ったという。

『子供達を責めないで』というタイトルなのに子供を責めた歌詞になっているのは、「子供は嫌いだ」と叫ぶ大人が一番子供っぽくて滑稽である、だから子供たちを責めてはいけないよという秋元康らしいメッセージであったのではないか。

そんな身勝手で滑稽な大人をもっとも表しているフレーズがこちら。
私は子供に生まれないでよかったと胸をなで下ろしています
via 歌詞:『子供達を責めないで』
自分の子供時代を見事に忘れて子供を非難する矛盾したフレーズを、伊武雅刀が真顔で語ることで滑稽さが際立っている。
なお、歌詞に出てくる子供のモデルは小さい頃の秋元自身だという。
子供ならではの「あるある」が圧倒的なボリュームで全編に散りばめらており、秋元康の洞察力の鋭さに恐れ入る。

天才・秋元康によるこの訳詞は怪優・伊武雅刀の演技力によって人々に衝撃を与えた。
子供を責めた歌詞なのに、小中学生を中心に受け入れられオリコン最高21位を記録し累計で30万枚以上のヒットになった。

『子供達を責めないで』で本当に責めていたものは…

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