石川ひとみ『まちぶせ』。異例のロングヒットとなったユーミン作詞作曲の名曲
2017年11月25日 更新

石川ひとみ『まちぶせ』。異例のロングヒットとなったユーミン作詞作曲の名曲

ヒットに恵まれなかった石川ひとみが勝負をかけて11枚目のシングルに選んだ『まちぶせ』。ユーミンが作詞作曲し、1975年には三木聖子が歌ったこの曲を選んだエピソードや、ストーカーっぽい歌詞について当時の動画を交えて紹介。

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『まちぶせ』ヒット前の石川ひとみ

石川ひとみ

石川ひとみ

愛知県海部郡美和町(現:あま市)出身。
1959年9月20日生まれ
デビュー当時からルックスと歌唱力が高く評価され、全国ビューティ・オール学生協会から「'78マスコット・ガール」に選ばれるなど大学生を中心に絶大な支持を得る。
男性誌を中心に水着姿でのグラビア撮影が多かったが、石川は水恐怖症だったので芸能界入りするまでは水着を1着も持っていなかったという。
高校2年時、フジテレビ系オーディション番組『君こそスターだ!』でチャンピオンとなる。
1978年5月25日、キャニオンレコードのNAVレーベルより「右向け右」でデビュー。
アイドルとしてグラビアなどに引っ張りだこで、NHKの人形劇「プリンプリン物語」では声優として人気を博していた。
しかし、歌はシングル10枚を発売して、オリコンでの最高位はシングル2枚目「くるみ割り人形」の42位、3枚は100位以内へのランキング入りすらしなかった。

『まちぶせ』が石川ひとみのシングル曲に選ばれた理由

ディレクターの長岡和弘は、ヒットはしなかったものの前作『夢番地一丁目』でのノスタルジックなサウンドの完成度に自信を持ち、同じ路線上にある『懐かしきリフレイン』を次のシングルとして制作していた。
ところが、完成したトラックはシングル曲としてのインパクトが弱く感じられ、採用を躊躇してしまう。

そこで挙がったのがユーミンこと松任谷由実(当時・荒井由実)の作詞作曲の『まちぶせ』。
この曲は1976年に同じ事務所のアイドル歌手だった三木聖子が歌い小ヒット(7万枚)していた。

三木聖子 まちぶせ 1976年

三木聖子のデビュー・シングルとして1976年に発売された。
「まちぶせ」の歌詞は、三木聖子の実体験をもとに荒井由実が作詞したと言われている。
アレンジを担当した松任谷正隆は「当時の日本の音楽業界って85%が歌謡曲だったような時代ですから、そこに新たなサウンドの広がりみたいなのを必要とされて、彼女(ユーミン)のところに曲の依頼がきたんじゃないでしょうか。」と語っている。
きっかけは石川の所属する事務所で有線放送の課長が雑談していた際に、「いまだに三木聖子が歌った『まちぶせ』のリクエストがあるんだよ。いい曲だから、ひとみちゃんなんかが歌ったらもう一度売れるんじゃないかな」と語った何気ない言葉だったという。

石川は愛知県の高校1年生だった当時、ラジオから流れてくる三木聖子の「まちぶせ」を聴いいて「いい歌だな」と思い、レコードを購入していた。
仮歌を録音時に「この歌大好きだったんですよー、これシングルになりませんかねぇ」と、いつになく積極的な石川の発言に自信を深めた長岡は、シングル発売を本格的に進めた。

過去に小ヒットに終わった楽曲のカバーについて、社内の制作会議など周囲から多くの反対意見を受けたものの、各方面への度重なる説得を経て、石川ひとみの『まちぶせ』は発売にこぎつけた。

18歳で上京しデビューしたとき「最低4年は頑張ろう」と考えたその4年目であった石川は、「この歌だったら、これが私の歌手生活のピリオドになっても悔いはないな」と思ったという。
「この曲で歌手としては一区切りつけるつもりだった」とテレビで発言している。

『まちぶせ』は発売後2ヶ月以上経ってから異例のロングヒットに

『まちぶせ』のランキングが上がり出したのは、発売後2ヶ月以上経ってからのことだった。
じわじわとランキングが上昇し、8月3日付けでようやくオリコントップテン入り(9位)を果たす。

その間、7月21日には本曲をタイトル曲としたアルバム『まちぶせ』が発売され、石川のオリジナル・アルバムでは最大のセールスを記録している。
シングルはその後、最高位6位を記録し、11月過ぎまでランクインが続いており、3〜4ヶ月おきにシングルカットする当時のアイドルの曲としては異例のロングヒットとなり40万枚を記録した。

『まちぶせ』がロングヒットしたため、次のシングル曲として予定されていた『にわか雨』の発売見通しが立たず、にわか雨の時期を過ぎてしまったということもあって発売見送りとなった。
石川ひとみ『まちぶせ』

石川ひとみ『まちぶせ』

作詞・作曲:荒井由実/編曲:松任谷正隆
1981年4月21日発売。
B面は当初A面に起用予定であった『懐かしきリフレイン』
この『まちぶせ』について石川ひとみは「曲もいいし、詞の内容が私たちの中学、高校時代の青春にぴったり。私にもこういう経験がある」と語っている。

【動画】石川ひとみ - まちぶせ

高音域においても伸びと張りのある澄んだ歌声。
歌唱力の高いアイドルが多かった1980年代においても、その歌唱力は専門家からも高く評価されていた。

念願の『NHK紅白歌合戦』に初出場を果たす

石川ひとみ 「まちぶせ」 紅白歌合戦

念願の紅白初出場を果たした石川は感動の涙を必死にこらえて歌う。
歌い終わると駆け寄ってきた先輩歌手たちに肩を抱かれていた。

冷静に読むとストーカーっぽい歌詞の『まちぶせ』

石川ひとみの綺麗な歌声と切なげな表情、愛らしいルックスから『片想いをしているけなげな女の子』の純愛の歌であると思われがちだが、荒井由実による歌詞自体には好きな男性を振り向かせるためにあらゆる打算を使いまくる強かな女の子が描かれている。
気のないそぶりして 仲間に加わった
テーブルをはさんで あなたを熱く見た
あの娘がふられたと 噂にきいたけど
わたしは自分から 云いよったりしない
別の人がくれた ラヴ・レター見せたり
偶然をよそおい 帰り道で待つわ
松任谷正隆も『まちぶせ』の歌詞について、「ストーカーの歌ですよね(笑)。メロディはともかく、詞は彼女でなければ書けない世界」と語っている。

ユーミンによるセルフカバーの『まちぶせ』

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